無実の罪で断罪される私を救ってくれたのは番だと言う異世界の神様でした

黄色いひよこ

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神獣玄武『ナナミ』

彼女を元に戻そう

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 「それでは、私も覚悟を決めました。薬師様、失礼します」


 そう言って、弥勒は懐刀の短刀をスラリと抜いた。

 対峙する薬師の心臓にあてがい貫く算段のようである。

 そんな彼の真摯な決意と算段の出鼻を挫くように待ったを掛けたのは、ナディアと薬師本人であった。


 「少々お待ち下さい」

 「あ、ちょっと待った」


  同時に声を掛けてしまう辺りは、流石夫婦と言えよう。

 で、言葉に思わずつんのめったのは弥勒で、思わず悪態が付いて出るのは致し方ない事だと言えた。


 「あのですねぇ、お二方」

 「あぁ、ごめんなさい」

 「言いたい事は解らいでもない」


 ナディアと薬師が、お互いを見やる。

 逸れを見て、弥勒が何かに何かに気付いたように訳知り顔で、頷いた。


 「あぁ、そう言う事ですね、最後のお別れをしたい、と、言う事ですよね、申し訳在りません。私とした事が気遣いもせず…… 」

 「あ「あ、それは違う」います」


 うん、上手くハモるよね。

 流石だ。


 「あっ、えっと…… 」


 どうしようかとナディアが薬師を見やると、彼はナディアに向けて頷いた。

 逸れを汲み取って、ナディアは弥勒を見、その後で、石像の少女を見詰め、言った。


 「あの少女の事です。彼女を復活せずに、薬師様を害しても良いものかと思いまして。ナナミ様をお助け出来る者は旦那様だけかと、わたくしは思い至ったのですが……。如何でしょうか? 」


 ナディアの意見に、薬師はうんうんと頷いた。

 同じ考えに至っていたのは、夫婦だからと言うだけでは無いだろう。

 弥勒は、弾かれるようにナナミを見やった。

 石像の前に陽炎のように揺らめくナナミが居る。

 弥勒は、己のやらかした事に嘆いた。

 彼女を忘れていた訳では無いのだ。

 決して。


 『良い、私の事は気にするな、主よ…… 』


 ナナミは、ふわりと笑んだ。

 主の事を良く解っている少女である。

 落ち込む弥勒の肩を叩き、彼の横を通過する薬師は、ナナミの前で立ち止まった。


 「君を元に戻すよ。幸い、君の中は石化していない。思ったより重傷では無いようだ。これも、この山のお陰かもな…… 」


 そう言って、薬師は笑った。

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