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動き始める時間
しおりを挟む止まっていた時間が
ゆっくりと流れ始める……。
───────
──────────
─────────────
柚芽が休みでも、俺は違う。
週末金曜の、午前8時30分。
都心に有る高層ビル群の一角。
20階建の8階と9階に席を置く『サングリア』。
此処に俺の通う職場が有る。
『サングリア』は、230名の社員と、110名のタレントを有するプロダクションだ。
様々な部門を抱え持つ此処で、結芽はタレント、俺はマネージャーという立場にあった。
出勤すると、すれ違う皆が柚芽は?と、問い掛けてくる。
その都度、『今日はオフだよ』と答えるのが、頗る付きで面倒だ。
デスクに腰掛けて、パソコンを開いた途端、見ていたかのように鳴る電話。
俺は、深い溜め息を付きつつ、受話器を取った。
『オッハヨーサン。真紘。お前も休めば良いのにさぁ、律儀だね』
「柚芽はオフでも、俺にはやる事が、五万と有るので。で、仕事の邪魔をするつもりでしたら切りますよ。社長」
『本当、社長の私にそんな口を利くのは、お前だけだね』
「切ります」
本気で受話器を置こうとする俺の態度を察知したのか、離した受話器の向こうから慌てふためいた社長の声が聞こえる。
『ちょっと待て!! yumeの仕事の事だ。マネージャーのお前に状況を聞きたい。だから、ちょっと来てくれないかな? 』
結芽は、このプロダクションの看板タレントで、俺が担当する、『Yume』と言う名で活動している歌手だ。
彼女に歌を歌わせたら、『右に出る者は無い。』と、言われる程の実力派歌手。
彼女程の歌唱力を持つ歌手は、そう易々とは出ないだろう。
俺は、それ程の存在の女を縛り付けている。
マネージャーとしては失格だ。
商品に手を着けて、手放せないでいる訳なのだから…………。
いくら彼女とは、歌手になる前からの関係でも、今のままで良いとは到底思え無い。
俺は、思考を止めると、目前の社長室の扉を叩いた。
「どぞ~。開いてるよ」
高い声は、女のモノ。
言い忘れたが、義理母で実姉だ。
まぁ、ちょっとややこしい関係性なのだが、一応育ての母親だ。
と、言うのは社内では機密事項扱いされている。
この人、かなりふざけた性格だが、その辣腕ぶりは、内外でも一目置かれている。
そんな奴が、朝っぱらから何用なのか?
「来たぞ」
「相変わらず愛想の無い男だね。真紘、ちょっとあんた、ちゃんと御飯食べてんの? ……また、痩せてるじゃない」
「少しずつなら食べてる、これでも。柚芽のおかげでね……」
「難儀な子だねぇ。あれが死んだのは、お前のせいでは無いじゃ無いか。男の無理心中だったんだから……」
姉が、痛い所を突いて来る。
わかってる。
時間が経つに連れて、様々な事が浮き彫りになって来て、結果、俺は、全て独りで抱え込んだ。
警察に遺体を確認しに行ったのも俺だけにした。
柚芽には、何も言えなかった。
言える訳が無い。
姉には知られる所と成ったのだが、そんな姉でも、ショックでおかしくなった俺の事は救えなかった。
其れだけひどかったんだ。
「社長。そんな話をする為に、俺を呼んだのか?」
俺は、無理矢理話題を変える。
俺の事等、正直、どうでもいいからだ…………。
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宣伝失礼します。
このお話と同時進行で、別のお話も公開しております。
『青碧の魔術師』と言うタイトルの恋愛ファンタジーです。
超絶美形が超甘々に甘やかす予定です。
其方も合わせて読んで頂けたら幸いです。
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