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神獣玄武『ナナミ』
茶番劇の始まり
しおりを挟む「どうして……、貴方様自らが率先して助けようとして下さるのですか!? 」
それは悲鳴にも近い訴えだった。
当たり前、と言えば逸れまでだが、弥勒が不思議に思うのも当然と言えば当然だった。
本来なら、神々の思惑には一切乗らない男だ。
その男の気紛れに、弥勒も振り回される訳にはいかないのだ。
この事は特に。
「逸れをおまえが言うか? 人の嫁さんをこの世界に縫い止めた張本人が。切っても切れない縁をお前は彼女に結び付けた。俺を引きずり込む算段で…… 」
薬師は目をスナギツネの目のように、弥勒を見て言葉を続けた。
「俺はまんまとそれに乗ってやったんだ。感謝はされども、咎められるいわれは無いぞ」
憮然とした薬師が弥勒を睨み付け、弥勒が反論しようとしてはたと気付いた。
「まさか貴方は、僕の計画を知っているのでは…… 」
「お前が、自分の命をこの地に捧げても、悲しむ者が出来るだけだぞ。俺を煽って怒らせて、神殺しをさせようとしても無駄だからな。逸れをするなら逆の方が得策だぞ。お前は死ねば終わりだが俺は違う。魂を別に移せるからなぁ…… 」
そう、薬師はその特性上スペアの身体があれば、魂を其方の身体に移す事が出来る。
勿論、今までは本体ありきの話だったが、試してみないのは、彼の中には無かった。
「新たに移す器が出来た。心配せずともその器も神の器だ。俺は俺自身を害することは出来ない。だからその役目をお前が担え。この世界を救う代わりに、お前は神殺しの罪を背負うんだ。それが交換条件だ」
薬師は、挑むような表情を貼り付けて弥勒を見据えた。
急展開を見せるこの事象に、元から腹を括っていた弥勒は、薬師を値目付、ふっと笑った。
「あなたには、本当に驚かされる。薬師、どうか宜しく頼む。如何なる事も甘んじて受けよう。私とてその覚悟くらいはある」
弥勒の言葉に、薬師が口角を上げた。
舞台は整った。
二人が立てた計画の茶番劇が、今此処で、この時に始まろうとしていた。
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