無実の罪で断罪される私を救ってくれたのは番だと言う異世界の神様でした

黄色いひよこ

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神獣青龍『香燕』

哪吒と愛染

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 愛染の薬師に対する愛は、そもそも哪吒とは大いに違った。

 哪吒の愛は、『愛欲』。

 対して、愛染のそれは『敬愛』。

 実は愛染は薬師に対して『欲』は無かったのだ。

 ただ、哪吒の為だけに自分も同じなのだと、偽って見せていただけの『迫真の名演技』だった。

 驚いたであろう。

 愛染の『愛欲』と言う名のベクトルは完全に哪吒に向いている。

 コレが現実だった。

 そして哪吒の愛は愛染の元に無いと言う事も、彼に突き刺さる辛い現実だったのだ。


 愛染はそっと哪吒に付き従う。


 それがどんなに間違っていると解って居ても、尚一層、薬師に嫌われる事をしているんだと自覚していても、そして、最愛の哪吒が狂っていると本当は理解していても。

 愛染は哪吒の好きにさせ、哪吒の命に従ったのだ。

 馬鹿な子供のふりをして。


 ── 薬師様、ごめんなさい。僕は可笑しくなりそうな程、貴方を愛していました。けれど、哪吒を貴方様以上に愛してしまいました。僕は彼を見捨てられないのです ──


 愛染は、目前に立つ哪吒の背中を愛おしそうに眺めながら、薬師の抜け殻を一瞥して独白した。

 そう、愛染は見捨てられない。

 孤独に苛まれ、偏見に晒され、傷付き、狂ってしまった魂を。


 だからか、哪吒の崩壊も此処で止まっていた。

もし、愛染が哪吒を見捨てていたら、彼の崩壊は留まる所を知らず、仕舞いには、愁いを帯びた薬師にその生を強制終了させられていたであろう。

だが現実は、愛染は哪吒を見捨ててはおらず、薬師も二人のする事は幼い童がする事と取り敢えずは神の物差しで差し計って現在の対処で済ませている。


 そして、そんな薬師も気付いていたのだ。


 傷付き過ぎて大泣きしている二つの小さな魂の存在を── 。



 そして、此処には居ない、更に傷付き嘆き、悲しみ、救いを求めるもう一つの魂の存在を。

 悪童達の後ろに居る一際大きな存在の嘆きを………… 。


 薬師は、とうに気が付いていた。







 「薬師様のお身体だよ♥愛染。嬉しいねぇ。やっと手に入るよ」


 にっこりと哪吒が笑う。

 そして引きつるルナティの表情。

 愛染が哪吒に言う。


 「哪吒、本当にやるの? 薬師様のお身体に別の魂を入れるって……。その魂、潰れちゃうかもだよ……? 」

 「ん? 何だよ、変な奴だなぁ。そうなったらそうなった時じゃん。自分から進んで入るってんだから、別に俺らが気にする事無いじゃん。変だねぇ、愛染は」


 哪吒がゲラゲラと笑う。

 愛染は、尚も食い下がった。


 「僕ら、怪我もしてるんだよ。無理しちゃ駄目だよ」


 愛染は無事な方の腕で、スッと哪吒に触れた。

 そう、この二人は薬師の罰により片手片足の関節総てを外されているのだ。

 実は愛染は、激しく鈍くを繰り返す痛みに耐え、這々の体ほうほうのていで哪吒に着いて来ていたのだ。

 だが哪吒は、痛みなど一つも無いような感で、高笑いをしていた。

 狂人は、痛覚すら感じなくなるのか。

 ケラケラと笑いながら外れて添え木をする足をダンダンダンと踏みならすように哪吒は、地面に足を打ち付けた。
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