悪女で悪魔

１１

無事魔力を補給し、首席の上から退こうとした。その時だ。

「っおい、待て！ユナイデル！っはぁ、」

顔を赤く染めた首席が私を睨みつけている。未だ先程の快感が抜けていないのだろう。ベッドから起き上がることができていない。

サキュバスは1度の口淫でかなりの量の精液を搾り取る。加減をしないと死に至ることもあると言う。その分快感も大きいが。

「⋯⋯首席、これは夢。いい？忘れなさい。されたことも、感じたことも、見たことも全て」
「ユ、ナイデル。お前っ」

起きあがろうとしていた首席がベッドに倒れる。ゆっくり口元に耳を寄せると寝息が聞こえてきた。

淫魔はとある特性を持つ。
〝自分が快感を与えたものに対し僅かながらの催眠魔法が使える〟のだ。
催眠と言っても「不思議な夢だった」くらいの軽いものだが、精液摂取後にこの催眠魔法ができるのは大切だ。

目を見つめイメージする。魔法発動に大切なのは〝言葉〟と〝イメージ〟。どのような魔法を、どんな風に、発動したいのか考えることで発動ができる。

首席が今のことを夢と思うように眠る、そう考えながら目を見つめ魔法を発動する。そして首席が眠った。明日になれば変な夢を見た、内容は朧げくらいにしか覚えていないはずだ。
この魔法を使ったのは今日が初めて。万が一にでも起きてしまってはいけないと考えそそくさと首席の部屋から逃げ出した。

喉の渇きは消え失せ、あんなに香っていた甘い匂いも先程より薄くなっていた。


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カーテンの隙間から漏れる日差しに目を覚ます。ほんの少しの怠さを持った体に違和感を覚えながらベッドから降りた。

顔を洗うため鏡の前にある魔道具に触れる。魔力がない頃はちょろちょろしか出なかった水が今では以前のように普通に出る。

「魔力⋯⋯戻ったのね」

朝食を作るための火が、暗い部屋の電気が、洗濯物を乾かすための風が出る。生活に困らない程度の魔法が使える。
昨日までは何をするにも母を呼ばなければいけなかったが今は全て自分でできる。
精液の摂取に抵抗はあるものの淫魔の血の影響かすんなり行えたこともあり毎日少しずつの摂取を心に決めた。

──やはり、1度だけだと2、3日過ごせる分くらいの魔力しか戻らないか。

授業で使えば全て使い切るだろう。しかしまだ慣れない摂取。無意識にでも大量の精液を摂取してしまえば相手が死んでしまう。しかしもう少し魔力は欲しい。

「2、3人なら⋯⋯いけるかしら」

歯を磨きながら鏡を覗くとどろりと血液のような瞳の女がいる。
散々悪女と言われ続けたこの容姿。本当に悪だったなんてどんな冗談だろうか。

「余計、婚約者が見つからないわね」

嘲笑混じりにそう吐き捨てた。鏡の中の自分に対し。