悪女で悪魔

黒澤尚輝

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-閑話-

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最近気になる奴ができた。1つ年下の女。かなり優秀で学力も魔力もさることながら魔法の応用までもできる女。家が裕福なことから何もせずともいい夫を捕まえ不自由なく暮らせるはずなのにも関わらず人一倍努力をし実力を見せつける。そんな女が突然落ちぶれた。なんの冗談かと思ったが実際に目の当たりにしたら驚愕した。魔力がほとんどないからだった。ここまでなくなることはありえない。今までが魔力増強剤の使用でもしていたのか。そんな女に俺は残念に思った。
さらには入学したばっかりの少女にまで嫌がらせをする始末。自分が落ちぶれたからと他者に当たるなど下劣にも程がある。俺はあの女に幻滅した。

少女は行く先々に現れやたらと絡んできた。しかし友人が特別な思いを抱いていると知り少し鬱陶しいが関係を続けていた。そんなある日。あの女はいつものようにニーナを罵りあまつさえ突き飛ばした。俺が受け止めていなければ怪我をしていた可能性がある。
他者に対し感情を動かすことなど全くと言っていいほどない俺がここまであの女に苛立つのも理由は分からないがとにかく気に入らなかった。
ニーナを送りあの女とあの女を追った1年坊主を追っかけると空き教室でぐっすり寝ている男に遭遇した。何があったか問うても曖昧に濁す男に不信感を抱く。その教室には花のような甘味のような不思議な甘い香りがした。それを嗅ぐと思考が鈍る、そんな匂い。ますます女への不信感を募らせた。

そんなある日昼を食べようと歩いていれば空き教室に入っていく女を見かけた。ニーナを特別大切に思っているというより友人の思い人だから大切にしたい。そんな少女に怪我させようとした女に一言言おうと教室へ入り込んだ。
窓の外を眺める女に一声かける。吃驚した顔をした女は俺を見るとすぐ顰めっ面になる。いつもは飄々としている女が俺への感情で顔を歪めるのに少しだけ優越感を得た。渋々といったように返答をする女。不服が隠しきれていない。

「そういえばお前魔力補給ができるようになったんだな」
「はい」
「どうやって?」
「なぜ言わないと?」
「はっ生意気だなぁ」

少しだけ鎌をかける。

──魔力増強剤を使用しすぎて身体に合わなくなったから魔力枯渇が起き新たな何かを見つけたんだろ?

さらに追い詰めるため1年坊主の話を持ちかける。あの時香ったのは媚薬の類だと踏んでいる。そして靡かない男を虜にしようとした。噂でよく聞いていた手法だがあの場面を見れば信じられる。

──さぁ、吐けよ。真実を。

言い逃れできないだろう言葉を伝えれば女はこちらを強く睨みつけた。赤黒い瞳がさらに黒く濁りより血液に近づいたように感じた。

「⋯⋯先輩はかなり優秀と聞きました」
「はぁ?」
「優秀な人材には、どれ程の効力があるのでしょうか」
「何言ってんだ?お前」

頓珍漢なことを言い始めたかと思えば突然身体が熱くなってくる。下半身が重くなり嫌な予感がした。

──媚薬か?俺に?

女を壁際に追いやり逃げ場をなくす。強く睨みつける瞳に強い苛立ちが掻き立てれる。そんな怒りに比例するようにちんこが勃ちあがり始めた。経験なんか腐るほどある。何もせずともこんな状態になることなんか一度もない。ありえない状況に混乱する。
色々考えているうちにさらに興奮していく身体。足に力が入らなくなり肩を少し押されるだけで後ろにある机に乗り上げてしまう。挙句後ろ手に拘束される始末。
以前友人に借りた本に載っていた内容を唐突に思い出した。太古の昔の話だ。今では御伽話と呼ばれる大昔、魔物と呼ばれる種族がいた。その中の一種、淫魔は精力を糧に魔力を摂取し人々を快楽と絶望に陥れたと言う。淫魔の使う魔法はどんな人間にも効くフェロモン媚薬と催眠。さらに美しい見た目。女は子種を植え付けられ男は子種を搾り取られる。そして繁殖していく。そんな話を思い出す。
あの香り、見た目、1年坊主が眠っていたわけ。1つ1つが繋がり線となる。

「お前、まさか、」
「ふふ。そう。知ってるかしらね?あなたは」
「魔⋯⋯?」
「さすが。優秀な人は違うわね」

理解した時にはすでに遅い。女の、エメルネスの細く白い手が俺の太ももを這う。小さな爪でカリカリと掻かれてしまえばくすぐったさと猫が戯れるような感覚にさらに下半身を重くした。
目の前の女への苛立ちが溢れ出る。こんなことされていることにも手慣れていることにも。本当に噂は本当で男を取っ替え引っ替えしていた事実への落胆が襲いかかる。

