悪女で悪魔

1

ティアミス魔法学園。
16歳～18歳の魔法が使える実力者またはお金持ちが入学を許される学園。

魔法学校は数多あるがここ〝ティアミス学園〟を卒業すると、国家の魔法騎士団、魔法研究者など皆が憧れる職に就ける確率が増える。また、同じ年の男女が同じ空間で過ごすことにより伴侶を見つけることができる可能性もある。そのためティアミス学園入学は国民たちの夢でもあった。

イルヴェリア王国。ティアミス学園のあるこの国イルヴェリアは広大な自然と安定した気候に恵まれ、国民は皆魔力を持って生まれた。

数百年前、イルヴェリアには爵位と呼ばれる制度があった。しかし、「爵位は争いのもと」と国民の意見が多く寄せられ爵位制度は撤廃となった。
今では実力があり国民たちからの信頼も厚く国に尽力したものこそ頂点に立つべきとされた。

現在頂点に立つのは〝魔法使い〟と呼ばれ国民からの信頼も大きく実力もある人。そしてその下に着くものこそ騎士団団長や研究所所長など各機関の長。魔法使いの信頼を得た長たちが選ぶものが騎士、研究者になれる。
給料の良さももちろん、信頼や地位など騎士や研究者は国民の憧れであった。

魔力を持たない人はいないこの国では魔道具と呼ばれるものが数多く流通している。
魔力はあるが魔法は使えないそんな国民のために生み出されたのが魔道具。軽く魔力を注ぐだけで水が出る、炎が出る、風が出るなど生活に必要な魔法が使えるというもの。
魔道具は魔法研究者が製作しており、今も新しくより使いやすい魔道具を研究している。

魔法騎士団は訪れるかもしれない国の危険のため、また国外の〝魔物〟と呼ばれる澱みに呑まれた動物との戦闘、国の保安のために日々活動している。

魔法研究所は爵位制度撤廃時にできた新しい機関だが、魔法騎士団はそれよりも前から存在していた。

大昔〝魔族〟と呼ばれるものがいた。人間の生命力または魂を吸い取り魔力に変え魔を操る異形のものたち。人々はそんな魔族に怯え暮らしていた。次々と攫われ襲われ死にゆく人間、それにも関わらず自分を守るため爵位を持った魔力持ちはみな国民を見捨てた。
国民の怒りは爆発。国内部での争いに発展した。そんななか現れたのは1人の青年。平民であったが膨大な魔力と強力な魔法を使えた青年は実力者を集め魔族の王、〝魔王〟討伐の為立ち上がった。

何ヶ月、何年もの月日を有し5人の青年と1人の少女は魔王の討伐を成し遂げた。
それから魔族は消滅し、イルヴェリアは平和になったとされている。

現在、その話は『勇者と聖女と仲間たち』という童話で受け継がれている。
そんな勇者が立ち上げたとされる魔法騎士団。子どもたちは童話内の勇者に憧れ騎士団員を目指すものも多い。

魔族はおらず、爵位も無い。国民は皆平等で守られるものとされ他国との争いもなく平和が続いている。
自然災害も起こるが、各区域の騎士団や研究者たちが対処・救助を行う。復旧作業も魔法を使えるものたちが行う為安全かつ迅速に終わり、住む場所がない国民などいなかった。

イルヴェリア国に住む子は皆学ぶ義務があるとされ、16歳になると全ての子を魔法学校に通わせた。
そこでは魔法は使えなくとも字の読み書きや、生活していく上で必要となってくる計算問題などを学ばせた。そのためイルヴェリア国の識字率は100%であった。
さらに、安定した気候により作物や食肉用の家畜は育ちやすい。海に面した区域もあるため海の幸も豊富に獲れた。
魔法が使える物が多いイルヴェリア国。魔法が使えなくとも識字率は高く計算能力もある。農業や漁業など仕事も豊富。
このことから仕事にありつけず困窮する国民がいなくなった。


イルヴェリアに住む国民は口を揃えて言った。
「イルヴェリアは平和で安全。イルヴェリアに生まれて良かった」

そして魔法使いは言う。
「国民皆が笑顔に暮らせる国に、」