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2章 魔剣カラドボルグ

22話 図書番 ドゥーヤ

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 朝食を終えたアルフォスとセラは、グリード村の情報を求めて、バルスヴェイル城の図書室に足を運んだ。

 「じいさん、生きてるか?」

 図書室に入り、声をかける。

 「目上の者に対しての言葉遣いも知らんのか。これだから人間は嫌いなんじゃ……」

 しわがれた声とともに姿を現した老齢の魔族は、やれやれと言わんばかりに首を横に振る。

 老齢の魔族の名はドゥーヤ。バルスヴェイル城の図書室の管理を任されており、その知識はリュカリオンさえも一目置くほどである。

 「グリード村について知りたいんだが、何か知っていることはないか?」

 「グリード村じゃと? まぁ…知ってはおるが、なぜ人間風情に教えてやらねばならぬ?」

 意地の悪い視線をアルフォスに向けて、ドゥーヤは口元に笑みを浮かべる。

 「何か見返りを用意しろとでも言いたいのか?」

 「いかにリュカリオン様のお気に入りであろうと、なんでも思い通りになるとは思わんことじゃな」

 ドゥーヤはアルフォスに対して侮蔑したような態度をとる。

 「アルフォス様はリュカリオン様の命でグリード村へ向かうんですのよ! あなたもリュカリオン様にお仕えする者なら協力するのは当然ではありませんの!?」

 セラがドゥーヤに食って掛かる。

 「無論、リュカリオン様が協力しろと申されるのであれば従おう。じゃが、そのような命令は受けておらんのでな。どうしても教えてほしければ、それなりの見返りを寄越すことじゃ」

 「では、何を差し出せというんだ?」

 アルフォスが訊くとドゥーヤは下卑た笑みを見せる。

 「そうじゃのぉ……。そこの生意気な小娘を抱かせるというなら教えてやらんでもないぞ?」

 「なっ!?」

 セラがみるみる殺気立つ。

 「……交渉決裂だな。だったら、じいさんと話しても時間の無駄だ。勝手に探させてもらう」

 「フォッフォッフォッフォッ……。かまわぬが、この膨大の蔵書の中から目的の情報を探すのは至難の業じゃぞ?」

 横を通り過ぎるアルフォスとセラにドゥーヤが言う。

 「そうだとしても、これがリュカリオンが俺に課した試練だとすれば乗り越えてやるさ」

 アルフォスは言い捨てた。
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