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第6章 スターウォーズ
野生のリキシ
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「ケンジ、あれを見ろ」
師匠の家から少し離れた森の中、木の影に潜んで様子を窺う。ヨルダ師匠の言葉に目を細めて遠くを見てみると、茂みの中で肌色の大きな生物が体をもぞもぞと動かしているのが見えた。
「野生のリキシじゃ」
なんだと。
「ここからさらに離れたところにエルフの集落があるんじゃがな。最近野生のリキシとの接触が増えて被害が増えているらしい」
ちょっと待てちょっと待てちょっと待て。
「どうやら最近リキシの生息域が拡大して……」
「だからちょっと待てって」
「どうしたんじゃケンジ」
「どうしたもこうしたもあるかよ。何だよ『野生のリキシ』って」
「おお、野生のリキシのことが分からんのか。そう言えば異世界から来たんじゃったな」
ようやく理解してくれたか。知ってる前提でいきなりわけの分からない事言われると俺もついていけないんだよ。
「リキシは大喰らいな上に闘争心が強いからな。ここだけじゃなく、住民との生息域の重なりが発生することによって農作物の被害、住民がうっちゃられるなどの被害が多発しておるんじゃ」
「そっちじゃねえよ。先ずリキシって何なんだよ!」
俺が大きな声を出したからか、向こうでしゃがみこんで何かしていたリキシが立ち上がった。
「伏せろ」
ヨルダ師匠に引っ張られて身をかがめる。一緒に来ているエイメとアスタロウも同様に茂みの中に隠れた。
それにしてもやはりデカい。立ち上がると2メートル近くありそうに見えるし、腕も足も丸太のように太い。腰にはまわしを締めていて、髪型は立派な大銀杏だ。
「力士じゃねーか」
「だからリキシだと言っとるじゃろう」
「そうだけどそうじゃねえんだよ。なんでこんなところに力士がいるんだよおかしいだろ」
「勇者よ、おぬしが元いた世界にもリキシがいたのか?」
アスタロウも「リキシ」を知ってるのか? この世界では一般的な生き物なのか? いや俺が元いた世界でも一般的な生き物(?)ではあるけど。
「そうなんスか? 師匠。そっちの世界のリキシはどんな生き物なんスか?」
「どんな生き物って言われてもな……デカい人間みたいな外見で、まわしを締めてて、髪は大銀杏で……」
「なんだ、じゃあこっちの世界のリキシと変わんないじゃないスか。だったら何に驚いてたんスか」
何に、って言われると非常に困るんだがな。敢えて言うなら俺の世界の力士と似すぎてることに戸惑っているというか。これ、説明してわかってもらえるんだろうか。
「なんというか、まずな? 俺の世界ではリキシは人間と同じ扱い、というか……」
「なるほど、儂らエルフも最近はアルトーレの二等国民として人間の扱いになっておる。そういう括りなんじゃな」
いやあ、それもなんか違うんだよなぁ。ホントどう説明したらいいものか……
「いやそうじゃなくて、『力士』っていうのは職業なんだよ」
「冒険者の『クラス』みたいなもんスか? 確かリキシの中でも強さや大きさによってクラス分けされてたと思うスけど……」
「一番強いのが『ヨコヅナ』で、次が『オオゼキ』とかか?」
「おお勇者よ、詳しいのう。もしや儂の世界のリキシと、おぬしの世界のリキシに、何か共通点があるのかもしれんのう」
「うむ、やはりケンジ殿に話を持ってきたのは正解だったかもしれん」
なんか決定的なところで話が食い違ってる気がしないでもないけど、実際リキシについては俺はこいつらよりも詳しいみたいなので仕方ない。
ふとリキシのいた茂みの方をに視線を戻してみると、リキシはすでにいなくなっていた。ところでヨルダ師匠はこれを見せて何がしたかったんだ?
「うむ、実を言うとな。この『リキシ』の件を無事解決できたなら、儂の勃気術を免許皆伝としようと思うてな」
勃〇とリキシ全然関係なくないスか? そろそろ相撲協会からこっぴどく叱られるッスよ。
「どちらかというと勃気術よりはお主の本来の仕事、『勇者』に関わることになるんじゃが……今回のように、この世界では至る所で各種族同士の衝突が起きているんじゃ。そのもっとも大きなところが人間と魔族の衝突じゃ」
確かにそうだな。元々人間と魔族もそこまで大規模に敵対してたわけじゃないけど、互いの生存域が拡大する中で衝突するようになってきたって、チュートリアルでも聞いたな。
「互いに生き残るために多少の衝突は仕方あるまい。しかし、過剰に対立が高まり、互いを滅ぼし合うような大規模な戦争は避けなければならない」
まあ、その通りだとは思う。実際イルウとか見てると、話し合いで解決できそうな気もするんだよな。
俺はちらりとアスタロウの方を見る。アスタロウは人間の依頼者側の勢力だ。「それでも魔王を討伐しろ」と言ってくるかもしれないが……
「うむ。儂らも相手を滅ぼすことばかり考えていたが、考えが凝り固まっていたかもしれん。穏便に事が済むのなら、その方がよいのかもな……」
視線をヨルダ師匠の方に戻す。色よい返事がもらえて満足したのか、彼は大きく頷いた。
「儂はこの戦争を、互いに衝突し合って憎しみ合う戦いではなく、多少の諍いはあってもそれを乗り越えて交流し、混ざり合う戦いとしたいのだ」
まあ、完全に戦いを避けることはできないだろう。互いの価値観の違い、文化の違いから血が流れることもあるだろう。
