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諸悪の根源
朱雀
しおりを挟むうううう……。
痛い、痛いよぉ。
中途半端に手足を折られ、身を汚され蘇りも出来ない状況下で痛みだけが頭の中をはっきりとさせる。
良いのか悪いのか、思いたくも無いのに負の感情が身体を這いずり回って気持ちが悪い。
どうしてこうなったのか、何故自分なのか、訳が解らなかった。
昔の自分なら勝てたかも知れない。
だって今の自分は、転生仕立ての幼体だから。
朱雀はそう考えて首を振った。
つもりだった。
身体が動かなくなる程痛めつけられたから首すら動かない。
大人の身体でもきっと勝てない。
青龍や玄武を見ていたから解る。
アレは、アレ達はこの世界の生き物では無い。
何しに来たのか。
どちらにしろアレ達がこの世界に害を為すモノ達でも、私達ではどうにも出来ない。
誰か、誰か、助けて下さい。
私は良いですから、この世界を救って下さい。
この世界は、彼等に壊されてしまう。
そんなのは嫌だから。
誰か助けて。
朱雀の思考が、天を駆け巡る。
思いが、空を舞い上がる。
「その思い、私が受け止めた。朱雀、玄武、青龍、白虎。四神の思い、この薬師如来が引き受ける」
宙を切り裂きながら顕れたのは、神々しい程の光を放つ、彼等より強い事が朱雀にも嫌でも解る程の神々しい神様だった。
包み込むような優しい波動だった。
その人が、ゆっくりと、けれどもしっかりとした足取りで朱雀の元にやってくる。
緩慢に重い瞼を押し上げると、夜を纏ったような黒い髪と瞳をした、造作が整い過ぎている男の人が朱雀を覗き込んでいた所だった。
「薬師様だ…… 」
「何で此処に…… 」
驚いたのは、愛染と哪吒だ。
半分パニックに陥っているのに、薬師を愛でる事を止めない所は天晴れと言えよう。
薬師は、二人の呟きに対しては完全無視を決め込んで、朱雀に視線を落とした。
「君の思いが強かったから此処まで来れた。辛いだろうが今しばらく、待っていてくれないだろうか? 」
薬師の問い掛けに朱雀は、瞬きをする事で承諾の合図にした。
「さて、朱雀の同意も得られた事だし…… 」
薬師は立ち上がると、悪童二人と対峙した。
「お前ら、良い度胸だ。望み通り至極丁寧に可愛がってやるよ……。覚悟しろ」
そう言って剥き出しの、冷たい闘気を二人に叩きつけた。
────────────
─────────
─────
さて、時は、30分程前に遡る。
丁度朱雀が祈りと言う救いを求めた時、その思いが遥か遠くに居る薬師の元に届いた。
寝ようとしていた薬師は、切羽詰まった思いに跳ね起きてリビングへと足を運んだ。
歩きながら指をパチンと鳴らして一瞬にして動きやすい服装に着替える。
リビングへと続く扉を開けると、空間移動でもしたのか、脇侍二人と白虎が既にやってきていた。
ℵℵℵℵℵℵℵℵℵ
お知らせ
度々失礼します。
読んで下さっている方が少数の為、今一度お知らせさせて下さいませ。
今連載中の『悪役令嬢にされた白雪姫のひとり娘は人形使いに恋をする』大分進んで参りました。
私としては、この薬師様の話の次に思い入れのあるお話でして、ヒーローは薬師様並みにカッコ良く書いてます。
かなり辛い思いを沢山する男ですのでヒロインが力強い少女になっております。
彼等の周りに集うキャラクター達も魅力的で癖と味があるキャラになっています。
世界観は、昭和初期帝国主義の日本と現代日本を混ぜた感じて、空には異世界が広がって二つの世界を往き来出来ると言う世界です。
異世界、転生、チート、陰陽師、色々ごちゃ混ぜで、私、ノリノリで書いております。
悪役令嬢にされた白雪姫のひとり娘は人形使いに恋をするを宜しくお願いします。
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