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第6章 スターウォーズ
GEKITOTZ
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「ドスコイ」
低く、響く声だった。
俺が前世で住んでいた日本では、聞き慣れた言葉。
いや聞き慣れてはいないか。何言ってんだ俺は。俺は普通の日本人だぞ。そりゃこいつらよりは力士には詳しいだろうけど別に専門家でも何でもないからな。
と、思ったら急に不安になってきた。
目の前に現れたのはやはり大柄な力士。身長は俺より少し高いぐらいなものの、やはり腕も足も丸太のように太い。
普通に考えてこれ勝てなくね?
まわしを締めてるだけの俺は今、当然ながら聖剣も持ってないし、そんなもん持ってたらスモウにならないだろう。
最初に「ドスコイ」と言ったものの、リキシはそれ以降特に喋ることもなく、のしのしとドヒョウに近づいてくる。
エイメ達の情報ではリキシに言葉は通じないとは聞いていたが、もしかしたら日本語の分かる俺なら会話が可能かもしれない、穏便に事を済ますことができるかもしれない、と甘い期待はしていた。
あるいはそれは無理でもチャンコの匂いにつられて一緒に食事をすれば仲良くなれるかもしれない、とも考えていた。
しかし現実は甘くない。ドヒョウの上で四股を踏んでいた俺を見て闘争心が勝ってしまったのか。それとも力士でもないのにそんな真似をしていた俺に腹を立てているのか。
いずれかは分からないものの、闘争心をむき出しにした表情で土俵に近づくリキシ。ドヒョウ脇に置いてあった塩をむんずと掴み、その腕が大きく弧を描いて塩が撒かれる。
覚悟を決めるしかない。俺も控えめに塩を手に取ってドヒョウに投げる。
リキシとの距離が一歩、また一歩と近づくたびに鼓動が早まる。
近くで見ると、やはりデカくて怖い。だがもう、逃げることなどできないだろう。ここで逃げれば、全ては無に帰るどころではなく、同じ手は二度と使えない可能性もある。
「ミアッテぇ!!」
いつの間にかドヒョウに上がっていたエイメの声が森に響き渡る。本当はアスタロウに行司の役を頼んでいたんだが、チャンコの準備をしている彼に変わって臨機応変に対応してくれた。
相手はもう仕切り線に拳を軽くつけ、準備万端の状態。俺の準備が出来次第、戦いの火蓋は切られる。
うっ、仕切り線ってこんなに近かったのか。今にも爆発しそうなほどの闘争心を間近に感じられる。
「ハッキヨォイっ!!」
拳が仕切り線をかすめるように近づき、そして二人のリキシがぶつかり合う。
「ノコッタァ!!」
ぶつかり合う。
男と男の、意地と意地が……無理ッ!!
激突の瞬間、身をよじるように、レインコートの上を水滴が流れるように直前で避ける。というよりはすべる、か。身長はほんの十センチと少しの差。しかし圧倒的質量存在の差がある。
直前で「やっぱり無理だ」と判断した俺の決断は間違っていなかったと思う。
しかし相手もこちらが正面からぶつかり合うとは思っていなかったのか、綺麗な肩すかしの形にはならず踏みとどまり、二人の距離を取るだけに終わった。
こちらも本気のぶつかり合いをするつもりでいかないと「肩すかし」はまず決まらない。そして俺にはそれをできるだけの実力がないということだ。
相手の「力」に対抗するにはこちらは「スピード」しかない。
物語ではそうだが、現実には「力」がある方が「スピード」もある。こちらは「敏捷性」で対抗するしかない。
相手が体勢を整える前に攻める。深く、下から攻めてまわしを取った。相手の両手はこちらのまわしを掴めずフリーの状態。圧倒的有利な状況。
「お……重い」
しかしそれでも相手の体はビクともしなかった。実力差を見抜いていて、敢えてまわしを取らせたのか。まさに横綱相撲。相手の体形からしてヨコヅナではないだろうけど。
まわしを取ったまま身もだえするこちらをあざ笑うかのようにゆっくりとまわしを掴もうと相手の腕が下りてくる。こちらはその気配を感じて必死に体を揺さぶってそれから逃げる。
「ノコッタァ! ノコッタァッ!!」
戦況が膠着してると感じたのかエイメが掛け声をかけてくる。なかなか「わかってる」行動をとるじゃないか。
しかしそれでも俺には打つ手がない。
これ以上粘ってもジリ貧だ。体格の小さい分俺の方が消耗する体力も多いし、元々のスタミナも、この力士の方があるだろう。
ここで……負けるのか……俺はここで、死ぬのか……
『死にはしないでしょう』
こんな時に茶々を入れるな、女神。
いっつもいっつも無責任な事ばっか言って高みの見物の口だけ女め。なにかこう、アドバイスとかこんな時のための勇者の持つ秘められた力とか、なんかそんなのないのかよ。
『そんなもんがあったらとっくに教えてますよ』
そりゃそうだけど、俺は主人公だぞ。なんかあるだろう!
『応援してます、ガンバレ!』
役に立たない駄女神め。やはり自分の力しか、頼るものはないのか。
『ちからが ほしいか』
出やがったな駄剣め。
『ちからが ほしいんだろう』
残念ながらいくら語り掛けてこようとお前は今アスタロウのケツの穴の中だ。おとなしく収納されてろ。
『うわあぁん! やっぱりケツの穴の中なんじゃん! 取り出してよ! 責任取ってよ!!』
お前ら助けたいのか邪魔したいのかどっちだ。
そうこうしているうちにもうまわしを掴んでいる指の感覚も無くなってくる。相手にこちらのまわしも掴まれてしまった。万事休すか。
そんな時、俺の脳内に老人の声が聞こえてきた。
『起力の力を信じるのじゃ』
低く、響く声だった。
俺が前世で住んでいた日本では、聞き慣れた言葉。
いや聞き慣れてはいないか。何言ってんだ俺は。俺は普通の日本人だぞ。そりゃこいつらよりは力士には詳しいだろうけど別に専門家でも何でもないからな。
と、思ったら急に不安になってきた。
目の前に現れたのはやはり大柄な力士。身長は俺より少し高いぐらいなものの、やはり腕も足も丸太のように太い。
普通に考えてこれ勝てなくね?
