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Extra3:幸せのいろどり ―透side―
(25)*
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『今だけ』と思えば思うほど、身体の内側に溜め込んだ欲が、箍を外して心を掻き乱すようだった。
『今だけ』でも、直くんを自分だけのものにしたいという想いが膨らんで、鍵を開けるのももどかしい。
理性なんて何処にもなくて、本能だけで動いてしまう。
玄関に入ってドアを閉めると同時に、靴を脱ごうとしている直くんを後ろから抱きしめてしまっていた。
顎を捕らえて、性急にその唇を塞いで、柔らかい舌を追いかけて絡めとる。
「……んんッ……」
突然のキスに驚いた直くんの身体が一瞬のうちに硬く強張って、合わさった唇の隙間からくぐもった声が漏れ聞こえても、構わずにコートを脱がして、ニットとシャツの下へ手を滑り込ませた。
外気に触れていない服の中の肌の温度に、俺の内側の熱さとは間逆の冷たい手が温められていく。
お互いの身体が全部、同じ温度になればいいのに……。そんな事を考えるなんて、自分でも熱くなり過ぎていると思う。
「……アッ……ふ……ん……ッ」
キスをしながら胸に手を這わせて見つけた突起を摘めば、唇の隙間から漏れる甘い喘ぎ声に煽られる。
――もうこのまま此処で抱いてしまいたい、なんて思ってしまう。
「とお……るっさ……んんッま……ッ……て……アッ……!」
だけど、熱くなり過ぎている俺に比べて、直くんの方が冷静だった。
「待てない……」と言いながら、直くんのボトムのベルトを外そうとしている俺に、シャワーを浴びたいからと、ストップをかける。
「どうせ、汗かくことするから、後で一緒に入ろう」
そう言って、先を急ぐようにまた唇を塞いだ。俺と同じように、直くんにも熱くなって欲しくて。
快楽だけでなくて、心も熱くなって欲しいと思ってしまう。
でも、そんな事は、若い直くんにとっては、きっと重いだけだと分かっているのに。
――分かっているのに……。
寝室に移動して、ベッドに横たえさせた直くんの身体の上に覆いかぶさって、何度もキスをして――「直くんに逢いたかった……」と、つい本音を漏らしてしまった。
うっかり漏らしてしまった俺の本音に、直くんの目が大きく見開かれたのを見て、『しまった!』と後悔する。
10歳も年上の男の俺なんかに、本気になられても重いだけだと思うだろう。
だから、誤魔化せる言葉を咄嗟に探した。
「早く、こうしたかった。直くんを抱きたかった」
――身体を重ねたいから、逢いたかったと。
本心でないことを言ってしまった後ろめたさに胸が痛むのを隠して、直くんの唇を貪るようにキスをする。
首筋に舌を這わせ、服をたくし上げて、露わになった肌へ、紅い痕を残していった。
「好きだよ……」と、柔らかい脇腹に痕を残すように食みながら、思わず漏らしたのは確かに本心だったけれど。
それはとても微かな声で、直くんには聞こえていない筈だった。
『今だけ』でも、直くんを自分だけのものにしたいという想いが膨らんで、鍵を開けるのももどかしい。
理性なんて何処にもなくて、本能だけで動いてしまう。
玄関に入ってドアを閉めると同時に、靴を脱ごうとしている直くんを後ろから抱きしめてしまっていた。
顎を捕らえて、性急にその唇を塞いで、柔らかい舌を追いかけて絡めとる。
「……んんッ……」
突然のキスに驚いた直くんの身体が一瞬のうちに硬く強張って、合わさった唇の隙間からくぐもった声が漏れ聞こえても、構わずにコートを脱がして、ニットとシャツの下へ手を滑り込ませた。
外気に触れていない服の中の肌の温度に、俺の内側の熱さとは間逆の冷たい手が温められていく。
お互いの身体が全部、同じ温度になればいいのに……。そんな事を考えるなんて、自分でも熱くなり過ぎていると思う。
「……アッ……ふ……ん……ッ」
キスをしながら胸に手を這わせて見つけた突起を摘めば、唇の隙間から漏れる甘い喘ぎ声に煽られる。
――もうこのまま此処で抱いてしまいたい、なんて思ってしまう。
「とお……るっさ……んんッま……ッ……て……アッ……!」
だけど、熱くなり過ぎている俺に比べて、直くんの方が冷静だった。
「待てない……」と言いながら、直くんのボトムのベルトを外そうとしている俺に、シャワーを浴びたいからと、ストップをかける。
「どうせ、汗かくことするから、後で一緒に入ろう」
そう言って、先を急ぐようにまた唇を塞いだ。俺と同じように、直くんにも熱くなって欲しくて。
快楽だけでなくて、心も熱くなって欲しいと思ってしまう。
でも、そんな事は、若い直くんにとっては、きっと重いだけだと分かっているのに。
――分かっているのに……。
寝室に移動して、ベッドに横たえさせた直くんの身体の上に覆いかぶさって、何度もキスをして――「直くんに逢いたかった……」と、つい本音を漏らしてしまった。
うっかり漏らしてしまった俺の本音に、直くんの目が大きく見開かれたのを見て、『しまった!』と後悔する。
10歳も年上の男の俺なんかに、本気になられても重いだけだと思うだろう。
だから、誤魔化せる言葉を咄嗟に探した。
「早く、こうしたかった。直くんを抱きたかった」
――身体を重ねたいから、逢いたかったと。
本心でないことを言ってしまった後ろめたさに胸が痛むのを隠して、直くんの唇を貪るようにキスをする。
首筋に舌を這わせ、服をたくし上げて、露わになった肌へ、紅い痕を残していった。
「好きだよ……」と、柔らかい脇腹に痕を残すように食みながら、思わず漏らしたのは確かに本心だったけれど。
それはとても微かな声で、直くんには聞こえていない筈だった。
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