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神獣朱雀『エレオノラ』
無駄な●●●
しおりを挟む「んっとにろくな事しね~な、あいつら」
そう言った薬師は、しかめっ面で空中に水の玉を作り其処に真っ赤に染まった手を突っ込んだ。
水が中でゆっくりと動く。
しばらくの後、ゆっくりと引き出すと綺麗に洗えてはいるものの、手には無数の傷が付いていた。
その中でも、手の甲に付いた傷は深そうだ。
「薬師様っ、手当てを!! 」
「大丈夫、心配入らない。この位、舐めときゃ治る」
慌てるナディアに、薬師はそう軽口を叩く。
まぁ、薬師に取ってはコレも軽口に入らないのだろうが。
彼は目線より少し上の位置まで傷口を持って行くと、ぺろっと少し舌を出した。
勿論、薬師に取っては何気ない自然体で行う『舐めときゃ治る』なのだろうが、第三者には違って見えた。
薬師、と、言う名前を持つ彼は、名前の通り、薬と病の神で有り、治療の神でもある。
その関係上、実は彼自身が薬でもあった。
体液、肉、総てが薬である彼は、文字通り 『舐めて治す』なんて朝飯前だ。
その流からの『傷口ペロペロ』な訳だが、動物が傷を癒やすのとは訳が違った。
まずその容姿だが、柔らかで女性的な美しさを持つ彼は男だが、『漢』からは程遠い。
けれど、その行動力は、紛れもなく漢と言っても過言では無いので、なよっとはしていない。
ただ、なまじ女顔な為にちょっとした仕草で妖艶に見えてしまうのだ。
本人の思惑如何に関わらず。
だから、赤い唇からちろりと覗く舌先や、単に傷口を見ながら目を細めた仕草が、端から見たら鼻血モノの色気1000%になる訳でして。
逸れを目の当たりにしたナディアは顔を真っ赤にし、エレオノラは子供には目の毒ですと悉陀に目を塞がれ、月光には、
「うっわ~、あいつらが喜びそうな無駄な色気~」
と、のたまわれ、日光には、
「気絶者が続出しますから、普通に手当てしてもらって下さい」
と、わざわざ救急箱をストレージから取り出される始末だった。
因みに、脇侍二人と、悉陀は免疫が有るので全然、大丈夫であった。
「あぁそうだ、薬師様。決して誰かを舐めて治そうだ等と、思わないで下さいね。実行もしないで下さいよ。でないと、死者と気狂いと気絶者が続出しますから」
「は? 」
日光の言葉に、薬師は疑問符を投げ掛けると同時にぴきっと舐めた体制のまま固まった。
「ほらほら、固まってないで手、出して下さい! 」
そんな日光の言葉に、
「えっ? あぁ、うん…… 」
と、言って動き出した薬師に、周りも漸く金縛りから解き放たれたのだった。
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