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神獣青龍『香燕』
哪吒と愛染②
しおりを挟む「哪吒!! 駄目っ! 足が潰れてしまう! 」
己の痛みも顧みず、愛染は哪吒を止めようと縋り付けば、哪吒は愛染を振り払う。
その勢いでもんどり打って、壁の岩に激突する愛染。
「うあぁぁぁっ!! 」
痛みのあまり、悲鳴が上がる。
気を失いそうになるも、ぐっとこらえて意識を保つ。
すると哪吒は、はっと何かに気付いたように慌てて愛染の元へと駆け寄った。
「あぁぁぁぁ~っ、ごめんよ愛染! 痛かった? 痛かったよねぇ」
慌てて駆け寄る哪吒だったが、謝罪と心配を口にしながら、その顔にある赤い唇は綺麗だと言える程に弧を描いている。
其れだけで、彼が狂っているのだと言う事が良く解る。
哪吒が愛染に触れようとした瞬間、哪吒は後方へ吹き飛ばされた。
こんな所でわっぱ二人は、お互いの世界に入り込みすぎて周りが見えていなかった。
愛染の背中に触れる手が有る。
掌から伝わる温もりは愛染に傷への癒やしと心の癒やしを施して収束していく。
逃げられない痛みが、心無い哪吒に付けられた身体の傷が、ゆっくりと心の傷諸共癒されて、愛染は不覚にも安堵の息を吐き、意識を少しづつ混濁していき無くして行く。
── 哪吒、彼を置いてはいけないんだ。彼は寂しがり屋だから。独りにしたら、孤独にしたら、彼は狂って仕舞うから…… ──
『君が側に居なくても、彼はもう手遅れだ。総てにおいて害にしかならない』
── そんな事無い!哪吒は本当はとっても優しいんだ ──
『それでも、今の彼は君すら殺して仕舞うだろうね。それ程にあの子はもう駄目だ』
── そんな事! 解んないじゃ無いですかっ!! 薬師様っ!! ──
そう頭の中で叫んで、愛染は完全に落ちた。
哪吒は投げ飛ばされて、地面に這いつくばった。
身体全体に掛かる圧力。
哪吒が無理矢理その身を捻れば、ボキボキと骨が鳴る。
それでも、哪吒を押さえ付ける圧力は緩まる事は無かった。
地面に転がっていた筈の愛染が居ない。
どこだ!? 何処だっ!! と、探していると、すらりと長いブーツが見えた。
「君への罰に良い事を思い付いたよ、哪吒。君は本当は愛染を愛しているんだろう? だったら、愛する者を目前で奪われる辛さ、嘆きを、自ら体験してもらおうか。まぁ、お前が小奴を何処まで愛しているのか、甚だ疑問で罰になるかは、少し考えものなんだがな……」
そう哪吒に言い放ったのは、魂魄を一つにした薬師だった。
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