聖剣と魔剣の二刀流剣士物語【復讐編】

美山 鳥

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4章 ラミーネル攻略戦

55話 セラVS合成獣B

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 セラは対峙している合成獣を見る。相手は元々は普通の野生動物だったに違いない。それなのに、ラミーネルの人間は生物同士を合成させて生物兵器に生まれ変わらせるという大罪を犯している。嫌悪感と憤りがセラの内で激しく渦巻いていた。

 「あなたがたには同情しますわ。ですが、わざと敗けるつもりはありませんの。覚悟していただきますわよ!」

 セラの双眸に殺気が宿る。

 「ガァァァァッ」

 合成獣は地を蹴ってセラの前までくると、太く逞しい前足で攻撃してくる。戦場には似つかわしくないメイド服の魔族セラは華麗な動きでヒラリとかわし、その背後に回り込む。

 「シャァァァァァッ」

 毒蛇の尻尾がセラに噛みつこうと首を伸ばしてくる。セラは腰の鞭を手にすると素早く振るい、毒蛇の尻尾を根元から切断した。しかし、宙を舞う毒蛇は生きていて執拗にセラを狙う。それに気づいているセラがさらに鞭を数度振るうことで毒蛇は空中で細かく裂かれ肉塊となって地面に落ちる。

 「ギャアッ!」

 尻尾を根元から切断された本体のほうは短く吠え、身体を半回転させて再び前足でセラを攻撃する。

 セラは後方へ宙返りすることでその攻撃をかわし、右手を合成獣に向けて魔力を練る。

 「火属性上級魔術フレイム・ブレット!」

 セラの右手から炎の弾丸が発射された。それは吸い込まれるかのように獅子の頭部の眉間へと撃ち込まれた。

 「グオォォォォン……」

 合成獣は遠吠えのような鳴き声を発して地面に倒れる。その姿にセラは目を伏せる。そして、こんな悲劇を生み出したラミーネルの人間に対しての怒りが込み上げてくるのを実感する。

 倒れた合成獣に背を向けてクラッツェルン防壁のほうへと歩み寄るセラの双眸は激しい怒りで満ちている。それをまずは防壁の上からセラを狙っている弓兵や魔術師に向ける。

 「ひぃっ!」

 セラの放つ凄まじい殺気に怯んだ弓兵・魔術師に無詠唱による雷属性初級広域魔術ライトニング・レインを撃つ。防壁の上から阿鼻叫喚の声が響いてくる。

 「あら、わたくしとしたことが失敗してしまったようですわね……」

 振り返ったセラの前にはヨロヨロと立ち上がる合成獣の姿があった。

 「申し訳ありませんわ……。先ほどの一撃で楽にして差し上げられたと思ったのですが……どうやら甘かったようですわね。しかし、今度こそ楽にして差し上げますわ!」

 セラは右手を猛然と突進してくる合成獣に向ける。

 「雷属性上級魔術ライトニング・ブレット!」

 セラが放った雷の弾丸が合成獣の頭部を撃ち抜いた。それは絶命させるには充分な威力であった。

 セラは踵を返し、クラッツェルンにいるアルフォスを追う。

 「おっ! セラ嬢ちゃんじゃねぇか」

 背後から聞こえてきた声にため息を漏らすセラ。

 「遅いですわ。アルフォス様はお一人で先に行かれましたわよ」

 セラは隣にやってきた巨躯の戦士を一瞥する。

 「へへっ、悪ぃ悪ぃ。けどまぁ、アルフォスの旦那なら心配要らねぇよ」

 「当然ですわ。しかし、従者であるわたくしたちが楽するわけにはまいりませんわよ」

 「そりゃそうだ! うしっ、そんじゃあ急ごうぜ!」

 ウィナーとセラはアルフォスの元へと駆け出した。
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