69 / 75
4章 ラミーネル攻略戦
68話 ゼトラの逆恨み
しおりを挟む
ゼトラは呆然と立ち尽くしている。
神槍グングニルと黄金の鎧を失った今、どうやってアルフォスと戦えばいいというのか……。もはや勝負の行方は明らかである。
「く…くそぉ!! 僕は、どうして、おまえに勝てないんだ!? アルフォス、おまえはいつだって!!……」
ゼトラはアルフォスに恨めしそうな視線を投げ掛けてくる。
「俺はおまえにそこまで恨まれるような覚えはないが? そもそも、おまえがクラッツェルンにいたことも知らない。どこかで会ったという記憶すらないのだが?」
アルフォスからの返事のゼトラはフンッと鼻を鳴らす。
「そうだろうさ! おまえにとって僕はその程度の存在だということさ!」
「ということは、俺がクラッツェルンにいたころに会っているということか?」
「ああ。僕の父も近衛騎士団の騎士だったのさ…」
「近衛騎士……。父さんの?」
「ああ、そうさ。ウォレンの部下だった。父はよく言っていた。ウォレン様のご子息は立派だ…とね。僕はその度に自分に劣等感を感じていたんだ。そんな時、僕にチャンスが巡ってきたんだ! クラッツェルンで武闘大会が開催されることになったのさ! そこで僕はおまえと対戦することになったんだ!」
「たしかに武闘大会に出たことがあったな…」
アルフォスは記憶を遡って思い出したように呟く。
「結果はおまえの圧勝。そのまま優勝してしまった……。敗けた僕がどれほど惨めな思いをしたかも知らないでね!!」
ゼトラは憎悪に満ちた視線をアルフォスに投げ掛ける。
「呆れましたわ! 結局はあなたの一方的な逆恨みでしかありませんわ。同情の余地など1ミリもありませんわね」
それまで黙って聞いていたセラが声をあげた。
「うるさい! 女のおまえに何がわかる!? 僕はアルフォスに勝つためにどれほどの修練を積んだか……」
「そりゃ、おめぇだって自分なりに努力したんだろうさ。けどな、アルフォスの旦那だって努力してんだ。その結果を逆恨みするなんざ、ガキもいいところだ」
ウィナーも呆れたように言う。
「嘘だ! こいつはなんの努力もしないで強くなっている! 現に、聖剣エクスカリバーと魔剣カラドボルグを手に入れてるじゃないか! 黄金の鎧と神槍グングニルを光の女神様から授かった僕を倒したじゃないか!!」
セラが、やれやれといったふうに首を左右に振る。
「あなたは聖剣エクスカリバー、神槍グングニル、黄金の鎧を光の女神から授かったとおっしゃいましたわね?」
「それがどうした!?」
質問するセラに飛び掛からんばかりの勢いでゼトラは答える。
「その時、あなたは授けられた物を受け取っただけではありませんの?」
「当たり前だろ! 光の女神様が僕に授けてくれるのだから受け取るさ!!」
セラはため息を吐く。
「アルフォス様は魔剣カラドボルグの時も聖剣エクスカリバーの時もご自身の手で手に入れましたわ。リュカリオン様はアルフォス様に無条件で何でも与えるようなことはしませんでしたわ。それはアルフォス様に期待してのことですが……」
「ああ、アルフォスの旦那はこれまで何度も死にかけたそうだぜ。そんな死線を潜り抜けてきたからこそ、今があるんじゃねぇか。ただ与えられてばかりだったおまえとはわけがちがうんだよ」
ゼトラはセラとウィナーに言われ、反論できずに唇を噛む。
「なぁ、こいつはどうすんだ?」
ウィナーがアルフォスに訊く。
「放っておけ。それより……」
アルフォスはアルスフェルト城3階へと続く階段に視線を移す。
神槍グングニルと黄金の鎧を失った今、どうやってアルフォスと戦えばいいというのか……。もはや勝負の行方は明らかである。
「く…くそぉ!! 僕は、どうして、おまえに勝てないんだ!? アルフォス、おまえはいつだって!!……」
ゼトラはアルフォスに恨めしそうな視線を投げ掛けてくる。
「俺はおまえにそこまで恨まれるような覚えはないが? そもそも、おまえがクラッツェルンにいたことも知らない。どこかで会ったという記憶すらないのだが?」
アルフォスからの返事のゼトラはフンッと鼻を鳴らす。
「そうだろうさ! おまえにとって僕はその程度の存在だということさ!」
「ということは、俺がクラッツェルンにいたころに会っているということか?」
「ああ。僕の父も近衛騎士団の騎士だったのさ…」
「近衛騎士……。父さんの?」
「ああ、そうさ。ウォレンの部下だった。父はよく言っていた。ウォレン様のご子息は立派だ…とね。僕はその度に自分に劣等感を感じていたんだ。そんな時、僕にチャンスが巡ってきたんだ! クラッツェルンで武闘大会が開催されることになったのさ! そこで僕はおまえと対戦することになったんだ!」
「たしかに武闘大会に出たことがあったな…」
アルフォスは記憶を遡って思い出したように呟く。
「結果はおまえの圧勝。そのまま優勝してしまった……。敗けた僕がどれほど惨めな思いをしたかも知らないでね!!」
ゼトラは憎悪に満ちた視線をアルフォスに投げ掛ける。
「呆れましたわ! 結局はあなたの一方的な逆恨みでしかありませんわ。同情の余地など1ミリもありませんわね」
それまで黙って聞いていたセラが声をあげた。
「うるさい! 女のおまえに何がわかる!? 僕はアルフォスに勝つためにどれほどの修練を積んだか……」
「そりゃ、おめぇだって自分なりに努力したんだろうさ。けどな、アルフォスの旦那だって努力してんだ。その結果を逆恨みするなんざ、ガキもいいところだ」
ウィナーも呆れたように言う。
「嘘だ! こいつはなんの努力もしないで強くなっている! 現に、聖剣エクスカリバーと魔剣カラドボルグを手に入れてるじゃないか! 黄金の鎧と神槍グングニルを光の女神様から授かった僕を倒したじゃないか!!」
セラが、やれやれといったふうに首を左右に振る。
「あなたは聖剣エクスカリバー、神槍グングニル、黄金の鎧を光の女神から授かったとおっしゃいましたわね?」
「それがどうした!?」
質問するセラに飛び掛からんばかりの勢いでゼトラは答える。
「その時、あなたは授けられた物を受け取っただけではありませんの?」
「当たり前だろ! 光の女神様が僕に授けてくれるのだから受け取るさ!!」
セラはため息を吐く。
「アルフォス様は魔剣カラドボルグの時も聖剣エクスカリバーの時もご自身の手で手に入れましたわ。リュカリオン様はアルフォス様に無条件で何でも与えるようなことはしませんでしたわ。それはアルフォス様に期待してのことですが……」
「ああ、アルフォスの旦那はこれまで何度も死にかけたそうだぜ。そんな死線を潜り抜けてきたからこそ、今があるんじゃねぇか。ただ与えられてばかりだったおまえとはわけがちがうんだよ」
ゼトラはセラとウィナーに言われ、反論できずに唇を噛む。
「なぁ、こいつはどうすんだ?」
ウィナーがアルフォスに訊く。
「放っておけ。それより……」
アルフォスはアルスフェルト城3階へと続く階段に視線を移す。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる