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しおりを挟む以前、私は人間だった。
優秀な部類に入る人間で魔力量も多く異性を誘う見た目のせいで悪女と呼ばれていたが馬鹿にされることはなかった。
しかし、2年に進級した時突然変化が起きた。
入学式、新1学年が玄関前に集まっていた。入学検定の時の成績でクラスが分けられるため自分がどの程度に優秀かわかるクラス表はみんな我先にと見たがる。
私は魔法の扱いが上手かったことから万が一クラス分けに不満がある生徒が暴れ出した時のため1学年を見張っていた。
その時だ。体に寒気が走り今まで感じたことのない嫌悪感が体を駆け巡った。目眩に襲われ、胃から何かが迫り上がってくる感覚があり咄嗟に口を押さえた。
落ち着こうと息を吸い込んだ瞬間、嗅いだことのない甘い匂いがし何かが溢れてくる感覚と下腹部の疼きに襲われた。
じんわりと下着が濡れる感覚と周囲の男たちから匂ってくる香りに頭がクラクラとした。
感じたことのない感覚に恐怖を覚え、周囲を見渡した。すると目の前を1人の少女が通り過ぎた。
快晴の空を閉じ込めたような瞳は大きく丸いビー玉のようにキラキラ光っていた。小さな顔と小ぶりだが形の綺麗な鼻、小さな唇は桜色に染まっていた。ミルクティー色の髪を高い位置で2つ結んだ少女はクラス表が見えないのだろうか、ぴょんぴょんと飛びながら困っていた。その姿はきっと男たちからすると小動物のようで可愛らしいのだろう。
しかし、私はその初めて見た少女に激しいまでの嫌悪を感じた。
離れなければ、そう頭は警告してるにも関わらず震える足は動くことができなかった。
何かは分からないが男たちから香ってくる匂いの元を体が求めていることを感じ、さらに下腹部が疼いた。
必死に湧き上がる謎の欲求を抑えるため目を閉じ耐えた。
「大丈夫ですか?顔色、良くないですよ?」
鈴を転がすような声が聴こえてきた。強く握りしめた右手に添えられる他人の手の感触がした。
〝大丈夫〟そう返答しようと目を開けた。目の前に立ち私を心配そうに見上げるのは先ほどの少女。少女は私の手を握っている。
先程感じた嫌悪感がぶり返したと思った途端、少女に触れられている右手が火傷をしたかのように熱くなり痛み始めた。
何が起きているのか分からず気がつくと私は少女を手を振り解いてしまった。
少女はそのままバランスを崩し派手に転んだ。大きな音が響き、少女が怯えたように私を見上げていた。
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