無実の罪で断罪される私を救ってくれたのは番だと言う異世界の神様でした

黄色いひよこ

文字の大きさ
33 / 220
神獣白虎『ルナティ』

聖女の彼女

しおりを挟む

   「さて、ルナティの件はあらかた解決したと考えても良いとして、残りの三神獣ですが、誰から攻略すべきでしょうかね? 」


    薬師が、ナディアを抱え直しながら言った。

    いい加減、ナディアを降ろしてはどうかと思うよ。
  
   何度も降ろして欲しそうに身じろぎしていたナディアは、結局叶えて貰えずに今に至っている。

   どうやらもう半分、諦めて仕舞ったようだ。

   周りも薬師の行動に慣れたのか、気にも留めない。

    もとい、番とはそう言うものだと認識している。と、言う所か。

    溺愛の総てが『番だから』で終了してしまう所が、なんと言うべきか、一抹の不安が過る。

   さて、薬師の問い掛けだが、それには、意外な人物が答えを出した。


    「ルイボス王国はどだろうか? 隣国ですし、彼方には我が妹が嫁いでいる故、入国もしやすい。同盟国なのですよ。それに、少し(嫌、かなり)、隣国に対し不安事が有りましてな……… 」


    そう提案をしたのは皇帝だった。


   「ルイボス王国か………。不安事は追々聞くとして守護神獣は何に当たるんだ? 」

    「朱雀です。薬師様」

    「ルイボス王国は、今、疫病が蔓延していて、その原因は神獣朱雀だそうです。彼女が病に倒れ、穢れを振り撒いていると専らの噂ですよ」

    「ん? それは本当ですか? 朱雀と言えば南方を守護する鳳凰、火の鳥。生まれ変わりを象徴するあの鳥が病? 」


    にわかには信じられないと言いたい所だが、そうも言えないのが今の現状。


    「避難出来る内に、王族だけでもうちに来いと妹にいったのですか、返答も無く梨の礫です。どうか薬師様、妹の家族を、あの国を、救っては頂けないでしょうか…… 」


    皇帝の言葉に、薬師は思考を巡らせる。


    「考えるだけではどうにも成りませんね。取り敢えず、行ってみるしかなさそうです。情報が無さすぎますから……。メンバーは、そうですね、日光月光と、ルナティ、そして私です。疫病が蔓延しているのなら、人の身では危険ですからね。少数精鋭で行きます」


    そう言う薬師に、待ったをかけたのは意外にもナディアだった。


    「お願いです、薬師様。私も一緒に連れて行って下さい。聖属性ですし、聖魔法なら大抵のものは扱えます。お願いです……… 」


     どういう風の吹き回しなのだろう。

    ナディアはお留守番のハズだったのだが。

    
    「いけません、ナディア嬢。貴女は人間なのですよ。凪のように女神の身であったなら連れて行けますが、貴女は人間、魂は女神でも身体は人ですそんな貴女を、疫病の蔓延する土地に連れて行けると思いますか? 」


    真剣な目をして拒む薬師に、挑むような目をしてみせるナディア。

    意外と強情なナディアに、薬師はジッと彼女を見つめた。

    端から見れば恋人達の甘い甘い一時に見えるが、視線を絡めたただの我慢大会である。


    「私は、『聖女』ですわ。薬師様。聖女には御役目があると思うのです。ですから連れて行って下さいまし」


    折れるのは薬師の方だと思う。

    彼女は『聖女』。
 
    その事実が覆らぬ限りは。



   
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...