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05 怪異に遭おう5
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呼びかけるのと重なるように、ドン、と大きな音がした。
「え……うわっ!?」
更に周囲を囲むように三回、それぞれ違う場所。すぐ近くで何かが墜落したような重い音と振動。体勢が崩れたが、倒れるほどではなかった。
「こ、今度は何!? 地震!?」
「……あ?」
真岡が空を見上げる。つられて瀧も見上げた。
暗かった空が、一変して青空に戻っている。
(……鳥肌も、消えた?)
不吉な空気が霧散したように感じた。
「なんなのほんとに……」
「あっシマ、大丈夫か?!」
「っげほ、げほっ」
涙と鼻水を垂らしながらも正気と窒息が戻ったらしい嶋田に、西山が嶋田のリュックを漁ってティッシュを手渡す。
「……なんか、気配も消えましたね?」
「ホントだ。さっきの……なんかすごい音したけど、あれのお陰?」
「と、思うんですけどね……」
むせ込む嶋田の傍らで介抱する西山を他所に、真岡と瀧があたりを見回しながら話し込む。そこへ、黒い狐が姿を現した。
「あっ、シロ。おかえり。……あれっ? 誰かを連れてきたわけじゃないのか?」
藪から出てきたシロが瀧の足許にまとわりつく。シロに怪異を祓うような能力はなかったと思うが、と思いつつ、求められるまま頭を撫でてやる。
そうしてシロは瀧の足許を何周かしたところで、二十メートル先の藪のほうへ向かって一声鳴いた。
「…………わ……」
そこから出てきた人物は、遠目のぱっと見でも言葉を失わせるには充分な、長身長髪の美形だ。瀧も一八〇センチはあるのに、彼はそれよりずっと高く見える。
シロが一度離れ、その人物を見上げてまた一声鳴き、座って頭を下げてから戻ってきた。
「何? どういうこと?」
真岡が瀧へ囁く。瀧も声をひそめたのは、なんとなくそう話さなければいけないような空気を感じたせいだ。
「さあ……オレもこんなの初めてでよくわかんないけど……ヒトじゃないのかも」
「えっ……」
真岡の表情が引きつる。ヒトではないとなれば、獣人か神族に決まっていた。だから真岡の驚きと動揺はよくわかる。だが、ヒトがこんな美貌を持ち合わせていることは考えられないから、やはり獣人――どちらかといえば神族のような気がする。纏う空気も静謐で、大声で乱すのは憚られた。
「なんで俺らを助けてくれたわけ……」
「いやオレに訊かれても」
獣人や神族は基本的に人間を下に見ているから、人間が怪我をしようと死のうと関心を持たない。だから困っている人間を助けるなんてことはまったくありえないのだが。
(気まぐれ……としか言いようがないよなあ)
五メートルほどの場所までやってきたその人は、間近に見ればいっそうその美貌がよくわかった。
肌の色は白くて皮膚の下から光り輝いているようにも見える。右耳の下へ流した髪は緩い三つ編みにされていて、膝あたりまである。ひと房ずつ前髪が額を分けていてずいぶんと嫋やかな印象を受けるのに、長身であることと、なよなよとしたところのない、どちらかといえば地から天までを貫くような真っ直ぐとした靱さのある双眸を持った青年だ。
瀧などもよく男女問わず口説かれることはあるが、この男の美しさはきっと、誰も近寄らせない、近付くことを躊躇わせる神聖さともいえる孤高の美しさだろう。
年齢はよくわからないが、もしかしたら同じくらいか、少し上か。ただしそれも外見だけのことだ。
「え……うわっ!?」
更に周囲を囲むように三回、それぞれ違う場所。すぐ近くで何かが墜落したような重い音と振動。体勢が崩れたが、倒れるほどではなかった。
「こ、今度は何!? 地震!?」
「……あ?」
真岡が空を見上げる。つられて瀧も見上げた。
暗かった空が、一変して青空に戻っている。
(……鳥肌も、消えた?)
不吉な空気が霧散したように感じた。
「なんなのほんとに……」
「あっシマ、大丈夫か?!」
「っげほ、げほっ」
涙と鼻水を垂らしながらも正気と窒息が戻ったらしい嶋田に、西山が嶋田のリュックを漁ってティッシュを手渡す。
「……なんか、気配も消えましたね?」
「ホントだ。さっきの……なんかすごい音したけど、あれのお陰?」
「と、思うんですけどね……」
むせ込む嶋田の傍らで介抱する西山を他所に、真岡と瀧があたりを見回しながら話し込む。そこへ、黒い狐が姿を現した。
「あっ、シロ。おかえり。……あれっ? 誰かを連れてきたわけじゃないのか?」
藪から出てきたシロが瀧の足許にまとわりつく。シロに怪異を祓うような能力はなかったと思うが、と思いつつ、求められるまま頭を撫でてやる。
そうしてシロは瀧の足許を何周かしたところで、二十メートル先の藪のほうへ向かって一声鳴いた。
「…………わ……」
そこから出てきた人物は、遠目のぱっと見でも言葉を失わせるには充分な、長身長髪の美形だ。瀧も一八〇センチはあるのに、彼はそれよりずっと高く見える。
シロが一度離れ、その人物を見上げてまた一声鳴き、座って頭を下げてから戻ってきた。
「何? どういうこと?」
真岡が瀧へ囁く。瀧も声をひそめたのは、なんとなくそう話さなければいけないような空気を感じたせいだ。
「さあ……オレもこんなの初めてでよくわかんないけど……ヒトじゃないのかも」
「えっ……」
真岡の表情が引きつる。ヒトではないとなれば、獣人か神族に決まっていた。だから真岡の驚きと動揺はよくわかる。だが、ヒトがこんな美貌を持ち合わせていることは考えられないから、やはり獣人――どちらかといえば神族のような気がする。纏う空気も静謐で、大声で乱すのは憚られた。
「なんで俺らを助けてくれたわけ……」
「いやオレに訊かれても」
獣人や神族は基本的に人間を下に見ているから、人間が怪我をしようと死のうと関心を持たない。だから困っている人間を助けるなんてことはまったくありえないのだが。
(気まぐれ……としか言いようがないよなあ)
五メートルほどの場所までやってきたその人は、間近に見ればいっそうその美貌がよくわかった。
肌の色は白くて皮膚の下から光り輝いているようにも見える。右耳の下へ流した髪は緩い三つ編みにされていて、膝あたりまである。ひと房ずつ前髪が額を分けていてずいぶんと嫋やかな印象を受けるのに、長身であることと、なよなよとしたところのない、どちらかといえば地から天までを貫くような真っ直ぐとした靱さのある双眸を持った青年だ。
瀧などもよく男女問わず口説かれることはあるが、この男の美しさはきっと、誰も近寄らせない、近付くことを躊躇わせる神聖さともいえる孤高の美しさだろう。
年齢はよくわからないが、もしかしたら同じくらいか、少し上か。ただしそれも外見だけのことだ。
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