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神獣白虎『ルナティ』
あれ、あれ、もしかして?
しおりを挟む逸れを薬師はナディアを膝に抱えたまま晴明の手から受け取った。
見た目はただの紙人形である。
だけれどこれは『式』と呼ばれる晴明の『式神』。
中身は凪の得物である。
薬師は逸れを手にしつつ、「ん~っ」と唸って名残惜しそうにナディアに言った。
「ごめん、ナディア嬢。君を少し膝から降ろす」
その言葉にナディアの表情が、見るからにパアァァと明るくなった。
あからさまに降ろされるのを、喜んでいるのが解る。
残念な男だなぁ、薬師は。
「そんなに嬉しそうにしなくても…… 」
そう薬師は呟いて溜め息を吐く。
「だって、恥ずかしかったのですもの」
と、薬師の溜め息にナディアの言葉が返って来た。
がっくりと、肩を落としてはみたものの、そこはそれ、早々と気持ちを切り替えて、薬師は人形を掌に置いて目線の高さに掲げた。
何が起こるのだろうと、脇侍と晴明意外は薬師のする事に興味津々であった。
ゆっくり、ふうーっと紙人形に息を吹きかけると、掌から人形がふわりと飛び上がってナディアぐらいの大きさへと変化した。
その紙人形の胸の中心辺りを薬師はスッと優しく撫でるとぐいっと何かを引き出す素振りをして見せた。
何かを引き抜く勢いに任せて、短剣とレイピアとの中間位の長さの剣が、つらつらと何本も人形の胸から現れたのだ。
それは全部で十二本。
くるくると回転して、時計の文字盤の様に整列すると、空中を廻り出した。
そう、コレが凪の得物である。
薬師が懐かしい物でも見るように目を細める。
ナディアにとって、前世の自分が使っていた物らしいのに、何も思い出せないのが悔しかった。
薬師の表情に、ナディアの胸がつくんと痛む。
「薬師様の馬鹿」口の中で呟くように言ったナディアは、漸く自分が薬師に惹かれている事を知った。
「さて問題は、コイツを俺が扱えるか、だよなぁ。コイツ等、凪の言う事しか聞かねぇもん」
そう言いつつ、剣は編隊を組んで廻っているが、扱っているとは言わないだろうか? と、皆が本当は疑問に思っていると思う。
そんな折り、薬師がすいっと手を動かすと、剣達はガタガタと隊列を崩しだした。
「やっぱり、無理か!? 」
薬師の悔しげな声に、ナディアが間髪入れずに、怒鳴っていた。
「駄目っ!! しゃんとしなさい!ちゃんと薬師様の言う事を聞いて! 」
するとどうだろう。
隊列を崩した剣達一本一本が意志を持って崩れた隊列を立て直した。
「な、ナディア? マジ、ですか…… 」
薬師が信じられない物を見た、と、言う顔をしてナディアを振り返った。
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