聖剣と魔剣の二刀流剣士物語【復讐編】

美山 鳥

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4章 ラミーネル攻略戦

61話 怪物タハルジャ

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 「ようやく勇者殿のおでましか」

 アルフォスはゼトラをまっすぐ見据える。ゼトラは新たに金色に輝く鎧を身にまとっている。

 「真打ちは遅れて登場するものですからね。……それよりも素晴らしいとは思いませんか? 光の女神様より賜ったこの美しい鎧を! そして、この神槍グングニルを!! あとは、奪い取られてしまった、その聖剣エクスカリバーを取り返せば僕は完全無欠の勇者となるのです!!!」

 「その性格の時点で完全無欠ではありませんわ」

 ゼトラは、はっきりと告げるセラに鋭い視線を向ける。

 「相変わらずいけ好かない女ですね、君は」

 「あら、不本意ながらそこは同感ですわ。わたくしもあなたが心底嫌いで吐き気がしますわ」

 「……まあ、いいでしょう。今回は貴女あなたに用などないのですからね」

 「どういうことですの?」

 ゼトラはフンッと鼻を鳴らすとグングニルの穂先をアルフォスに向ける。

 「アルフォス、あなたに一騎討ちを申し込む。むろん受けないなどとは言わないでしょうね?」

 ゼトラが不敵に笑む。

 「いいだろう。相手してやる」

 アルフォスはゼトラとの一騎討ちを受けて立つ。

 「アルフォス様!?」

 セラがアルフォスの決断に異を唱える。が、ウィナーはそれを制止する。

 「やめときな、セラ嬢ちゃん。男には引けねぇ時があるもんさ。アルフォスの旦那にとって今がその時なんだろ」

 「お黙りなさい! あなたに……」

 「セラ、俺を信じてくれ。あいつに敗けるようなことはしない」

 アルフォスがセラの言葉を遮って言う。それに対してセラは反論できない。

 「クククク…。決まりのようですね」

 ゼトラがグングニルを構えた。

 その時、力尽きたはずのタハルジャが起き上がった。一同に戦慄がはしる。

 「クハハハハ! 驚いているようだな。心臓を貫かれてなぜ生きているのか理解できないのだろう?」

 一同が押し黙る。この状況はゼトラも把握できていないようだ。

 「人間であることを棄てたのは、なにもアルフォス君だけではなかったということだ。このわたしも人間であることを棄てた。ただし、アルフォス君が人間から怪物になったのとは違い、わたしは人間から神になったのだよ! いわゆる神格化というやつだね」

 言い終わると、タハルジャの身体がみるみる変化していく。テイラと同じく目は血走り、爪は伸び、牙と翼と尾が生えている。ただ、彼の時とは違い、肌にはドラゴンを彷彿とさせる鱗がびっしりと並んでいた。

 「神格化だと? 笑わせるな。今のあんたの姿こそ化け物そのものだろ」

 「クハハハハ! これは猛々しい姿というのだよ、アルフォス君。わたしは君を倒すためにこの力を手に入れたのだ」

 タハルジャは両翼を広げて見せる。

 「まったく…。さすがはアルフォス様ですわね。敵ですら、これほど注目しているなんて、わたくしのご主人様に相応しいお方ですわ。しかし、あの怪物はわたくしにお任せくださいますわね?」

 「おいおい、オレがいることも忘れてもらっちゃ困るぜ!」

 タハルジャの相手を買って出るセラにウィナーも加勢を決意する。

 「わかった。二人とも気をつけろ」

 話がまとまり、セラとウィナーがタハルジャと対峙する。

 「クククク…。これはおもしろいことになりましたね。彼らには我々の前座を務めてもらうとしましょう」

 ゼトラは階段に腰を下ろした。
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