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神獣玄武『ナナミ』
玄武復活
しおりを挟む『お山が私を救ったと? 』
ナナミの言葉に、薬師は破顔一笑すると
「そうだね、君をこんな目にあわせたのはこの山だけど、ギリギリで君の命を繋いでいたのもこの山だ。この山は、君の母親でも有るが父親でもある。父である部分が君に無理を強いて、母である部分が君を助け続けた。面白いね。普通、山には男と女、別に存在するのに、この山は表裏一体で存在している」
そう、何時になく饒舌に語った。
そんな風に語りながらも、薬師は小瓶に薬を調合していく。
美しく細工されているキリコの青い小瓶に、アムリタを八分目、万能薬である金平糖二粒、そして、切った指先から二滴の血を落として蓋をして、チャポチャポと振り混ぜた。
さて、状態異常回復のエリクサーの出来上がり(あくまでも当社比)だ。
薬師は逸れをナナミに振り掛ける為、キュポンと小気味良い良い音を立てて蓋を開けた。
ネクターのようにトロンとした液体をナナミ石像に頭から掛けて様子見する。
薬剤が石像に染み込む頃、石像に柔らかさと色が戻り始めた。
それらの変化が驚く間もなく起こるのは何ら不思議な事では無かった。
完全にナナミの身体が復活した頃、その魂は肉体に収まったのか、消えていなくなっていた。
そして此処に、聖獣『玄武』が復活した。
「どうもありがとうございます」
美しい所作で礼をするナナミにひらひらと手を振る薬師は、
「まだ終わって無い」
珍しく真剣な顔をして言い切った。
「弥勒…… 」
至極簡潔な物言いだけでお互いのやるべき事を確認しあう。
心臓を刺し貫かれた後、ナディアが薬師の魂を身体から引き出し、己の子宮に導いた後、薬師から預かった世界樹を彼の心臓に植え込む手順だ。
それらは夜の女神、闇夜の女神であるナディアの役目であった。
弥勒が短刀を振りかぶる。
そして、躊躇い無く薬師の心臓目掛けて振り下ろした。
グサリと弾力の有るモノに、ズブズブとめり込んで行く手応えがあった。
弥勒にとって、大事な親友の身体が傾いで、自分にもたれ掛かって行くのも、受け止める覚悟も出来ていた。
其れなのに、薬師は顔色を変えただけだった。
「おい、ちょっと待て……。コレは想定外だぞ…… 」
そう言い放った薬師の顔付きが歪んだ。
とんでもなく複雑そうな顔付きに、彼はその美しいかんばせを歪ませた。
「だって…………、なんか、い…や、じゃない……か 」
そう、息も絶え絶えという声を、薬師と弥勒は、自分達の間から聞いた。
どうやって、二人の間に滑り込んだのか。
寸でに近いその瞬間で其処に潜れる人物は、たった一人しか居なかった。
そしてそれは、二人にとって意外な人物でもあった。
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