81 / 220
神獣朱雀『エレオノラ』
弟の秘密と世界の秘密
しおりを挟む話し合った結果? ナディアの母と弟が領主館、父が、帝都のペントハウスに決まった(本当に話し合ったのかは定かでは無い)。
薬師は、領主館に弟君を返す前に今一度彼を診察してみた。
身体全体、目、スキャンを身体に施して視ると、身体が弱いと言っている理由が解った。
お腹の中にいた時に、母親からの栄養が回らなかったのが理由だ。
勿論、それ意外にも理由はあった。
弟君は所謂バニシングツインと言う奴だった。
腎臓が4つ、副腎も4つ、尿管も4つ。
そして有ろう事か、身体の内側に袋状のものがあった。
胃と腸の隙間に、それは挟まれていたのだ。
そこから見ても確実に双子のなり損ない。
薬師は伝えるか否か、逡巡した。
そして何故か薬師は、彼を見ながら眉を寄せた。
「確か、君はロベルト君だったよね」
薬師がそう問い掛けると弟くん改め、ロベルトくんは、頬を染め、パアアアァァァと満面の笑みを顔中で表現した。
薬師に名前を覚えて貰えていたのが余程嬉しかったのだろう。
そんな彼に薬師はまた話し掛けた。
「頭の中に自分意外の意識が同居してない? 君の身体の中に別の子の身体が入ってる。部分的なパーツなんだけど……」
そう言って薬師は、言葉を切った。
ロベルトを見ると、知っていたのだろう眉を寄せて泣きそうだった。
「その子を君から取り出さないと二人とも共倒れするよ」
薬師がロベルトの目を覗き込んで言った。
薬師がこの地に降り立ってまだ二日目だと言うのに、余りにも様々な事が起こっている。
何がそうさせるのか。
この弟も、薬師が居なければその内寝たきりになり、早死にしていた運命があった。
そしてこの箱庭は、菩薩が作っただけあって無数の落ち度が有った。
だから、逸れを修復する為の最適任者が誰かと言えば、薬師如来しか居なかった。
それらを鑑みて、凪が弥勒に誘拐されてこの箱庭に転生させられたのは、本当に凪の保護の為だったのか。
有る意味、悪童達には黒幕が居るのかも知れない。
薬師は、思考の海に堕ちてしまった己の意識を現在へと浮上させた。
そう、今はナディアの弟を治療中だった。
薬師は軽く首を振り、意識をロベルトへと引き戻した。
「ロベルト君、君の中に何かが居る。その子と話したい。いいかな」
そう言われて、ロベルトには嫌だと言う選択肢は選べなかった。
其れほどに、薬師と言う人物は絶対王者だったのだ。
彼の両親や姉のナディアにとって今から起こる事は寝耳に水だった。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる