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諸悪の根源
夫婦みたいに見えますよ
しおりを挟む「何コレ、口の中でスッと溶ける。美味しい」
「基本、私の薬は食べて美味しく感じるよう作って有ります。薬は苦い、不味いが定着するのは如何なモノかと、常々感じているものですから」
そう言って薬師はにっこりと笑う。
薬の効能はハッキリしていて、即効性もあった。
目に見えて輝かしかった悉陀の神気が、成りを潜めている。
薬は効いたのだ。
「悉陀、これで朱雀の看病が出来ますね。彼女は貴方にお任せします。この薬を毎日一粒飲ませて下さい」
薬師はそう言って金平糖の入った薬袋を手渡した。
朱雀への対処が思った以上に上手く行ったので、青龍か玄武の捜索に切り換えるつもりなのだ。
勿論、朱雀から情報提供はしてもらうつもりである。
「取り敢えず、今日はもう遅い。何もする事も無いですし就寝する事にしませんか? 悉陀にはここのソファーに寝てもらう事にして、って、おや? 月光が居ませんが何処へ? 」
「あやつならルナティを追い掛けて行きましたよ。ルナティもあのナリですからね。心配なんですよ。何も出来ないぬいぐるみですから、皇妃様の所に行くまで以下程の時間が掛かるか。逸れを鑑みての月光の行動です」
「あぁ、なる程。ルナティは何時も私かナディアが抱えて移動していましたからねぇ。申し訳無い事をしましたね」
眉を下げて申し訳無さそうな表情を見せる薬師に、日光は朧気に笑う。
「薬師、先から話しているルナティとは誰なんですか? 」
悉陀が首を傾げて問い掛ける。
そう言えば、朱雀にかまけてコイツ、見えて無かったか。
ルナティが。
薬師はそう考えて、悉陀にわざわざ説明した。
「ルナティは、この世界の四神獣の一人でこの帝国の守り神、『神獣 白虎』ですよ。悪童二人に力の総てを奪われてぬいぐるみに姿を変えられてしまいました。虎なのに何故かライオンに変えられてましてね、まぁ、あの馬鹿二人ですから、トラとライオンの区別も付かなかったのでしょうね…… 」
流石は薬師。
丁寧な物言いの割に、揶揄り下げずむのは忘れない。
やけににっこりとした作り笑いは欠かさない。
「あ! ルナティの言い忘れていました」
「「何をですか?」」
薬師の突然の言葉に思わずハモってしまった日光と悉陀。
二人、顔を見合わせてどうにも複雑な表情を見せる。
逸れを見て見ない振りで話を続ける薬師である。
如何にもっと言う感じだ。
「ルナティに続き部屋が有る部屋を朱雀の為にと頼むのを忘れていました……。私とした事が……。いけませんね」
なんだ、そんな事か。
そう思ったのは日光である。
「大丈夫ですよ。ルナティも月光も聡いですからね。あんな態度の悉陀を見ていれば、下手したらツインルームですよ…… 」
「あんな態度ってどんな態度ですかっ!? 」
驚く悉陀に薬師と日光は、眇めた目で悉陀を見た。
「君は、自分の態度とうろたえ様に気付いて居なかったのですか? 」
「夫婦みたいでしたよ。悉陀」
首を傾げる薬師と、ニヤリと笑う日光に、悉陀は驚いた顔を見せた後、顔を赤らめて俯いたのだった。
暫くは、二人にからかわれるのは、決定事項とあいなったのは言うまでも無い。
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