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一章
王太子
しおりを挟むレングリス王国。
其処は剣と魔法の国と呼ばれる王政国家である。
王族には、賢王と呼ばれる王と后、それと2人の王子が居る。
美しすぎる王と王妃、そして、第2王子。
そんな中で、王太子だけが、凡庸を絵に描いたような王子であった。
おつむの出来も凡庸と言われていた王太子は、努力の人であった。
天才と言われる弟王子とは違う、心穏やかな王子。
それが王太子であった。
そんなある日、平和な王国に魔王が統率し、第3幹部であるバアルが王国に進行して来た。
王はすぐさま進行を押し返すため兵を進めさせたが、相手は魔族。
壊滅的な打撃を受け、這々の体となった兵を王は、やむなく撤退させた。
其処で再度の進撃の為、名乗りを上げたのはなんと王太子であった。
「国王陛下、お願いがあります。わたくしめを前線にお送り下さい。私なら作戦が有りますし、アドラメレクを撃退する事も可能かと……。私は魔術師。それも頂点を極めた魔法の使い手と言われております。勇者ではありませんから魔王討伐とはいきませんが、幹部の独りなら退けて見せましょう 」
と言い切れば、王が拒絶の意識を見せる。
それでも彼は、『王』に取っては手駒でも、父親に取っては大切な息子。
「や、嫌、いかん、そなたは王太子だ。この国を統べる者だ…… 」
と、食い下がる。
だが、王太子は至極冷静に首を左右に振った。
「王よ。進言させて頂きます。国が無くなれば王太子とあっても意味を成しません。貴族王族は命を賭して戦い、国を護らなければ成らないのです。その為に我らは産まれたのです。幸い私が命を落としても、弟のアルスがおります。あれは私より優秀ですし、カリスマ性も有ります。ですから、私を戦地へ派遣して頂くのが最も有意義なのです」
「う~っ…… 」
王がうなり声を上げる。
王太子の言う事がもっともで確かな事過ぎて、言質を覆せない。
王に取って、王太子は決して失いたくない人物だった。
父として、王として。
特に父として。
けれど、事情は首を縦に振るしか無かった。
だから苦肉の策として、王は言った。
「解った。但し護衛を連れてゆけ」
けれども、
「必要有りません。帰って邪魔です。私は彼らを護れない」
王の言葉に王太子は、はっきりと拒絶の意を示す。
彼は王の言葉すら拒絶して、両親や婚約者、弟に最後の挨拶をして戦地に赴いた。
そしてその翌日、夜空が一瞬昼間のように明るくなった。
その直後、王太子が放つ最大級の聖魔法だと、神殿の最高司祭が王に報告した。
「王、アドラメレクの反応が消えました。同時に王子の反応も…… 」
最高司祭は、涙でその顔をぐしゃぐしゃに歪めながら、詳しい報告をしていく。
これで暫くは魔王軍もなりを潜めるだろう。
王太子は、文字通り『命を賭して』国を、国民を、愛する婚約者や家族を護ったのだ。
英雄となった王太子の名は……。
その名は……。
「馬鹿な……、何故アレの名が出て来んのだ… 」
王が涙を流しながら、王太子の名を呼ぼうとして驚愕した。
「儂は、何時からあれの名を呼ばなくなった? 王太子としか呼ばなく成ったのだ! 」
そう、皆、彼の名を覚えていない。
それは何故なのだろうか?
彼には確かに名前が有ると言うのに。
彼はこの国の英雄なのに、彼の名を覚えて居る者はこの王の間には居なかったのだ ───。
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