「儂はこれを『スターウォーズ』※と名付けようと思う」
※STIR(混ぜる) WARS(戦争)
「やめろッ!!」
師匠の家から少し離れた森の中、木の影に潜んで様子を窺う。ヨルダ師匠の言葉に目を細めて遠くを見てみると、茂みの中で肌色の大きな生物が体をもぞもぞと動かしているのが見えた。
「野生のリキシじゃ」
なんだと。
「ここからさらに離れたところにエルフの集落があるんじゃがな。最近野生のリキシとの接触が増えて被害が増えているらしい」
ちょっと待てちょっと待てちょっと待て。
「どうやら最近リキシの生息域が拡大して……」
「だからちょっと待てって」
「どうしたんじゃケンジ」
「どうしたもこうしたもあるかよ。何だよ『野生のリキシ』って」
「おお、野生のリキシのことが分からんのか。そう言えば異世界から来たんじゃったな」
ようやく理解してくれたか。知ってる前提でいきなりわけの分からない事言われると俺もついていけないんだよ。
「リキシは大喰らいな上に闘争心が強いからな。ここだけじゃなく、住民との生息域の重なりが発生することによって農作物の被害、住民がうっちゃられるなどの被害が多発しておるんじゃ」
「そっちじゃねえよ。先ずリキシって何なんだよ!」
俺が大きな声を出したからか、向こうでしゃがみこんで何かしていたリキシが立ち上がった。
「伏せろ」
ヨルダ師匠に引っ張られて身をかがめる。一緒に来ているエイメとアスタロウも同様に茂みの中に隠れた。
それにしてもやはりデカい。立ち上がると2メートル近くありそうに見えるし、腕も足も丸太のように太い。腰にはまわしを締めていて、髪型は立派な大銀杏だ。
「力士じゃねーか」
「だからリキシだと言っとるじゃろう」
「そうだけどそうじゃねえんだよ。なんでこんなところに力士がいるんだよおかしいだろ」
「勇者よ、おぬしが元いた世界にもリキシがいたのか?」
アスタロウも「リキシ」を知ってるのか? この世界では一般的な生き物なのか? いや俺が元いた世界でも一般的な生き物(?)ではあるけど。
「そうなんスか? 師匠。そっちの世界のリキシはどんな生き物なんスか?」
「どんな生き物って言われてもな……デカい人間みたいな外見で、まわしを締めてて、髪は大銀杏で……」
「なんだ、じゃあこっちの世界のリキシと変わんないじゃないスか。だったら何に驚いてたんスか」
何に、って言われると非常に困るんだがな。敢えて言うなら俺の世界の力士と似すぎてることに戸惑っているというか。これ、説明してわかってもらえるんだろうか。
「なんというか、まずな? 俺の世界ではリキシは人間と同じ扱い、というか……」
「なるほど、儂らエルフも最近はアルトーレの二等国民として人間の扱いになっておる。そういう括りなんじゃな」
いやあ、それもなんか違うんだよなぁ。ホントどう説明したらいいものか……
「いやそうじゃなくて、『力士』っていうのは職業なんだよ」
「冒険者の『クラス』みたいなもんスか? 確かリキシの中でも強さや大きさによってクラス分けされてたと思うスけど……」
「一番強いのが『ヨコヅナ』で、次が『オオゼキ』とかか?」
「おお勇者よ、詳しいのう。もしや儂の世界のリキシと、おぬしの世界のリキシに、何か共通点があるのかもしれんのう」
「うむ、やはりケンジ殿に話を持ってきたのは正解だったかもしれん」
なんか決定的なところで話が食い違ってる気がしないでもないけど、実際リキシについては俺はこいつらよりも詳しいみたいなので仕方ない。
ふとリキシのいた茂みの方をに視線を戻してみると、リキシはすでにいなくなっていた。ところでヨルダ師匠はこれを見せて何がしたかったんだ?
「うむ、実を言うとな。この『リキシ』の件を無事解決できたなら、儂の勃気術を免許皆伝としようと思うてな」
勃〇とリキシ全然関係なくないスか? そろそろ相撲協会からこっぴどく叱られるッスよ。
「どちらかというと勃気術よりはお主の本来の仕事、『勇者』に関わることになるんじゃが……今回のように、この世界では至る所で各種族同士の衝突が起きているんじゃ。そのもっとも大きなところが人間と魔族の衝突じゃ」
確かにそうだな。元々人間と魔族もそこまで大規模に敵対してたわけじゃないけど、互いの生存域が拡大する中で衝突するようになってきたって、チュートリアルでも聞いたな。
「互いに生き残るために多少の衝突は仕方あるまい。しかし、過剰に対立が高まり、互いを滅ぼし合うような大規模な戦争は避けなければならない」
まあ、その通りだとは思う。実際イルウとか見てると、話し合いで解決できそうな気もするんだよな。
俺はちらりとアスタロウの方を見る。アスタロウは人間の依頼者側の勢力だ。「それでも魔王を討伐しろ」と言ってくるかもしれないが……
「うむ。儂らも相手を滅ぼすことばかり考えていたが、考えが凝り固まっていたかもしれん。穏便に事が済むのなら、その方がよいのかもな……」
視線をヨルダ師匠の方に戻す。色よい返事がもらえて満足したのか、彼は大きく頷いた。
「儂はこの戦争を、互いに衝突し合って憎しみ合う戦いではなく、多少の諍いはあってもそれを乗り越えて交流し、混ざり合う戦いとしたいのだ」
まあ、完全に戦いを避けることはできないだろう。互いの価値観の違い、文化の違いから血が流れることもあるだろう。
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