まわしを締めてるだけの俺は今、当然ながら聖剣も持ってないし、そんなもん持ってたらスモウにならないだろう。
最初に「ドスコイ」と言ったものの、リキシはそれ以降特に喋ることもなく、のしのしとドヒョウに近づいてくる。
エイメ達の情報ではリキシに言葉は通じないとは聞いていたが、もしかしたら日本語の分かる俺なら会話が可能かもしれない、穏便に事を済ますことができるかもしれない、と甘い期待はしていた。
あるいはそれは無理でもチャンコの匂いにつられて一緒に食事をすれば仲良くなれるかもしれない、とも考えていた。
しかし現実は甘くない。ドヒョウの上で四股を踏んでいた俺を見て闘争心が勝ってしまったのか。それとも力士でもないのにそんな真似をしていた俺に腹を立てているのか。
いずれかは分からないものの、闘争心をむき出しにした表情で土俵に近づくリキシ。ドヒョウ脇に置いてあった塩をむんずと掴み、その腕が大きく弧を描いて塩が撒かれる。
覚悟を決めるしかない。俺も控えめに塩を手に取ってドヒョウに投げる。
リキシとの距離が一歩、また一歩と近づくたびに鼓動が早まる。
近くで見ると、やはりデカくて怖い。だがもう、逃げることなどできないだろう。ここで逃げれば、全ては無に帰るどころではなく、同じ手は二度と使えない可能性もある。
「ミアッテぇ!!」
いつの間にかドヒョウに上がっていたエイメの声が森に響き渡る。本当はアスタロウに行司の役を頼んでいたんだが、チャンコの準備をしている彼に変わって臨機応変に対応してくれた。
相手はもう仕切り線に拳を軽くつけ、準備万端の状態。俺の準備が出来次第、戦いの火蓋は切られる。
うっ、仕切り線ってこんなに近かったのか。今にも爆発しそうなほどの闘争心を間近に感じられる。
「ハッキヨォイっ!!」
拳が仕切り線をかすめるように近づき、そして二人のリキシがぶつかり合う。
「ノコッタァ!!」
ぶつかり合う。
男と男の、意地と意地が……無理ッ!!
激突の瞬間、身をよじるように、レインコートの上を水滴が流れるように直前で避ける。というよりはすべる、か。身長はほんの十センチと少しの差。しかし圧倒的質量存在の差がある。
直前で「やっぱり無理だ」と判断した俺の決断は間違っていなかったと思う。
しかし相手もこちらが正面からぶつかり合うとは思っていなかったのか、綺麗な肩すかしの形にはならず踏みとどまり、二人の距離を取るだけに終わった。
こちらも本気のぶつかり合いをするつもりでいかないと「肩すかし」はまず決まらない。そして俺にはそれをできるだけの実力がないということだ。
相手の「力」に対抗するにはこちらは「スピード」しかない。
物語ではそうだが、現実には「力」がある方が「スピード」もある。こちらは「敏捷性」で対抗するしかない。
相手が体勢を整える前に攻める。深く、下から攻めてまわしを取った。相手の両手はこちらのまわしを掴めずフリーの状態。圧倒的有利な状況。
「お……重い」
しかしそれでも相手の体はビクともしなかった。実力差を見抜いていて、敢えてまわしを取らせたのか。まさに横綱相撲。相手の体形からしてヨコヅナではないだろうけど。
まわしを取ったまま身もだえするこちらをあざ笑うかのようにゆっくりとまわしを掴もうと相手の腕が下りてくる。こちらはその気配を感じて必死に体を揺さぶってそれから逃げる。
「ノコッタァ! ノコッタァッ!!」
戦況が膠着してると感じたのかエイメが掛け声をかけてくる。なかなか「わかってる」行動をとるじゃないか。
しかしそれでも俺には打つ手がない。
これ以上粘ってもジリ貧だ。体格の小さい分俺の方が消耗する体力も多いし、元々のスタミナも、この力士の方があるだろう。
ここで……負けるのか……俺はここで、死ぬのか……
『死にはしないでしょう』
こんな時に茶々を入れるな、女神。
いっつもいっつも無責任な事ばっか言って高みの見物の口だけ女め。なにかこう、アドバイスとかこんな時のための勇者の持つ秘められた力とか、なんかそんなのないのかよ。
『そんなもんがあったらとっくに教えてますよ』
そりゃそうだけど、俺は主人公だぞ。なんかあるだろう!
『応援してます、ガンバレ!』
役に立たない駄女神め。やはり自分の力しか、頼るものはないのか。
『ちからが ほしいか』
出やがったな駄剣め。
『ちからが ほしいんだろう』
残念ながらいくら語り掛けてこようとお前は今アスタロウのケツの穴の中だ。おとなしく収納されてろ。
『うわあぁん! やっぱりケツの穴の中なんじゃん! 取り出してよ! 責任取ってよ!!』
お前ら助けたいのか邪魔したいのかどっちだ。
そうこうしているうちにもうまわしを掴んでいる指の感覚も無くなってくる。相手にこちらのまわしも掴まれてしまった。万事休すか。
そんな時、俺の脳内に老人の声が聞こえてきた。
『起力の力を信じるのじゃ』
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