無実の罪で断罪される私を救ってくれたのは番だと言う異世界の神様でした

黄色いひよこ

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長い1日の始まり

は!? 聖獣ルナティって……

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   リックス皇太子が逃亡の心配は無いと判断した薬師は、二人を月光に任せ、自分は早速神獣と皇帝夫妻を呼び出す事に従事した。

   この場合、魔法なら召還魔法なるモノを行使する訳だが、薬師は仏教の神の一人だ。

   魔法を使う人間とは、元々成り立ちも存在も全く違う。

   だから、召還方法も魔法とは全く違った。

   何もない、ただ青い空と白い雲が見える空間に、無造作に錫杖の先で上から下へと線を引くようにゆっくりと振り下ろす。

   ただ其れだけの動きに合わせ、青い空間から闇が現れた。

  その闇に向かって、薬師は、落ち着いた声で言う。


   「この世界を統べる聖獣ルナティ及び、その者が守護する帝国の皇帝夫妻。此処へ来い」


   切り裂かれた空間にただ名前を言いつけるだけの行為。

   其れだけで、薬師の目前に二人と一匹が空間から放り出された。

   はっきり言って、詐欺のような能力の発現のしようではある。

  だが、コレが神でもあった。


   上手に出て来れた皇帝夫妻と、それに相対して転がり出て来た聖獣ルナティ。

   この扱いの差は、なんだ。

   コレも薬師の気持ちひとつと言う奴だった。

   薬師は、彼等にキョロキョロさせる間もなくもう一度、転移の術を使った。

   嫌、正確には転送だ。

   薬師は、自分ごと関係者全員を転送させたのだった。


   そう、関係者全員と、ナディアのいる元へと。









   「すいません、すいません、すいません…… 」


   土下座をして、頭を地面にこすりつけ、ひたすら謝罪していたのは三十センチ程のぬいぐるみだった。

   
   それも、遠い遠い昔(遠い目…)、人界で見た事がある気がする。
 
   緑のたてがみ、黄色い姿。

  とある会社のマスコ………… 。


   其処まで考えて、薬師は思考を中断させざるをえなかった。


   「『ライオンちゃん』ですね。流石、小説の世界だけはある……… 」


   確信を突く日光に、


   「嫌、違うって、何か可笑しいよ。『聖獣ルナティ』は、トラだよ!?  トラ!  ライオンちゃうしっ」

 
  と、読み得た知識を披露する月光。


   「だが、現にあれだぞ。ライオン石鹸の………… 」


   流石に全部は言えないか、薬師。

   
此処まで来たら流石におかしいと感じる三神である。

   これではただのお笑いだ。

   
   この箱庭世界で何かが起こっている。

  そしてこれはまだ序の口。


  薬師は、徐に周りを見回すと疑問をひとつ皆に投げかけた。


   「皆さんんに聞きたい。『聖獣ルナティ』は、元からこのような姿でしたか?  」


   この世界の者達が皆一様にコクコクと頷く中、ナディアだけが眉根を寄せてフルフルと左右に首を振る。


   態度で示すことで暗に違うと訴え掛けるナディア。

   流石は凪の生まれ変わりだと、薬師は自分の番を見つめ、微笑んだ。


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