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2章 魔剣カラドボルグ

33話 生還

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 リュカリオンの居城バルズヴェイルの一室。アルフォスが寝室として使っている部屋に3人は立っていた。

 「ここ…は……アルフォス様の寝室…ですわよね」

 セラがぼんやりとしながら呟く。

 「ふぅ……。どうにか助かったみたいだな…。正直、今のはかなり危なかった……」

 アルフォスの声からは安堵が感じられる。

 (あの状況でよく最後まで諦めず、冷静でいられたものだな……。こいつ、もしかしてとんでもねぇ大物になるんじゃねぇか?……)

 守護王ガーディアン・ロードはまだ年若い青年アルフォスの冷静さに驚嘆している。

 「さすがはアルフォス様! 素敵過ぎますわぁ!!」

 助かったことに実感が湧いてきたセラは、感激してアルフォスに抱きつく。

 「さて、こうして無事に生還することができたのはいいとして、あいつにはいろいろと訊いておかなければならないな」

 セラを引き離しながらアルフォスが言う。それに守護王ガーディアン・ロードが反応する。

 「あいつってのはリュカリオンだな!? だったらオレも一緒に行かせてもらうぜ」

 「なにを言ってるんですの? あなたなんかがリュカリオン様に謁見しようだなんて図々しいにもほどがありますわ!」

 セラは守護王ガーディアン・ロードの同行を認めようとはしない。

 「るせぇ! おまえに言っちゃいねぇよ!」

 守護王ガーディアン・ロードはアルフォスに射抜くような鋭い視線を向ける。

 「……べつにかまわないんじゃないか?」

 「アルフォス様!? 正気なんですの!? こんな野蛮な者をリュカリオン様に近付ければ何をするか……」

 「大丈夫だ。そいつが何をしたところでリュカリオンを倒すことはおろか傷つけることすらできないだろうさ。それに、リュカリオン本人に直接言いたいこともあるんだろうぜ」

 猛反対するセラの言葉をアルフォスは遮り、守護王ガーディアン・ロードは口角を上げた。

 「ありがてぇ! さすがだな。話がわかるじゃねぇか」

 「リュカリオン様のお叱りを受けてもしりませんわよ!」

 セラはアルフォスの決定に不満の表情を見せる。

 「無論だ。その時は俺が責めを負うつもりだ。それと、セラは今日は休め」

 「アルフォス様が休まれないのに、わたくしだけ休むわけにはまいりませんわ」

 「おまえは戦いで魔力が枯渇しているだろ。今は魔力を回復させておけ。すぐに次の任務が下るかもしれないからな。これは命令だ」

 「……わかりましたわ。そういうことでしたら先に休ませていただきますわ……」

 セラは渋々ながら了解する。

 「それじゃ、俺たちはリュカリオンの元へ向かう。ついてこい」

 「おう!」

 アルフォスと守護王ガーディアン・ロードはセラを残して部屋を出る。
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