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3章 聖剣エクスカリバー

44話 勇者ゼトラ

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 ガキィィィンッ

 ウィナーが振るうクレイモアと天救騎士の振るう剣が激しく何度もぶつかり、鍔迫り合いとなる。

 「悪しき魔神リュカリオンの遣いなど葬ってくれる!」

 「生憎だな。アルフォスの旦那からクレイモアこの剣を託されたからには意地でも敗けるわけにゃいかねぇんだよ!」

 ウィナーは渾身の力でクレイモアを振るい、天救騎士の剣を弾き飛ばす。

 「しまった!」

 武器を失くし慌てる天救騎士の鎧の上からクレイモアを力の限り振りかざした。

 「ぐぁぁぁぁ!」

 鎧の胴部が切り裂かれ、中から大量の血が噴き出す。

 「とどめだぁ!!」

 ウィナーは天にかざしたクレイモアを両手で一気に振り下ろした。天救騎士の体が鎧ごと真っ二つに裂ける。

 「あらあら、思ったよりも頑張るんですのね。それでこそアルフォス様の従者ですわ」

 応援に駆けつけたセラが治癒初級魔術ヒールをかける。

 「よぉ、セラ嬢ちゃん。中は片付いたのか?」

 「アルフォス様のご命令であなたの応援に駆けつけたのですわ。そうでなければアルフォス様のお側を離れたりいたしませんわ」

 「へっ、そりゃどうも!」

 ウィナーはクレイモアを鞘に納めてドカッと座り込む。

 「しっかしよぉ、今回はさすがに疲れちまったぜ……」

 「あら、だらしないんですのね。わたくしなどまだまだ余裕ですわよ!」

 「あのなぁ、オレはここに来てからほとんど戦ってばっかな……」

 「そんな!……バカな!?……」

 ウィナーの文句が言い終わらないうちに男の声が聞こえてきた。

 「あらぁ、アルフォス様ぁ……」

 チャグランを連れてきたアルフォスの姿を見つけたセラはすぐさま駆け寄っていく。

 「この男を始末しなくてもよろしいんですの?」

 セラはチャグランを一瞥して訊く。

 「投降するんだとさ」

 アルフォスが答える。

 「……面倒くさいですわね……」

 「セラ嬢ちゃん、そいつは心の中で言うことだぜ」

 セラの呟きにウィナーがツッコミを入れる。

 「なんにしても、これでようやく帰れますわね! 早くシャワーでも浴びたいですわ。アルフォス様もご一緒にいかがですの?」

 「遠慮しておく」

 「あら、それは残念ですわ……」

 ウィナーは、アルフォスとセラのいつもの会話が展開されるのを半ば呆れている。

 「…………離れろ!!」

 アルフォスが叫ぶのとほぼ同時に3人はチャグランを残して散開する。

 直後、天より光の玉がチャグランの側に勢いよく降り立ち、土煙を巻き上げて弾けて消えた。

 「チャグランさん、ご無事ですか?」

 土煙の中から澄んだ美声が聞こえてくる。

 「お……おお!……わたくしを救いに来てくださったのですね!?」

 チャグランは感涙しながら、姿を現した美青年の手を取った。艶やかな金髪が印象的だ。

 「当たり前じゃないですか。今まで尽くしてくれたチャグランさんを見捨てられるわけがありません」

 純白の鎧を身にまとった青年は片膝をつき、優しくチャグランを立たせる。

 「ありがとうございます!! 勇者ゼトラ様!!!」

 (勇者ゼトラだと? チャグランが時間稼ぎしたのはこいつの到着を待っていたのか。たしかに、こいつは…相当な実力者だな……)

 アルフォスは目の前に現れた勇者ゼトラから目をそらせないでいた。

 「それにしても、僕が到着するまでよく堪えられましたね」

 「はい。一度はやつらに降伏し、この時を待っておりました!」

 「そうだったんですか。なるほど……」

 ゼトラは納得したように微笑みを浮かべる。

 「では、共にやつらを葬り去りましょうぞ!」

 チャグランは立ち上がり、アルフォスたちを睨めつける。

 ズブッ

 チャグランは背中から心臓を貫かれた。

 「な…なぜ……ゼトラ…様……」

 チャグランは絶望の眼差しをゼトラに向ける。ゼトラは腰から提げていた剣を鞘から抜き、躊躇なくチャグランの心臓を貫いたのであった。

 「残念でなりません。つまり、チャグランさんは我々を裏切って邪神の遣いになってしまったということですね……。でしたら、聖剣エクスカリバーの所持者として見過ごすことはできません」

 ドサッ

 エクスカリバーを引き抜くとチャグランの遺体はその場に崩れ落ちた。ゼトラは聖剣エクスカリバーに付着した血を振り払う。蒼い剣身が陽の光に美しくきらめく。

 「さて…と。皆さんは闇の魔神リュカリオンの遣いですよね?」

 「だったら、どうだというですの?」

 「申し訳ありませんが死んでいただきます。特に魔剣カラドボルグの所持者の方には……」

 アルフォスたちはゼトラから静かな殺気がほとばしるのを感じていた。
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