極々普通の王太子、名前すら覚えて貰えず、弟に婚約者までも奪われたので王子辞めました。でも何か思っていたのと違う方向へ行ってませんか?俺!?

黄色いひよこ

文字の大きさ
8 / 24
一章

神の膝元、アレの居る場所

しおりを挟む

王太子の側近は次期宰相と、近衛士団次期団長の二名だけだった。

やけに少ない面子である。

彼等も、薔薇を背負うのが似合う美丈夫であり、それでもきさくで学生時代を共に過ごした彼等を、王太子は信頼していた。

悪友でもあり、親友でもあり、学友でもある二人は、王太子に永遠の忠誠を誓っている唯一無二の彼の手足であり、よき理解者であった。

その内の一人、次期団長と言われるジス=ヨンディオルが脳筋と思いきや、学も騎士としての能力もすこぶる高い男だった。

そんな彼以上に優秀なのが、次期宰相と言われる男、ノーランド=ズレイトシス公爵令息。

彼は文武両道で文官なのに剣も嗜み、その腕もかなり強い。

だからなのか、王太子にはこの二名が居れば何にしろ事足りるのだ。

そんな二人の内の片割れが仕入れてきた情報は、まさに正確で、ずば抜けて早かった。


「お帰り、ジス」

「只今戻りました。殿下」


耳に優しい低音イケボと言える声音の王太子に、膝を折って応える鎧騎士のジスは、鎧を脱ぐ事すら惜しんで王太子の元に馳せ参じたらしく、兜の覆いを跳ね上げて、王太子を見据える。


「殿下、あれは確かにアドラメレクで御座いました。それも単騎で、二千の兵を相手に怯んでおりません。あれは確かに悪魔で、その諸行で御座います」

「では、チートな能力を持ち得る人では無いのだね…… 」


王太子はあからさまに意気消沈し、溜め息を吐く。

彼は一体、何を期待したのか。


「殿下…… 」

「ジス、そうだね、うん。どちらにしろ僕は出撃する事にしたよ……。これ以上、国民や兵を無駄死にさせたくは無いからね。アドラメレクの力と僕の力、それがぶつかれば或いは、『あの場所』へ行けるかもしれないね…… 」

「殿下……、あの場所とは? 」


何か、思い詰めた王太子の言葉に、執務室の隣の扉から出て来たノーランドが、お茶のワゴンを押しつつ王太子に問い掛けた。

彼は執務机に片手を掛けて、行儀悪く頬杖を付いたまま、ノーランドを流し目で見る。

それは何故かやけに男の色気を含んでいて、そんな心此処に有らずな王太子の様子にノーランドは訝しんだ。


「神の膝元。アレが居る場所…… 」


王太子の言葉の意味を知る者は、此処では王太子本人しかいない。

まるで謎かけのようだと、ノーランドとジスは憂いを帯びた表情の、主の言葉に首を傾げた。

王太子がふふっと笑みを零す。

その真意は掴めずにいた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

二度目の勇者は救わない

銀猫
ファンタジー
 異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。  しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。  それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。  復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?  昔なろうで投稿していたものになります。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

転生大賢者の現代生活

サクラ近衛将監
ファンタジー
 ベイリッド帝国の大賢者として173歳で大往生したはずのロイドベル・ダルク・ブラームントは、何の因果か異世界のとある若者に転生を遂げた。  ロイドベルの知識、経験、能力、更にはインベントリとその中身まで引き継いで、佐島幸次郎として生き返ったのである。  これは、21世紀の日本に蘇った大賢者の日常の生活と冒険を綴る物語である。  原則として、毎週土曜日の午後8時に投稿予定です。  感想は受け付けていますけれど、原則として返事は致しませんので悪しからずご了承ください。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

処理中です...