「嫌いな女にこんなことされて、屈辱でしょう」
「⋯⋯」
「睨んでもしょうがないわよ」

本当に屈辱だ。俺が他の大勢の一部になるなんて。
ボタンを外していくエメルネス。物欲しそうに俺の筋肉を眺めやがてゆっくり手を伸ばし、腹筋の溝を指でなぞった。
あまりに俺がそっけなくしたからなのか、エメルネスが首元へと顔を埋め強く吸い付いた。何個もつける姿にエメルネスの独占欲が垣間見え胸が軋む。

首元へ必死に縋り喰むエメルネスに胸がざわつく。何かに気がつきそうで頭を振る。そんな俺を見たエマルネスがムッとし、近づいてきた。唇に柔らかい感触が当たり甘い香りが鼻を包み込む。エメルネスの閉じた瞳を囲む長いまつ毛がしっかりと見える。白くまろい肌がほんのりと色付き俺にキスをしていた。
驚き固まればぺろりと俺の唇を舐め口を開けと誘導する。逆らえず小さく口を開けばぬるりと口の中に入り込む甘く小さな柔らかい舌。やけに辿々しく演技なのか本当なのか分からないがその動きにイラつきと何かが混ざった感情が生まれ下半身がさらに重くなる。思わず舌を絡ませてしまうが俺は悪くない。嬉しそうに舌を合わせるエメルネス。言い表せない苛立ちが湧き始める。

──今までどんだけの男にこの顔をしたんだ。こいつは。

もう自分が何を考えているのかよく分からない。回らない思考で深いキスを繰り返しエメルネスの口を貪る。甘い唾液に太ももに触れる手に香る匂いに。五感全てで感じるエメルネスに我慢の限界に達した俺は拘束魔法を解除しエメルネスを壁に押し付け仕返しとばかりに食らいつくかのようなキスをした。
甘く鳴くエメルネス。片手を胸元へと下ろし先を触らず刺激する。胸を突き出し強請るエメルネスに胸がざわつく。

「ふっ。淫乱ってのはまじだったんだな」

強い口調で責めつつ先を弾く。大きく背中をしならせ身体をびくつかせる。硬く尖った先端を摘まれ押しつぶす。溺れるように呼吸する唇を塞げば息が苦しいのか縋りついてきた。

「この胸、一体どれだけの男が触ったんだろうな」
「ひぁっんっっ」
「気持ちいいか?イかせねぇけどな?」

簡単にイかせるわけがない。じわじわ責め自ら求めるまでは。細い腰を掴みキスを繰り返す。僅かにエメルネスの足が動く。きっと足の間への刺激が欲しいのだろう。太腿の間に入れた膝を少し上げ刺激してやればくぐもった喘ぎ声が口の端から溢れた。
ゆっくりと腰の手を下げスカートへと達する。その中へと手を伸ばせばぐっしょりと濡れたパンツが手に当たる。どこに触れてもビクつき喘ぐエメルネス。すりすりと擦りながら耳を舐める。大きく声を出すエメルネスは顔を反らせ惚けた顔をしている。
間にある突起をとんとんと優しく叩けばさらに嬌声が大きくなる。俺の服に捕まりぴくぴく身体を揺らす。腰が引け逃げようとするのを掴み咎める。

──何人とヤって、この声を聞かせて受け入れたんだ。こいつは。

苛立ちに比例して愛おしさが募る。俺の手でイけよ。そう考えながら手の動きを早めれば早々に大きく痙攣する。早い息を整えようと深呼吸し動く肩に噛みつきたい欲を堪え手をパンツの中へと差し込みその部分に触れた──。

────────

「⋯⋯レイ⋯⋯グレイ」
「ぅわっ」
「何こんなとこで寝てんの」
「っっー頭痛っ」
「何やってんの」

声をかけられ目を覚ませば目の前に友人、セレブラ・ラシアードがいた。不機嫌そうに顔を顰め見下している。俺は空き教室で寝っ転がっていた。
あの女が何かしたんだろう。覚えているのは1年の話を持ちかけたこと。その後のことは途切れ途切れであるのはあの女に乗られ俺が壁へ追い込みキスやら何やらありえない記憶。

──どんな夢見たんだ俺は。またあの女変な魔道具でも使って俺に淫夢見せたのか?

「俺、何して⋯⋯」
「さぁ。誰かといたの?サボってたんじゃない?」
「エメルネスと、」
「⋯⋯グレイ名前で呼んでんの?」
「は?まさか。んなわけねぇだろ」
「ふーん」
「ほんと、あの女ビッチだなぁ⋯⋯」

──⋯⋯?俺この言葉どっかで言った気が、

「グレイとりあえず今日は帰れば」
「あぁそうだな。床で寝たせいでっ身体中痛ぇし」

セレブラの表情の変化に気がつくこともなく、あの女の行き先を気にすることもなく自宅へ帰った。
家に着き鏡で自分を見た後複数あるキスマークに驚き、あの女への憎悪を募らせるなんて知らずに。
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