悪女で悪魔

36

「んっふぁっぁっんんっ」

男の細長い舌が口腔内へ入り込み歯列をなぞる。私が舌を差し出せば柔く噛みつき吸い上げた。そのまま角度を変えながら舌を絡ませ合う。

「ふふ、デロデロ」
「はぁっはぁっ」

満足そうに笑う男はゆっくりと私の頭を撫でた。そのまま後頭部へ手を回し再度唇が合わさる。蛇のような目の男。私の口腔内で動き回る舌も蛇のようで執拗に絡み合い口の端から唾液が漏れた。
団長の息子は噛み付くような口付けだったのに対しこの男は隙間を埋めるような口付けをする。まるで呼吸を交換するかのようなそんな口付けだ。
男が私の口腔内へ己の唾液を送り込む。何も言われていないのにそれを必死に飲み込めばいい子、とでも言うように頭を撫でられる。その心地よさに力が抜ければゆっくりとベッドへ倒される。

「すごいねフェロモンって。グレイもそれなりにできる奴だけどあそこまで発情する理由も分かるなぁ」

私の上に覆い被さる男は私の顔からゆっくりと視線を下げていく。見られている事実に興奮してしまい触られてもいないのにぷくりと胸の尖りが主張を始めてしまう。

「硬そうだね。ココ」

触るか触らないかの距離で指を止められる。触って欲しい、その考えが頭を支配し始めた。

「どう、されたい？」
「さ、わって、ほしいっ」

すんなり口から出る欲求に頭の片隅では自分を責める声がした。しかしフェロモンに当てられた思考は快感をひたすらに追い求めるばかりではしたない言葉もすらすら口からこぼれ落ちた。
そんな私へ一瞬冷たい目をした男は微笑を浮かべ、おもむろにシャツとブラジャーをたくし上げた。外気が素肌に触れ混乱する。そのまま顔が下がってきたかと思えば私の胸の先をパクりと咥えた。

「ひぁっぅや、やめっっ」

コロコロと飴を舐めるように転がしたかと思えば吸い付く。温かく柔らかい、それでいて滑ぬめりのある感触に声が大きくなる。
胸の先を刺激すると同時に右手が下がりパンツの中へと侵入してくる。すでにぐっしょりと濡れているそこは男の細い指を簡単に飲み込んだ。

初めての快感が一気に2箇所で起こり声が止まらない。蜜壺の浅い部分を出入りする1本の指。ちゅこちゅこといやらしい音が鳴り響く。溢れ出る愛液が指の出入りを助け少しづつ深くなっていく。ぴりぴりとした痛みと快感が同時に襲ってくる。

「あぅっんんっだめぇっ」
「だめじゃないよね？イイよね？」

ナカに入り込み止まる指。そのまま前後に小さく動き始める。蠢く指は徐々にその動きを大きくしていき抽送の動きが加われば良いようのない感覚が迫り上がってきた。

「なんか、きちゃうっ」
「初々しい反応の真似？イくって言われるの嫌いじゃないよ？僕」
「なにっっこれっ」
「そういうプレイが好きなの？面倒くさいなぁ。ほらイクだよ？イーク」
「イっくっっ」

身体が仰け反り目の前が白く染まる。絶頂を迎えた私は大きく身体を震わせた。

「な、やめっ止まってっあっぁっ」
「なんか、狭いなぁ。淫魔ってみんなこうなるのかな？まだ1本しか入ってないからね？」
「やっぅあっっんんっ」
「すご、手がびちゃびちゃ。ねぇ、音聞こえてる？」

くちゃくちゃと指の動きに合わせて響く音。足先を丸め快感を逃がそうと踠く。止まない嬌声。続けざまに絶頂を迎えてしまう。

「ふぅーんなるほどね。淫魔だからか元からなのか感じやすいね。面白い」

男はまるで研究するかのように私の反応を１つ１つ観察し楽しんでいるように見える。ナカから手を抜かれ顔が近付いた。啄むような口付けから口腔内へ舌が入り込み深くなった。相手の動きを必死になぞり舌を絡める。縋りつくように男の首へ手を回し身体を密着させた。
口が離れ肩で息を繰り返す。私を求める視線と見つめ合いそっと耳元へ唇を寄せた。

「眠れ」

なんとか冷静を取り戻した私は口付けの快感を得た男へ催眠をかける。達していない男に対し催眠がかかりにくい可能性があったためいつも以上に魔力を込めた言霊を投げかけた。

「な、に⋯⋯」

最初は催眠に抗っていた男も深い眠りへとつき身体が弛緩した。追加で催眠をかけ確実に眠ったことを確認し保健室をあとにした。

ナカへの刺激により私の身体はより快感を求め疼いた。

保健室では眠りについたはずの男が早々に起き上がり怪しげに笑っていたことなど、作り変わる身体に困惑している私が気がつくはずもなかった。