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 私は鮫川くんの裏の顔を知り、かなりの衝撃を受け、その日の公務が見に入らず、何も考えることが出来なかった。
 数年前の老人ホーム大量虐殺事件の実行犯が、まさか、ヒロシだなんて。私はこのことを信じたくなかった。しかし、現実はそう甘くない。受け止めるしかないのだ。
 鮫川くんが悪人潰しをしているとは全然思わなかった。確かに思い返せば見かけない時もあった。しかし、私が気づかないということは、鮫川くんは相当優秀であるだろう。

 明日の明け方に、鮫川くんはbrawlerを潰しに行く。私は同行することは出来ない。鮫川くんに全てを託した。

 鮫川くんの健闘を祈るよ。




 「お前がそんなに落ち込むなんて見たことねぇぞ。ほら、総理の仇を取りに行くんだろ。頑張れよ。」
「そうだな。クヨクヨするのは俺らしくないな。」
 俺は澄野に総理に裏の顔がバレたことを話した。話していくうちに何故か涙が出てきてしまった。大粒の涙が落ちた跡が床に沢山着いている。澄野は優しく聞いてくれた。
 「明日、絶対にやってやる。」
「うん。いつも通り俺はサポートに徹するよ。」
 絶対に仇を取ってくるんだ。総理のためにもな。


 「と、意気込んでいたが、秒でbrawlerを潰せたと。」
「はい…。」
「あんだけ『仇を取ってやる!』とか『やってやる!』とか言ってたくせに。お前は強すぎなんだよ。警護の仕事辞めて殺し屋になった方が稼げるんじゃないか?」
「おいおい。これ以上はやめてくれ。」
 brawlerのトップは相当な腕前を持っていると聞いたから気合を入れて来たのに、見当違いだった様だ。みんな怯えていて、全て話してくれた。まぁ、話を聞いたら用済みだからね、消してやったさ。
 
 でもこれで総理にいい報告ができる。
 俺はその事がいちばん嬉しかった。
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