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第二部:瑠璃光夫人奪還作戦前夜
本題に進みましょう
しおりを挟む薬師は砂ギツネの顔で安底羅を見据えると、
「道化者はほっておいて、今度こそ話を詰めようか」
そう言って、一同を見渡した。
「薬師様ってば酷っ」と、悪態付く安底羅に「さ、続き、続き」と其処に居る全員を因達羅は手招きして呼び寄せた。
「皆も酷い~っ」なんて言ってはいるが、安底羅も因達羅の隣に陣取ると、スッと表情を正して真顔に戻った。
呆れる程の変わり身の速さである。
「さて、良いですか? 」
そう切り出した因達羅は、全体図からペラッと一枚捲って地下一階の見取り図を示して見せた。
そして、幾つかに区切られた小さな部屋を指差して、
「牛頭が言うには、此処は地下牢で、此処に護衛の二人が捕らわれて居ます。他の部屋にも冤罪で捕らえられた者達が居ます。中には前国守に仕えていた宰相も捕らわれて居ました」
「大方、阿呆が、苦言を呈されて処分でもしたんだろうな」
と、因達羅の言葉に薬師が身も蓋も無い言葉を放った。
そうやって、西河省の国守は己に意見する者を、無実の罪で断罪し続けたのだろう。
「護衛二人を解放するついでに、彼等も解放してしまいましょう。どさくさ紛れに解放すれば、場を良い具合に掻き回してくれるでしょうしね」
と、言うのは日光である。
「それをする前に、第一夫人に話をつける必要があるな」
と薬師が言えば、
「その辺は抜かり無くやりますよ。何せ薬師様の番が、シルベスタ侯爵の長女、ナディア=シルベスタだと言うのは、公然の事実なのですからね。それを知らずに攫って妻にするなどと、普通馬鹿でもしませんよ。誰も薬師様の怒りを買いたくは無いと思って居ますからね」
日光が言葉を返す。
「でも、その馬鹿を通り越した奴が居るんですよね? 」
と、此処で初めて珊底羅が言葉を発した。
「まぁ、そうですね。馬鹿を通り越した愚か者が、ね」
と、苦い表情を見せて薬師が薄く笑った。
「私の怒りを買えば、省に禍が降り懸かるかも知れないと言う考えにすら至らない、己の欲だけで生き、周りにその尻拭いを当然のようにさせる愚者だ。だからこそ…… 」
薬師は見取り図から目線を上げると、一同をサッとねめつけて言った。
「もう、頭をすげ替えるしか無かろうと判断するしか無いでしょうね。良く耐えたと思いますよ」
それは薬師の慈悲であった。
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