婚約破棄された転生令嬢は、魔の森の銀の薬師に溺愛される

黄色いひよこ

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朱色の欠片

~月光、主に会う~②

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「えぇ~っ!? 自分で入れるのぉ~」


と、月光が愚痴を零せば、月光の前に無言で澄んだ緑の液体の入った『月光』湯呑みを差し出される始末。

そして、月光の目線で見える位置には、もう片方の手に握られている『お父さん』という文字の入った湯呑みが……。

月光は、慌てて自分の名入りの湯呑みを受け取ると、少々焦った声音で言葉を紡いだ。


「うっわぁ~、すんません。そんなつもりじゃ無かったんですよ、薬師様」


それは全く悪びれない謝罪という言葉。

この男は此処で初めて、漸く、己の主の名を口にした。

薬師はと言うと、湯呑みをテーブルに置くと流れるような所作でソファに腰掛けて、月光を見た。

逸れだけなのに、月光は総てを理解して報告を行う為に日光の隣に腰掛けた。


「じゃあ~、今から坊ちゃんに対する現在の様子と見て来た事に対する説明会を行いますっ! 」


そう言った月光は、居住まいを正すと薬師を見据えて口を開いた。


「先ずは嬢ちゃんなんやけど、日光の指し示した予定通り、坊ちゃんの保護を受けたんやけど、何か変な気配も付けられとった。ありゃあ、動物のマーキングみたいなもんやなぁ。嬢ちゃんが身を寄せてた王宮で付けられた事間違い無しやなと思う」


と、其処まで一気に言ってしまうと湯呑みを取り上げ、ゴクリと一口飲んだ。


「マーキング……か、それはおそらく女狐の物だろう? 此方に入って来た事なら確認済みだよ……」


不思議な事に、薬師はあっさりとそう月光に言い放った。

嫌、事ここ薬師の手に掛かれば、解らぬ事など何もない。

日光と月光は、驚く事無く薬師を見た。


「流石、薬師様やね。抜かりないわぁ。それやったら、面倒な奴等が何でか坊ちゃんの周りに集まりつつ有るのも、知ってはるか…… 」

「あぁ、伏羲がアイセンレイトに接触を計ったようだね」

「薬師様は、如何なさるおつもりですか? 」


月光の言葉に薬師が伏羲の名前を出せば、日光が眉を寄せて薬師の動向を窺った。

それに付いて、薬師はにっこりと嗤う。

その、動かない表情が怖い。


「そうだね、取り敢えずはレイトに一任するつもりだよ」


と、己はまだまだ動く気は無いと、意思表示をする薬師であった。
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