聖剣と魔剣の二刀流剣士物語【復讐編】

美山 鳥

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1章 運命が動く建国祭

16話 孤立

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 ドーン!……ドドーン!

 「…う…ん……」

 花火の音がアルフォスを覚醒を促した。目覚めた直後でぼんやりとしながら記憶をたどる。

 「タハルジャは!?」

 アルフォスは飛び起きた。花火が打ち上げられているということは、建国祭は終盤を迎えているはずだ。

 (まずい! タハルジャを止めないと!!)

 アルフォスは矢の如き勢いで夜の山道を駆け下りる。一刻も早くアルスフェルト城に着かねばならない。ジルバーナやメルティナ、ピファ、ルットは無事なのだろうか。心ばかりが焦り、道のりが途方もなく長く感じられる。



 王都クラッツェルンの門が見えてきた。

 「ん?」

 クラッツェルンの門の内側から何者かが飛び出してきた。人影はアルフォスのほうへと駆けてくる。

 「えっ!?」

 月光が門から飛び出してきた人物を照らし出した。その姿を見た瞬間、アルフォスは立ち止まり、目を見開いた。

 (俺…なのか?)

 そこには、鏡を見ているのかと思えるほどに瓜二つの人物がアルフォスのほうを見ている。

 二人の視線がぶつかる。アルフォスにそっくりの人物が微笑した。それが何を意味するのか考える間もなく、その姿は忽然と消え去ってしまう。

 (なんだったんだ?……)

 言い知れぬ胸騒ぎを覚え、アルスフェルト城へと急ぐ足はさらに加速していった。



 アルスフェルト城は騒然としていた。警備にあたっていた兵士や近衛騎士団はそれぞれの武器を手に何者かを探している。

 (遅かったのか!?)

 城へと戻ったタハルジャが暴挙にでたのか。そんな不安が脳裏をよぎった。

 「何があったんです!?」

 アルフォスは最も近くにいた兵士に訊く。

 「どうもこうも……」

 振り返った兵士はアルフォスの顔を見て、表情を凍りつかせた。

 「いたぞぉ! アルフォスだぁ!!」

 突然、叫びはじめる兵士。事態が把握できずにいるアルフォスを集まってきた兵士や騎士、魔術師が取り囲む。

 「何事ですか!?」

 「白々しいことを言うな、逆賊アルフォス!!」

 説明を求めるアルフォスを近衛騎士が罵倒する。

 「逆賊!?」

 いわれのない言葉にアルフォスは理解が追いつかない。

 「武器を捨て、おとなしく投降しろ! 抵抗するなら容赦しない!!」

 「貴様たち父子の野望もここまでだ!」

 「極刑は確実だが、せめて最後くらいは潔くすることだ」

 口々に浴びせられる言葉もアルフォスには何を言っているのか、さっぱり理解できない。

 (メルティナに会うことができれば、何かわかるかもしれない)

 ふと浮かんだ一筋の希望に懸けてみようと決め、腰のポシェットから濃霧魔術ミストの魔石を取り出して使用する。

 「くそ! 無駄な抵抗を!!」

 「往生際の悪いガキだ!」

 「かまわぬ、殺せ!!」

 濃霧の中、兵士や騎士の叫ぶ声が聞こえる。

 アルフォスは見つからないよう注意を払いながら包囲を抜け出し、アルスフェルト城内へと侵入し、取り押さえにくる兵士や騎士、魔術師の攻撃を避けつつ謁見の間までやってきた。

 「ジルバーナ様は上か!?」

 だれもいない謁見の間を駆け抜け、階段を上り、3階に到着する。

 (メルティナ!)

 アルフォスは真っ直ぐにメルティナの寝室を目指し、扉を開けて中へと飛び込む。だが、そこにメルティナの姿はない。

 (いったいどこへ!?)

 「アルフォス君、おとなしくしたまえ」

 背後から聞こえてきた声に振り返る。そこには憎き敵であるタハルジャがいた。

 アルフォスは絶句した。

 タハルジャの横にはルットがいる。その二人の後ろにはジルバーナ、メルティナ、ピファがいた。そして、全員がアルフォスに不信感と敵意が混在した視線を向けていた。
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