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2章 魔剣カラドボルグ
23話 魔剣の行方
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(さて、と。そうは言ったもののどうやって探したものか……)
アルフォスは膨大な数の書物を前に半ば途方に暮れていた。
「アルフォス様…」
隣では不安げな表情のセラがアルフォスを見つめている。
「なんとかなるだろう。魔剣カラドボルグはディエルっていう魔族側の勇者が使っていたんだよな?」
「そうですわ。闇の神…つまりリュカリオン様から魔剣カラドボルグを与えられた勇者ディエルの物語は魔族ならだれもが知るお話ですわ」
アルフォスに訊かれたセラが答える。
「その物語では魔剣カラドボルグのその後の行方に関しては語られていないのか?」
「残念ながら……」
セラは声のトーンを落として答える。
(やはり、そう簡単にはいかないか…)
「セラは魔剣カラドボルグ関連の書物を漁ってくれ。俺はディエルのことを調べてみる」
「了解ですわ」
アルフォスが指示するとセラはすぐに行動を開始した。
◎
「魔族の勇者ディエルか。やはり、人間側に伝わる人物像とは違うな……。俺が幼いころから聞かされてきたディエルは冷酷無比な剣士だった。だが、魔族側では全ての人間と敵対していたわけではなかったらしい。ごく一部ではあるが同じ考えを持ち、協力関係にあった人間たちがいたと記されている。このことは人間サイドの歴史書にはなかったはず…」
「アルフォス様…」
魔族の歴史書を開き、考え込んでいるアルフォスにセラが声をかける。
「どうした? 何かわかったのか?」
「魔剣カラドボルグを勇者ディエルに与えたのはリュカリオン様ということは申し上げた通りのようですが、実は魔剣カラドボルグを創りだしたのもリュカリオン様ご自身のようですわ」
「リュカリオンが魔剣を? そんなこともできるのか。あいつ、なんでもありだな…」
(魔神をあいつ呼ばわりとは、さすがはアルフォス様ですわね……)
セラは恐れ知らずの主人に苦笑しつつ話を続ける。
「それと、人間の勇者フリットとの決戦に於てディエルが敗れたのは事実のようですわ。ですが、その時、ディエルは魔剣カラドボルグを所持していなかったそうなんですの」
「……どういうことだ? なぜ、ディエルは決戦に魔剣を持っていかなかった?」
「実は…決戦の時点で、魔剣カラドボルグは修復中だったようなのですわ」
言いつつ、問題のページを開いた書物をアルフォスの前に置く。
「……なるほど。たしかに、魔剣カラドボルグは聖剣エクスカリバーよりも随分と早くから人間と魔族の戦争に投入されていた。それに、決戦の数日前には光の女神とも一戦交えているようだな。だとすれば、この時に魔剣は破損したのか?」
セラが持ってきた書物を読み、アルフォスが呟く。
「ということは、魔剣カラドボルグはどこで修復中だったのかだな。……ディエルとフリットの決戦の時なんだが、リュカリオンがどこにいたんだ?」
「それでしたら、このバルスヴェイル城にいらしたそうですわ。リュカリオン様ご自身が仰っておられました。光の女神が率いる人間の軍勢がこの城を包囲していたらしいですわ」
(リュカリオンはここで魔剣の修復をしていたのか、それとも攻めてきた女神たちの相手をしていたのか…)
アルフォスは考え、ある仮説にたどり着いた。
「それで、この城は落ちたのか?」
「落ちた…というか、戦いの最中にリュカリオン様が行方不明となってしまったのですわ……」
(そのあと、リュカリオンはデルモス山の封印されたわけか。魔剣の行方はおそらく……)
「行くか」
アルフォスは腰を上げる。
「どちらへ行かれるんですの?」
「本人に訊くさ」
行き先を訊くセラにアルフォスは答え、図書室を退室した。
アルフォスは膨大な数の書物を前に半ば途方に暮れていた。
「アルフォス様…」
隣では不安げな表情のセラがアルフォスを見つめている。
「なんとかなるだろう。魔剣カラドボルグはディエルっていう魔族側の勇者が使っていたんだよな?」
「そうですわ。闇の神…つまりリュカリオン様から魔剣カラドボルグを与えられた勇者ディエルの物語は魔族ならだれもが知るお話ですわ」
アルフォスに訊かれたセラが答える。
「その物語では魔剣カラドボルグのその後の行方に関しては語られていないのか?」
「残念ながら……」
セラは声のトーンを落として答える。
(やはり、そう簡単にはいかないか…)
「セラは魔剣カラドボルグ関連の書物を漁ってくれ。俺はディエルのことを調べてみる」
「了解ですわ」
アルフォスが指示するとセラはすぐに行動を開始した。
◎
「魔族の勇者ディエルか。やはり、人間側に伝わる人物像とは違うな……。俺が幼いころから聞かされてきたディエルは冷酷無比な剣士だった。だが、魔族側では全ての人間と敵対していたわけではなかったらしい。ごく一部ではあるが同じ考えを持ち、協力関係にあった人間たちがいたと記されている。このことは人間サイドの歴史書にはなかったはず…」
「アルフォス様…」
魔族の歴史書を開き、考え込んでいるアルフォスにセラが声をかける。
「どうした? 何かわかったのか?」
「魔剣カラドボルグを勇者ディエルに与えたのはリュカリオン様ということは申し上げた通りのようですが、実は魔剣カラドボルグを創りだしたのもリュカリオン様ご自身のようですわ」
「リュカリオンが魔剣を? そんなこともできるのか。あいつ、なんでもありだな…」
(魔神をあいつ呼ばわりとは、さすがはアルフォス様ですわね……)
セラは恐れ知らずの主人に苦笑しつつ話を続ける。
「それと、人間の勇者フリットとの決戦に於てディエルが敗れたのは事実のようですわ。ですが、その時、ディエルは魔剣カラドボルグを所持していなかったそうなんですの」
「……どういうことだ? なぜ、ディエルは決戦に魔剣を持っていかなかった?」
「実は…決戦の時点で、魔剣カラドボルグは修復中だったようなのですわ」
言いつつ、問題のページを開いた書物をアルフォスの前に置く。
「……なるほど。たしかに、魔剣カラドボルグは聖剣エクスカリバーよりも随分と早くから人間と魔族の戦争に投入されていた。それに、決戦の数日前には光の女神とも一戦交えているようだな。だとすれば、この時に魔剣は破損したのか?」
セラが持ってきた書物を読み、アルフォスが呟く。
「ということは、魔剣カラドボルグはどこで修復中だったのかだな。……ディエルとフリットの決戦の時なんだが、リュカリオンがどこにいたんだ?」
「それでしたら、このバルスヴェイル城にいらしたそうですわ。リュカリオン様ご自身が仰っておられました。光の女神が率いる人間の軍勢がこの城を包囲していたらしいですわ」
(リュカリオンはここで魔剣の修復をしていたのか、それとも攻めてきた女神たちの相手をしていたのか…)
アルフォスは考え、ある仮説にたどり着いた。
「それで、この城は落ちたのか?」
「落ちた…というか、戦いの最中にリュカリオン様が行方不明となってしまったのですわ……」
(そのあと、リュカリオンはデルモス山の封印されたわけか。魔剣の行方はおそらく……)
「行くか」
アルフォスは腰を上げる。
「どちらへ行かれるんですの?」
「本人に訊くさ」
行き先を訊くセラにアルフォスは答え、図書室を退室した。
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