聖剣と魔剣の二刀流剣士物語【復讐編】

美山 鳥

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2章 魔剣カラドボルグ

32話 異世界の崩壊

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 絶叫のあと、守護王ガーディアン・ロードは仰向けに倒れる。

 「アルフォス様!?」

 アルフォスの身を案じたセラが駆け寄ってくる。だが、セラ自身も魔力の枯渇により激しい倦怠感に襲われていた。

 「大丈夫だ。問題ない…」

 アルフォスは全身の痛みを堪えて背中の鞘にクレイモアを納め、答える。

 「なに…しやがっ…た…」

 セラの火属性最上級魔術フレイム・キャノンボールを受けて倒れた守護王ガーディアン・ロードが苦しげに訊く。

 「あら、まだ生きていたとは驚きですわ。あなたが動けなかったのはアルフォス様の魔眼の力ですわ」

 「魔眼…だと?……」

 「そうですわ。リュカリオン様より授かったアルフォス様の力ですわ! ……アルフォス様、そろそろこの者にとどめを……」

 「必要ない。放っておいても暫くは動くこともないだろ。それよりも、さっさと魔剣カラドボルグを手に入れるぞ」

 アルフォスは守護王ガーディアン・ロードにとどめを刺さず、フロア奥の階段に向かって移動する。

 「…命拾いしましたわね」

 言い置いて、セラもそのあとに続いた。



 階段を上り、台座に置かれた魔剣を手に取る。

 「これがアルフォス様の魔剣ですのね…」

 隣でセラがカラドボルグを見つめる。

 「俺のじゃない。リュカリオンのだ」

 アルフォスは否定すると踵を返し、何もない空中を見る。

 「リュカリオン! 魔剣は手に入れたぞ!!」

 だが、返事はない。

 (妙だな。この異世界へは入るのも出るのも創造主であるリュカリオンでなければ転送できないはずだが……)

 「おかしいですわね……」

 怪訝な表情を見せるアルフォスの隣では、同じことをことも思っていたセラが呟く。

 ゴゴゴゴゴゴゴ……

 突然、フロア全体が大きく揺らいだ。

 「地震ですの!?」

 セラは驚き辺りを見回す。揺れは激しく洞窟の壁にも大きな亀裂が入り、天井からはパラパラと細かな破片が落ちてくる。このままでは崩れるのも時間の問題だろう。

 「ここを離れるぞ!」

 アルフォスはセラに声をかけ、階段を駆け下りた。その時、フロアの唯一の出入口が崩れ落ちた。

 「これはちょっとピンチですわね……」

 セラが不安を口にする。

 「ククククククク……。てめぇら、リュカリオンから見捨てられたみてぇだな?」

 「なんですって?」

 セラが守護王ガーディアン・ロードを睨む。だが、守護王ガーディアン・ロードは一切怯むことはなかった。

 「そうじゃねぇか。魔剣を手に入れるためにてめぇらをここに転送したのはリュカリオンなんだろう? ……だが、目的を達してもリュカリオンは何もしねぇ。それどころか、この世界を崩壊させるつもりときた。……つまり、やつは魔剣を餌にてめぇらを送り込み、逃げ場がなくなったところをこの世界ごと消し去るつもりだったってわけさ」

 「黙りなさい! リュカリオン様はそのようなお方ではありませんわ!!」

 セラは怒りをあらわに反論する。

 「だったら、この絶望的な状況はどう説明するんだ? てめぇらの呼び掛けには答えない、異世界は崩壊してるんだぜ?」

 「それは……」

 セラが口ごもる。

 「それくらいにしておけ。リュカリオンの真意をこんな所で論じてもしかたないだろ。そんな暇があるなら脱出法を考えるべきだ」

 (さて、どうする。この異空間はリュカリオンの魔力によって創造されたもの。創造主であるリュカリオン自身なら容易に行き来できるが……)

 「わたくしの現在の魔力では空間を裂くことは無理ですわ…」

 「空間を裂く?」

 セラの言葉のアルフォスが反応する。

 「そうですわ。このような造られた空間では強力な魔力によって空間を裂き、そこから脱出することができますの。しかし、現時点のわたくしではそれほどの魔力は……」

 セラは説明し、声のトーンを落とす。

 (魔剣カラドボルグには強大な魔力が宿っているはず……)

 アルフォスは一筋の光明を見いだし、カラドボルグを鞘から抜き放った。紅くきらめく美しい剣身があらわれる。

 「アルフォス様!?」

 セラが驚きの声をあげる。アルフォスは瞼を閉じて精神を研ぎ澄ませる。

 (魔剣カラドボルグ! 俺にその力を貸せ!!)

 アルフォスが右手で魔剣カラドボルグを一閃する。凄まじい雷撃がほとばしり、空間が揺らぐ。次の瞬間、それまで何もなかったはずの空中に黒い穴が出現した。

 「飛び込むぞ!」

 アルフォスは魔剣を鞘に納めてセラに声をかけ、手を差し伸べる。もはや一刻の猶予もない。セラはアルフォスの手を取る。

 「ま…待ってくれ! オレも連れていってくれ!! 頼む!!!」

 ヨロヨロと立ち上がった守護王ガーディアン・ロードが手を伸ばす。

 アルフォスは迷いなくその手を取ると、開いた黒い穴に飛び込んだ。3人の姿は穴に吸い込まれるように消えていった……。
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