無実の罪で断罪される私を救ってくれたのは番だと言う異世界の神様でした

黄色いひよこ

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神獣白虎『ルナティ』

世界が壊された理由③

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   「はいっ、ストップ。薬師様、過度なスキンシップは其処までにして下さいね。まだ敵の名すら聞いていない段階でいちゃつくのは止して下さいね」


    同じ様な意味の事を違う言葉で二度言われたような気がすると、日光の言葉に眉をひそめる薬師様。


   「はぁ………、わかりました。でしたら、さっさと終わらせましょうね」


    薬師から笑顔が消えて、真顔になる。

    美しく整った顔をしている分、表情に薄くとも笑みが無ければ氷のように冷たく感じられるのは、気のせいでは有るまい。

『美貌の主』と言う者はそれだけ冷たく映るものだ。

    今の薬師は、まさしくそれであった。


   「敵と言っても過言ではないとも言える二神とは、愛染明王と哪吒太子だ」

   「あ~ 、寄りによって、あの質めんどくさい二人ですか」


    薬師の言葉に、 すぐさま反応したのは日光だった。


   「そうですね。あの質めんどくさい子供とお釜です」

   「薬師様、それを言っちゃお仕舞いです」

   「私は嘘は言ってませんが、何か問題でも?」

   「すいませーん。問題ないっす」


    緩く睨む薬師に、たじっとする月光。

    二人の言い合いは掛け合い漫才のようで、少し場が和んだような気がした。


  「愛染明王あいぜんみょうおう哪吒太子なたたいし、どちらも神様なのですねぇ……… 」


    そう言って間延びした声を上げ、溜め息を吐くのはルナティで、どこか不安げだ。

    ぬいぐるみなので表情は無いに等しいが、声音で不安なのだと言う事が解った。

    しゃらりと薬師の耳元で、装飾具が美しい音色を立てた。

    彼が円卓に身体を寄せて、ルナティに向かって手招きをしたせいだった。

    何事かと首を傾げながらトコトコと薬師の手元に移動したルナティは、突然その頭をぐりぐりと撫でられて驚いた。


   「そんな『不安です』みたいな声を出すな。何の為に我がいる。きっちり彼奴ら捕まえて、お前達を解放してやる」


    そう言ってふっと笑って、


   「私は、ナディア嬢がこの世界でその寿命を全うするまで、彼女と共に老いて行こうと思っています。ですから………、心配無用ですよ。何かあったら相談位なら乗って差し上げます」


    薬師にとっては当たり前の事で、彼等にとっては爆弾を投下するかのような発言を、あっさりと彼は言ってのけたのだった。



   「先ずは四神の解放ですが、ルナティは姿が違うだけで問題ないですね。だとすると、「えっ!?」」


   やはり、そう来て当たり前か。

   予想通り悲鳴を上げたのは、ルナティだった。


   「私の姿、この侭なんですかぁ~~!? 」


    わちゃわちゃと、手足を動かして嘆くルナティを見て、薬師がにっこりと口角を上げて笑った。

    どう見ても、意地の悪そうな微笑みを唇に刻んでいる。

   
    「この侭の方が愛嬌があると思うのは、私だけですかね? 」



     この男、しれっと言ってのけたよ。

    少し、ルナティが可哀想に見えたのは、言うまでも無い。

   所詮、弄られキャラのルナティであった。



 
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