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2章 魔剣カラドボルグ

30話 ガーディアン・ロード①

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 扉の奥…洞窟の最奥はさらに広いフロアとなっていた。その奥の階段を登りきった先にある台座の上に一振りの長剣が置かれている。

 「あれが伝説の魔剣カラドボルグですの!?」

 セラが歓声にも似た声を発する。しかし、アルフォスはその階段の下にいる黒い肌をしたスキンヘッドの巨人を注視していた。巨人の右手には1メートル程度の鉄棒の先端に放射線状に鉄片を取り付けたメイスが握られている。

 「守護王ガーディアン・ロードか」

 「オレは守護王ガーディアン・ロードで、あそこに置かれている剣こそ魔剣カラドボルグに間違いない」

 巨人はアルフォスとセラに答える。

 「素直には魔剣を持ち帰らせてくれないんだろうな…」

 「当たり前だ。カラドボルグを手に入れたくばオレを倒すことだな!」

 守護王ガーディアン・ロードは不敵に笑う。

 「でしたら、そうさせてもらいますわ! 火属性初級魔術フレイム・ボール

 「ふん!」

 守護王ガーディアン・ロードは炎の球をメイスで叩き潰す。が、そこをアルフォスがクレイモアで斬りかかる。

 「防御膜魔術プロテクション

 守護王ガーディアン・ロードは防御魔術を発動し、自らの身体を敵からの攻撃から守る膜で包み込む。

 「ちっ!」

 防御膜魔術プロテクションの効果によりクレイモアは守護王ガーディアン・ロードの身体に浅い切り傷を残すのみだった。

 「あまいわ!」

 守護王ガーディアン・ロードが吠える。

 ガキィィッ!

 金属音が鳴り響き、アルフォスは弾き飛ばされてしまう。

 「くっ……」

 空中で身を翻して着地を成功させたアルフォスだが、守護王ガーディアン・ロードが振りかざしたメイスを受け止めた際の衝撃で魔腕が微かに痺れている。

 (なんて馬鹿力をしてるんだ…)

 クレイモアの柄を両手で握り、目の前の敵をしっかりと見据える。リュカリオンが言った通りだった。守護王ガーディアン・ロードはこれまで倒してきた守護者ガーディアンとは一線を画しており、まさに別格である。

 「アルフォス様、お怪我は!?」
 
 「大丈夫だ」

 心配するセラに短く返事をする。

 「雷属性中級魔術ライトニング・アロー!!」

 アルフォスが無傷であることに安堵したセラは、怒りの眼差しを守護王ガーディアン・ロードに向け、雷の矢を放った。

 守護王ガーディアン・ロードはその巨体を軽やかに動かし、雷属性中級魔術ライトニング・アローを回避する。

 「雷属性中級魔術ライトニング・アロー!」

 「ぬぐっ…」

 続いて放たれた雷の矢は回避できず、無詠唱で防御膜魔術プロテクションを発動させることでダメージを抑える。

 「うぉぉぉぉ!!」

 アルフォスは両手でしっかりと握りしめたクレイモアで斬りかかる。守護王ガーディアン・ロードはメイスで応戦する。

 幾度も激しく斬り結び、火花を散らすクレイモアとメイス。

 「肉体の一部に魔族のものを移植している人間とは珍しい。なぜ魔剣カラドボルグを求める?」

 「リュカリオンからの依頼だ」

 「やはり、リュカリオンからの差し金か。ならば尚更に魔剣を渡すわけにはゆかぬわぁ!!」

 会話を交わしながらも激しい攻防戦を展開していたアルフォスだったが、守護王ガーディアン・ロードの渾身の力を込めた一撃によって後方へと弾き飛ばされてしまう。

 「くっ…」

 着地したアルフォスだったが勢いは止められず、両足を踏ん張ったまま、さらに後方へと滑っていく。そこでクレイモアを地面へと突き刺すことでどうにか停止させることに成功する。

 「火属性上級魔術フレイム・ブレット!!」

 アルフォスに対して追撃にでようとした守護王ガーディアン・ロードをセラの魔術が襲う。放たれた炎の弾丸は守護王ガーディアン・ロードの左肩を貫通した。

 「ぐぉぉぉぉっ!」

 悲鳴をあげ、よろめく守護王ガーディアン・ロードだったが、地面を強く蹴って瞬時にセラとの間合いを詰める。

 「くっ!」

 セラはすぐさま離れようと飛び退くと同時に鞭を振り、眼前の敵の顔面を打つ。しかし、それはほんの一瞬の時間稼ぎにしかならず、守護王ガーディアン・ロードは掲げたメイスを力任せに振り下ろす。

 ガッ!

 メイスが地面を叩き、土砂が飛び散る。アルフォスはクレイモアでメイスを受け流し、その軌道をそらしていた。

 守護王ガーディアン・ロードの追撃を避けるべくセラを抱き抱えてその場を離れる。

 「大丈夫か?」

 そっと地面に下ろしつつ訊く。

 「はい…お陰さまで助かりましたわ……」

 セラからの返答に安堵し、アルフォスは再びクレイモアを構えた。
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