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神獣白虎『ルナティ』
万能薬、その正体は金平糖!?
しおりを挟む「よし、良い子だ。皆まで言わなくても解ったみたいだな。ルナティ、時には引く事も必要なのだよ。逃げる事は決して恥ではない。己の力量も図れず、挑む事こそ愚かなのだよ。弥勒の愛し子よ……… 」
そう言って、薬師はやっぱりルナティの頭をなでたくった。
ワサワサと。
そして唐突に撫でるのを止めると、突然、掌に小さな蓋の付いた壺を顕現させた。
それは薬壺という、薬師だけが持つ事を許された持ち物。
その中には、万能薬が入っていると言われている代物だ。
人間が作る万能薬と言われる薬とは桁が違う。
かけて良し、塗って良し、飲んで良しの妙薬である。
薬師は、その壺の蓋を取り、中から小さなトゲトゲで桃色の粒を一つ取り出した。
その粒は、見た目金平糖に見えた。
勿論、ルナティ達には金平糖が何たるかを知りはしない。
そしてコレは見た目金平糖だが(味も金平糖だが)万能薬には違いなかった。
出鱈目な行為が得意な人の造る薬は、その姿、薬効も出鱈目だった(勿論、良い意味で)。
「ルナティ、口、開けなさい」
そう薬師に言われて、パコンと口を開けたルナティ。
パペットの様にパコンと開いた口の中に、薬師は金平糖擬きを放り込むと、パコンと音を立てて口が閉じた。
因みに、開いた口の中は普通に生き物だった。
ぬいぐるみなのは、見た目だけである。
流石、薬師の友人。
類共弥勒のやる事である。
ルナティの造りも出鱈目であった。
「つつつぅ~っ、っあっま~~いっ❤おいすぃ~❤」
ほっぺたに手を置いて、小躍りするルナティに、脇侍二人と、薬師以外が注目する。
ナディアも勿論注目していて、「良いなぁ、私も食べてみたい」と言う言葉に、薬師が「あれは薬だから、駄目ですよ。後で薬効の無い物を作って差し上げますから我慢して下さいね。あれは元々お菓子ですからナディア嬢も気に入ると思いますよ」と、答えていた。
やっぱり、元は金平糖だったか。
それを聞いた皇妃も、ナディアに「妾にも少し分けて貰えないか? 」と頼んでいる。
外野がそんな会話をしている間に、ルナティの身体はぱぁっと輝いて、薬が効いたサインを周りに知らしめたが、誰も見てはいなかった。
皆さん、何か、損してませんか?
薬師様の万能薬の効き目なんて誰も見れないんですよ。
めったに使用されないんですから。
あれよあれよと言う侭に、ルナティの輝きは薄れて、ルナティを見ていた薬師と脇侍達だけは、目を細めて結果に満足していた。
「ルナティ、それで神力のキャパは元に戻りました。後は君が神力を練って貯めて行くだけです。頑張って貯めて行くんですよ。神力だけは薬では治せません。そもそも、病では有りませんしね。其処は努力です。ルナティ」
解りましたか?と薬師に聞かれて、ルナティはコクコクと頷いたのだった。
その頷きは、かなり高速であった。
勿論、「ありがとう御座いました~っ!」と、言う挨拶はきちんとしましたよ。
でないときっと、お三人様に説教を食らいますからね。
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