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番外編②
成長したいぬいと、させたくない如来様
しおりを挟む黄金色の錫杖が風を巻き込み、ヴゥンと唸りをあげた。
黒髪黒目の美丈夫が軽々と錫杖を振り上げれば、それは風を纏い、そして今一度振り抜けば、風は刃と成って彼が対峙している白いトラへと容赦なく向かって行く。
『極結界』
白虎がそう呟くように言って咆哮すると目の前にはギリギリで分厚いヴェールが降りて風の刃が立て続けに刺さった。
結界は、風の刃が刺さった所から水煙を立ち昇らせ、その煙を隠れ蓑にして美丈夫が錫杖を振りかぶった形で突っ切って来た。
息を呑む白虎。
その時、彼のおとがいに着いているウ○トラ○ンそっくりのカラータイマーが、ピコンピコンとけたたましい音を立てた。
『ボンッ』
と言う衝撃音と共に辺りは水蒸気に包まれる。
美丈夫は振りかぶった錫杖を、楽な体制に戻すとふっと苦笑を零した。
「きっかり三分ですか…… 」
「カップヌードルが出来るよね~、ってか出来た」
前者が我らが如来様、後者が不良菩薩である。
と、言わなくてもお分かりかと思うが。
『ふっくくくぅ、なんでぇ、何で三分なのっ! こんなに頑張ってるのにっ!! 』
「自分で頑張ってる~って言ってたらぁまだまだだよねぇ…… 」
と、カップラーメンの蓋を捲ってお箸で啜る月光が言った。
不良菩薩の方である。
「月光、こんな所でそんな物を食べないで下さい。それは此処ではオーパーツですよ」
そう言って窘めるのは彼の主人で有り、先程白虎と戦っていた如来様。皆様御存知の薬師様で御座います。
そして彼の傍らでわんわん泣いているのが、その仮の姿からしてオーパーツ気味な、某有名企業のマスコットキャラクターを彷彿とするライオンちゃんのぬいぐるみ。
コレが現在の白虎の姿である。
どうやって目から水が出るのか、未だに出鱈目なこのぬいは、成人した薬師の息子が産まれる前から、この緑の鬣に黄色い姿のぬいなのである。
驚きだ。
「ルナティ、お前が頑張っているか、努力を怠ってはいないか、逸れを見極めるのはお前では無く、第三者なのですよ。努力していると自分で自分を評価するのは、愚の骨頂と言うのです」
薬師が真面目にそう言うと、ルナティは、ポロポロとまん丸で大きな涙をポロポロと尚一層零し続けた。
まるで漫画である。
『僕は何時までこの姿なの? 』
ぐしぐしと鼻を鳴らしながら言うルナティが、何だか可哀想に見えた。
「残念だがしばらくは、このままだね。お前は、防御力はまずまずだけど、攻撃力は全然だからね昇進しなさい」
薬師はそう言うと握っていた錫杖を吾空間へとしまった。
と、言う訳でルナティは未だライオンちゃんのぬいのままである。
屋敷の庭から邸へと戻ろうとしていた薬師に、彼の真面目な脇侍が声を掛けた。
「薬師様、ルナティは本当は元に戻れるのではないかと思うのですが、どうなのです? 」
「おや、日光。気付いてしまいましたか? 」
「やっぱり……。カラータイマーが付いている事がそもそもおかしいんですよね。暗示デスヨネ。アレ」
最後にはカタカナ言葉になってしまった日光に、薬師が唇に指を立てて笑う。
内緒だと言いたいのだ。
「アレには力を蓄えて貰わねばならない。来るべき時に備えてね…… 」
そう薬師は、意味深な言葉を吐いて邸内に入って行った。
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