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第二部:後宮
変態と接近遭遇
しおりを挟む「う~ん、意外と私、逞しいのかも知れませんわね…… 」
ナディアがそう呟いた途端、鉄格子がパキンと折れた。
勿論、ナディアが逞しい訳では無い。
糸のこが優秀なのである。
この糸のこは、異世界日本の業物逸品なのである。
人間国宝と呼ばれる著名な業師の一点物。
糸のこなのにン十万は下らない。
と言う事を、ナディアに知る由は無い。
ナディアが鼻歌混じりでいそいそと鉄格子を元に戻して居ると、ノックをする音が聞こえ、彼女は慌てて糸のこを近くのチェストの引き出しに隠した。
そしてベッドに潜り込むとノックに返事を返した。
徐に扉が開き、現れたのはお仕着せを纏った侍女がひとり、カラカラとワゴンを押して入って来た。
「お目覚めになられたのですね。よう御座いました。お腹がおすきになられませんか? スープをお持ち致しましょうね、あぁ、国守様にもお知らせしませんと…… 」
と、侍女はひとりでしゃべって部屋を退出して行く。
勿論、ワゴンをガラガラと押して。
そのワゴン、何の為に持ってきた? そう突っ込みたかったナディアではあったが、当の相手はもう其処には居ない。
立派に言い損ねてしまっていた。
そんな折、今度はノックも無しに勢い良く観音開きの扉が開いた。
些か乱暴なその開き方に、ナディアは眉を潜めた。
当たり前である。
彼女はこれでも、皇太子妃教育を見事な成績で終了させた身。
特に、婚約破棄後の六年間を忘れている彼女に取っては、皇太子妃教育はつい最近終わったばかりだとも言えた。
「漸く目が覚めたんだね!マイスイートハニー!! 僕はとお~っても心配したんだよぉ~~~! 」
馬鹿っぽい話し方だった。
いゃ、馬鹿だ、こいつ、確実に馬鹿だ。
ナディアはそんな風に目を眇めて訴えた。
目は口程に物を言う、そんなことわざがふとナディアの頭に過ったが、それが凪の知識だと彼女は気付かなかった。
「貴方様はどちら様で御座いましょうか? そして、此処は何処なのでしょうか? 」
ナディアは、ベッドの背もたれに身体を起こすと、そう闖入者に問い掛けた。
眉一つ動かさない彼女に、闖入者は不可思議だと言わんばかりの顔を向けると、
「そちは、僕を見て何とも思わないのか? 頬を染めて、何と素敵なお方と言って良いのだぞ? 」
などと、変な事を宣った。
名を名乗る訳でも無く。
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