無実の罪で断罪される私を救ってくれたのは番だと言う異世界の神様でした

黄色いひよこ

文字の大きさ
188 / 220
第二部:後宮

変態と接近遭遇

しおりを挟む

「う~ん、意外と私、逞しいのかも知れませんわね…… 」


ナディアがそう呟いた途端、鉄格子がパキンと折れた。

勿論、ナディアが逞しい訳では無い。

糸のこが優秀なのである。

この糸のこは、異世界日本の業物逸品なのである。

人間国宝と呼ばれる著名な業師の一点物。

糸のこなのにン十万は下らない。

と言う事を、ナディアに知る由は無い。

ナディアが鼻歌混じりでいそいそと鉄格子を元に戻して居ると、ノックをする音が聞こえ、彼女は慌てて糸のこを近くのチェストの引き出しに隠した。

そしてベッドに潜り込むとノックに返事を返した。

徐に扉が開き、現れたのはお仕着せを纏った侍女がひとり、カラカラとワゴンを押して入って来た。


「お目覚めになられたのですね。よう御座いました。お腹がおすきになられませんか? スープをお持ち致しましょうね、あぁ、国守様にもお知らせしませんと…… 」


と、侍女はひとりでしゃべって部屋を退出して行く。

勿論、ワゴンをガラガラと押して。

そのワゴン、何の為に持ってきた? そう突っ込みたかったナディアではあったが、当の相手はもう其処には居ない。

立派に言い損ねてしまっていた。

そんな折、今度はノックも無しに勢い良く観音開きの扉が開いた。

些か乱暴なその開き方に、ナディアは眉を潜めた。

当たり前である。

彼女はこれでも、皇太子妃教育を見事な成績で終了させた身。

特に、婚約破棄後の六年間を忘れている彼女に取っては、皇太子妃教育はつい最近終わったばかりだとも言えた。


「漸く目が覚めたんだね!マイスイートハニー!! 僕はとお~っても心配したんだよぉ~~~! 」


馬鹿っぽい話し方だった。

いゃ、馬鹿だ、こいつ、確実に馬鹿だ。

ナディアはそんな風に目を眇めて訴えた。

目は口程に物を言う、そんなことわざがふとナディアの頭に過ったが、それが凪の知識だと彼女は気付かなかった。


「貴方様はどちら様で御座いましょうか? そして、此処は何処なのでしょうか? 」


ナディアは、ベッドの背もたれに身体を起こすと、そう闖入者に問い掛けた。

眉一つ動かさない彼女に、闖入者は不可思議だと言わんばかりの顔を向けると、


「そちは、僕を見て何とも思わないのか? 頬を染めて、何と素敵なお方と言って良いのだぞ? 」


などと、変な事を宣った。

名を名乗る訳でも無く。

しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...