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4章 ラミーネル攻略戦

69話 建国祭の夜の真相

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 勇者ゼトラを撃破し、神槍グングニルを回収したアルフォスたちはアルスフェルト城の3階の国王ジルバーナの寝室へとやってきた。

 「アルフォス……」

 メルティナがアルフォスを見つめる。その表情はどこか安堵したようでもあった。

 「そなたがここに来たということはタハルジャとゼトラは敗れてしまったということか……」

 ジルバーナは無念をにじませている。

 「タハルジャは死んだ。が、ゼトラは生きている。自慢の鎧を破壊されて戦意を喪失したようだが……」

 「そう…か……」

 呟くジルバーナからは失望がうかがえる。

 「アルフォス…。君はどうして魔神なんかに魂を売るような真似まねをしたんだ!?」

 聖剣エクスカリバーによる癒水ゆすいによって治療されたルットがアルフォスに訊く。

 「俺はリュカリオンに魂を売った覚えなどない」

 「しかし、現にウォレンは魔神リュカリオンを復活させておるではないか。それに、建国祭の夜にそなたがここに乗り込んできたのもまた事実」

 アルフォスが返した答えにジルバーナが反論する。

 「父さんはタハルジャに裏切られて殺されたんだ。俺はそのことをあんたらに伝えるためにきた。……もっとも、聞く耳を持ってもくれなかったけどな……」

 アルフォスは静かに瞳を閉じる。

 「まだ、そんな嘘を言っているのか!? 僕は…僕たちは見たんだ。君が大勢の兵を殺して回ってるところをね!」

 ルットがアルフォスを睨み付けて言う。

 「なにをバカな。俺はそんなことをしてなどいない。……が、おまえたちが嘘を言っている感じもないな…。何かからくりがあるのか?」

 アルフォスは記憶をさかのぼり、当時のことを思い出す。

 「……そうか! あの日、俺が山小屋からアルスフェルト城に向かう途中で俺と瓜二つのやつに会った! まさか…」

 一つの仮説がアルフォスの脳裏をよぎる。

 「あらあら、遂に気付かれてしまったようね……」

 突然に背後から聞こえた声にアルフォス、セラ、ウィナーは振り返る。そこには微笑を浮かべる女性が立っていた。彼女が身に付けているのはまぎれもなく天救教団のエンブレム付きの法衣であった。

 (こいつ、気配がしなかった!?)

 アルフォスはその少女に警戒心をあらわにする。

 「シャイア殿、気付かれたとはどういう意味ですかな?」

 ジルバーナが天救教団の法衣を着た女性に問う。

 「そのままの意味ですよ。アルフォスは真相に気付いたということです」

 シャイアは微笑を浮かべたまま答える。

 「つまり、俺の偽者を使ったというわけだな?」

 アルフォスの質問に首肯するシャイア。

 「偽者…。どういうことなの!?」

 メルティナが叫ぶ。

 「あの建国祭の夜、国王ジルバーナたちが目撃したアルフォスは私たちが作り出した偽者だったということです」

 メルティナ、ジルバーナ、ルット、ピファは強いショックを受けて絶句する。あの夜、アルフォスは何もしてはいなかったということだ。ならば、自分たちはなんと酷い仕打ちをアルフォスにしたのか……。今さらながら罪悪感が怒涛の如くわき上がってきた。

 「タハルジャが父さんを裏切るように仕向けたのもおまえたちか?」

 「ええ、そのとおりです。彼には我々がラミーネル王国と繋がりを持つためのパイプ役になっていただきました。できるなら、数々の武勇伝で知られるウォレンさんにも協力していただきたかったのですが、諦めるほかありませんでした……」

 「それで、タハルジャにウォレンを!」

 残念そうに語るシャイアにジルバーナが訊く。

 「そういうことです。我らの仲間に引き入れることができないのであれば消えていただくよりほかにないですからね」

 「そんな!?」

 ルットは目を見開いている。

 「では、我らはなんの罪もないウォレンやアルフォスにあのようなことを……」

 「そうですね。なかなか滑稽でしたよ。誤算だったのは、魔神リュカリオンが本当に復活してしまったこと。そして、そのリュカリオンがアルフォスを救い出すという行動に出たことでした」

 アルフォスは黙って聖剣エクスカリバーと魔剣カラドボルグを構える。

 「あら、私と戦うつもりですか。いいでしょう。では…」

 言うと、シャイア一瞬のうちにウィナーの眼前まで詰め寄ると間髪いれずに火属性最上級魔術フレイム・キャノンボールを無詠唱発動させ、神槍グングニルを手に取る。

 吹き飛ばされたウィナーはそのまま壁に激突する。

 (この女も火属性最上級魔術フレイム・キャノンボールを!?)

 シャイアの実力の一端を垣間見たセラは驚愕した。先ほどの火属性最上級魔術フレイム・キャノンボールは無詠唱にもかかわらずセラのものより強力であった。

 (ちっ…まずいな……)

 アルフォスはかつてない強敵を前に危機感を募らせていた。
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