無実の罪で断罪される私を救ってくれたのは番だと言う異世界の神様でした

黄色いひよこ

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長い1日の始まり

粗悪な魅了に掛かった末路は…

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   流石に薬師は、紛う事無き神だ。

   エアリアルの世迷い事など歯牙にすら掛けない。

   ぶれる事など一つも無かった。

   
「お前には、少し眠って貰うよ。勿論、拘束する為にな」


   どんなにエアリアルが喚き散らし、暴言を吐き、魔術を使おうとも、薬師の敵にすらならない。

   光を纏う神にエアリアル程度の闇が端っからかなう筈も無く、エアリアルは割とあっさりと眠らされた。

   眠っているエアリアルから自由になったのか、彼女の瘴気が這いずり出ようとしたので、薬師は、もう一度錫杖を打ち鳴らしエアリアルごと、瘴気を結界内へ閉じ込めた。

   結界の中が瘴気で充満して、エアリアルが見えなくなっていく。

   その中にいる人間がどうなるのか良くは解らないが、本人から出て来ている物だ、心配は要らないだろう(死んだら死んだで当人の自業自得と言う奴だ)。

   そう思うと、薬師は次に隣で呆けているリックス皇太子を見た。

   エアリアルに裏切られ、簡単に捨てられた男の姿が、これだ。

   茫然自失で、目が死んだ魚の目のようだ。


   「皇太子よ。馬鹿な真似をしたものだな」

   「あぁ…… 私も今になって気付いたよ。もう遅いけどな」


   リックスはそう言うと、苦笑した。

   どうやら徐々にでは有るが、エアリアルに施された『魅了』の呪縛が溶け始めているのだろう。
   
    あの女はとんでもない毒婦だった。

   あれは『魅了』だ。

   言葉で誤魔化しながら俺に掛けようとしていたようだが、俺には耐性があり、効かない。

   薬師は、リックスを見据えたまま、そう考えを巡らせていた。

   薬師は、『薬師』である為、毒や術などは一切効かない。

   それどころか、他人すら癒やしてしまう。

   リックスが正気に返り始めたのも、実は薬師の側に居た為だった。

   そうでもなければ、完全に粗悪な魅了の術に掛かった者の末路など、廃人の一択しか無かったのだから。

   リックスの言葉に、薬師は少しだけ優しく接した。

   リックスとて、心をしっかり持てば、止ん事無い立場の男だったのだ。

   だから厚生の余地はまだあろう人物だと見た。

   皇太子、皇子からは排斥されるだろうが………… 。


   「まだ、終わってはいませんよ。確かに皇太子としてはもう駄目でしょうが、貴方には、命、と言う大切なものがあるでしょう」


    正気に返ったリックスに、薬師は、罪を認めて償うよう諭した。

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