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神獣朱雀『エレオノラ』
青龍は何処?
しおりを挟む朱雀が目覚めてから、彼女の世話役は当然の如く悉陀となった。
勿論、此処には沢山の侍女が勤めている。
朱雀の世話が出来る侍女だって居る。
けれど彼女の面倒は悉陀だった。
仲を深めるか否かは彼次第だ。
「では、青龍は雷に打たれては居るものの、死んではいないと言う事ですね。その意見はルナティと同じですね。力の均衡は保たれているから、ですか…… 」
「はいっ、ルナティがわたくしと同じ意見なら間違い無いですっ」
赤く、燃えるような緋色の真っ直ぐに伸びた髪を揺らしながら、真っ白な肌の美少女が元気よく答えた。
年の頃は10歳位だろうか?
あぁ、と言う事は悉陀に恋愛感情があれば、ただのロリコンでは無いか。
あ、でも、彼も如来だからどちらかと言えば、父性? だろうか?
朝食代わりの西洋なしを、しゃくしゃくと咀嚼するエレオノラの口元を、ハンカチで拭う悉陀の様子を見ていると、「あ、やっぱありゃ親か」と、無駄に納得してしまう薬師様と脇侍二人。
ちょっと、嫌、かなり微笑ましい光景である。
「後は青龍がどこに居るかですね…… 」
「それが判れば苦労はしない、ですよねぇ…… 」
打てば響く。
そんな風に会話を進める薬師と日光。
「この世界の地理すら把握出来て無いもんねぇ…… 」
そう言うのは月光。
そう、それです。
実は薬師達がこの世界にやってきて、まだ一日しか経っていない訳で。
当然の事なのですがお三方はこの帝国しか知りません。
因みに、朱雀は彼女が助けを求めたから渡れただけで、生きているだろうと言う事しか解らない青龍の居場所なんて、皆目見当も付かない訳で。
「せめて波動でも判ればなぁ……。 追えるんだけどなぁ…… 」
と、言うのは月光で、探索は彼の特技の一つだった。
「ルナティ、この世界の地図はどうなってますか? 」
「地図? 多分謁見室の壁にタペストリーが有ったはずですけど…… 」
「謁見室? 昨日の部屋か? 」
「そうですよぉ~」
「あー、遠いな…… 」
昨夜の、此処まで来た道のりを思い出したのだろう。
薬師が天を仰ぎ遠い目をした。
「あのっ、薬師様っ、わたくしが取って参りましょうか? 」
提案したのはナディアだったが、何故か薬師は彼女に向けてにっこりと笑った。
「ナディアが行く必要は有りませんから。此処には男が三人も居るのですからね」
ら
えっ? と言う言葉と共に己を指差す男が三人。
勿論、薬師は自分を其処に含めていない。
「私は朱雀の世話が有りますから」
そう言ったのは悉陀。
「えぇ!? おれっ!? 無理無理無理ーっ!? 昨日徹夜みたいなもんだったんだよ!俺っ!! 」
コレは月光。
「はぁ、しょうがないですね」
そう言って溜め息を吐き出したのは、日光だった。
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