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⑦
しおりを挟む「は~い。撮影終了です! 打ち上げ参加する方は、こちらに名前をお願いします! 」
助監督の女性の声に、私の耳元で囁いていた真紘さんが、身体を戻して舌打ちをする。
理由は、会話が中断されたから。
真紘さん、結構、話の腰折られるの嫌う人だから…………。
彼がイラついている中で、周りから溜め息が聞こえる。
私はてっきり、真紘さんへの賞賛の声だとばかり思っていたのだけれど、それは私を含めての賛辞で。
私はそれに喜んで、素直な笑顔を周りに振りまいた。
真紘さんの機嫌を、尚一層、悪くさせる事にも気付かずに。
本当にね、率直に嬉しかったのよ、私。
演技なんて出来ない、ド素人でしょ。
なのに…………。
真紘さんの機嫌は、あっと言う間にどんどん傾いて…………。
「結芽、何、気前よくみなに笑顔振りまいてんの? 柚芽の笑顔は、俺だけのモノじゃ無かったっけ? 」
なんて、意地悪を言う。
「…………っ、もう、真紘さんってば………… 」
困った顔ありありの私に、真紘さんは、深い闇を映し出した深緑の瞳で、私を見つめていた。
「なんてね。少し意地悪し過ぎたか? 悪かったよ」
そう言って、私から離れようとする真紘さん。
私は思わず、慌てて彼の服の袖を掴む。
「あっ……ごめんなさい………急に………」
くんっと真紘さんの身に衝撃が起きて、彼が思わず振り返る。
私ってば、本当、唐突。
真紘さんを驚かせてしまった。
「何で柚芽が謝る? 結芽が謝る必要なんて何処にも無い」
そう言って、真紘さんは近寄って来て、私の頬を撫でた。
指先で撫でる優しい貴方の動作は、切なすぎて、私の心の中を愛しさが込み上げて来るのに十分で、思わず感極まって泣きそうになった。
「何、泣きそうな顔してんの。泣き虫結芽。それに、打ち上げなんて、絶対、行かないし、終わったんなら…………」
『ホテルに強制連行するから』
なんて事を、抱きついた私を受け止めて、真紘さんは、そう耳打ちした。
それはそれは、甘く、妖艶の有る声音で…………。
だから私は………………。
「好き。好き。愛してるの……真紘さんだから………… 」
おもわず、真紘さんに抱きついて涙をぽろりと零した。
そっと背中に手が回り、ぎゅっと抱き締められた。
そして、そっと頭を撫でられる、優しい手の感触。
いい子、いい子。
まるでそう言われているようで…………。
私は、また一つ、涙を零した。
「解ってるから…………。もう、泣くな」
優しい、今日に限ってこんなに優しいのは、彼が『mahiro』だからなのだろうか。
私は、今日に限って、優しい彼にすがりついた。
まさか、後々、この光景がCMで流れるなんて、今の私達に知る由も無かった…………。
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