極々普通の王太子、名前すら覚えて貰えず、弟に婚約者までも奪われたので王子辞めました。でも何か思っていたのと違う方向へ行ってませんか?俺!?

黄色いひよこ

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一章

兄と弟

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王太子は自室を出ようとして、扉を叩く音を聞き足を止めた。

警備の騎士が顔を出し、第二王子が来たと告げる。

彼は第二王子の入室を許可すると、入って来た弟にふわりとした微笑みを向けた。


「今、お前の部屋に行こうとしていたんだよ、アルス」


そんな兄に弟が眉尻を下げて泣きそうな顔を見せる。

そんなアルス王子は、兄である王太子ですら見惚れる程、綺麗な顔をしていた。

輝く金糸のような真っ直ぐな髪に、ホリゾンブルーと呼ばれる明るい青の瞳。

対して王太子はシルバーグレイの髪色に、コーンフラワーブルーと呼ばれる濃い青色の瞳をしている。

青は王族の瞳の色だが、二人の内どちらが王子様感が出ているかと聞かれれば、10人が10人とも第二王子だと言うだろうと、伺い知れる程の美貌を、第二王子のアルスは持っていた。

そんなアルス王子を王太子は嫌悪しているかと言えば、まるで正反対で、どちらかと言うと溺愛に近い。

年が5つも離れているせいもあるが、弟が兄に懐いている事が大きい。

アルスは小さい頃から兄の後ろを着いてまわり、勉学も一緒に受けたいと言って同じ教師、部屋、剣術、体術、魔術と納めて行った。

その中で、体力が著しく無く、魔力が必要以上に高かった王太子は魔術師に、体力と剣術、体術に明るかった第二王子は騎士に成り、2人の道は分かれてしまったが、兄弟仲は比較的良いままであった。


「アルス、此方へ…… 」


王太子が彼にソファに座るように促し、座るのを確認すると、己も真向かいに腰掛けた。

従者がお茶を2人の前に置いて部屋を去ると、王太子は逸れを待って口を開いた。


「アルス、僕は明日此処を立つよ。これから先、この国はアルス、お前の肩に掛かる事に成る。重責を背負わせてしまってすまない…… 」


そう言って眉尻を下げる兄に、弟は頭を左右に振った。


「止めて下さい、兄上。それに俺は国に対して怒っているのです。何故、戦地に行くのが兄上でなければ成らないのですか! お願いです、行かないで下さい。それが無理ならせめて俺も連れて行って下さい!! 俺、絶対に役に立ちますからっ!! 」


まるで食いつくようにガバリと身を乗り出す彼に、兄である王太子は冷静な表情を見せ、諭す。

駄目だと。


「僕が戦地に向かう理由は1つ。この世界で一番強い魔術師だからだよ。僕の魔力はチートで、無尽蔵に有る。魔術師独りが生涯で一度しか使えない、命を掛けた極大魔法でさえ、体力の続く限り無尽蔵に放てる。(但し、僕の体力は、一桁代程度しか無いから、体力切れでそう大量には放てないんだけど)僕が一番この国を護れる勝算が有るからなんだよ」

「だから、その勝算をもっと確かな物にする為に俺を連れて行って下さいと言っているんです! 」


王太子は、あえて()の中は言わずに考えるだけで済ます。

口に出せば必ずついて行くと弟が言い切るのが解っていたし、何なら待ち伏せしてまでも着いて来かねないと危惧しての言葉だったのだが、以外にも弟王子は問答無用の提で食い下がって来た。

王太子にとっては、彼の行為は意外だった。

困った、そんな様相で眉尻を下げる王太子。

嬉しい、けれど、面倒くさい。
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