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神獣白虎『ルナティ』
何故、何故、何でなの~っ!
しおりを挟む「それも悪くないとは思うのですが、確かに不便な時も有り ますよね…… なら、ここぞと言う時に……… 」
そう言って薬師は、ルナティの頭をうにうにと撫で回した。
ただそうしただけだったのだが。
「はい、良いですよ」
そう言って手を離した薬師は、ポンと言う音と共に変身したルナティを見て微笑んだ。
相変わらず、出鱈目な人だ。
円卓に突如として現れた白い虎に、居合わせた一同は目を丸くしてルナティであった者を見た。
嫌、今もルナティだ。
本性である白虎に戻っているだけだ。
「ん、ナディア嬢の言う通り美しい虎ですね」
「おぉ、薬師様ありがとう御座います。あぁ、これが私です。私の本来の姿なのです」
そうルナティが感激した途端、またポンと元のぬいぐるみの姿に戻ってしまった。
いやはやこれ如何に?
丁度三分位だろうか?
カップラーメンが出来るくらいか、はたまたウルトラマンのカラータイマーの時間だったか。
その程度でルナティはライオンちゃんに戻ってしまった。
「何故………。何故……………。何でなの~っ!?」
くずおれて泣く姿は可愛いくもあり、可哀想でもあり、ナディアが思わず、平均より少し小さな割には着痩せする胸に抱きしめて、よしよしする位には、哀れで可愛いかった。
薬師が密かに、ムムッとしたのは言うまでも無い……… 。
ルナティが僅かに三分しか元に戻れなかったのは、別に薬師様の意地悪と言う訳では無い。
偏に、ルナティの神力不足である。
「うっわっ、ルナティってば見事にウルトラ」
「月光、およしなさい。可哀想です」
「ちょっと、お二方! 理由をご存知でっ!? 」
日光月光の言葉に、彼等の元へ駆け寄るルナティ。
そして凄い剣幕で問いかけたのが今の台詞と言う訳で。
その問いに対して答えを出したのは、ぎゅっとナディアを抱え込み直した薬師であった。
「神力不足ですよ、ルナティ。貴方は過去に、あの二神と一戦交えましたね。そしてボロボロになって死にかけました。………その姿は弥勒の慈悲だ。まぁ、茶目っ気も少なからず出ている様だがな……… 」
最後ら辺りの口調は、わざとだろう。
口調を強めて地を出したのは、薬師の慈悲だった。
白虎を含めた四神はきっと弥勒のお気に入りだと言う事を、薬師は気付き、ルナティは気付かない。
その辺りの親の心子知らずを薬師はたしなめたつもりだった。
そして、ルナティも馬鹿では無い。
しゅんとしてうなだれたのだ。
コイコイコイ、おいでおいでおいでと、薬師にまた手招きされるルナティは、一瞬、またぐりぐりされるのかと警戒したようだが、諦めたのか落ち込んだまま薬師の手元にトコトコとやってきた。
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