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第2部:御披露目の前
ぬいが見たモノ
しおりを挟む置いてけぼりにされた獣人二人の叫びも虚しく去りゆく白虎に、思わず声を掛けた俊傑の、その声音が兎に角情け無い。
「は? あ? ちょ、ちょっと、白虎様っ!? こんなの渡されたって…… 」
片手を鉄柵から突き出し嘆く俊傑に、無常にも掛かる、落ち着き払った彼の護衛騎士リーリアの、抑揚の無い冷たい声音が、彼のノミの心臓に突き刺さる。
「行って仕舞われましたね…、ルナティ様。俊傑様、この後如何なさるつもりで? 」
隣の牢屋からの声音に俊傑は、ぐっと拳を握り締め、天井を見上げ、
「勿論脱出するに決まってる! この谷はぐるりを忘れ草に覆われている。御屋形様が来られるなら逃走ルートを確保しなきゃ、何言われるかたまったもんじゃない! リーリア、奴等が使う“道”とは違う場所に逃走経路を確保するぞっ! 」
と、力説したが、どうも格好の付かないのは彼の特性だったのか…… 。
非常に残念極まりなかった。
さて、獣人二人を放置して、ルンルンタッタと、軽快に歩みを進めていたルナティは、庭を挟んだ反対側の通路を亡者に引きずられて行く国守を見とめた。
「離せ~」と、大音声で喚く国守祥啓の姿が、米粒の大きさで見える位には広い中庭
で、ルナティが気になったのは祥啓では無く、彼を引き摺る亡者達であった。
あれは祥啓に縁のある者達ばかりだ。
ルナティにはそれが見ただけで解った。
何故かと問われても答えようがないが、解るのだから仕方がない。
ただ、逸れだけだ。
「貴様ら~、この僕を誰だと心得る! 今すぐ離さんか、不敬だぞ! 」
その声に、ルナティは、こてんと首を傾ける。
身体を捻って叫ぶ祥啓から黒い靄が立ち登る。
それは『瘴気』だ。
聖獣であるルナティには逸れが手に取るように解った。
祥啓から立ち登るモノと、彼を運ぶモノは似て非なるモノだ。
祥啓を連れて行く者は、亡霊だが『悪霊』では無い。
それに対して、祥啓から溢れ出るモノは『悪いモノ』だ。
早急に駆逐しなくては成らない代物なのであるが、それをしなきゃとルナティが、亡者達に声を掛けようかと思った瞬間、彼等は祥啓と共に、かき消えてしまった後であった。
「あっ……、と、行っちゃった……。どうしようか? 大丈夫かなぁ? あの国守の状態、かなりマズいよねぇ……。どうしようかなぁ、う~ん…………、うん、きっと大丈夫、問題無い……だよね? 」
と、独りごまかすように呟いたルナティだった(問題大ありだと思うぞ… )。
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