61 / 68
60 解決編10(裁定)
しおりを挟む
梓玥の表情は足が竦むほど冷ややかだ。
「仮にも上位種族の自覚がある者が、たとえ相手が下位種族であろうと他者に害を為していいはずがない。……よって」
ごくりと、誰かが生唾を飲み込んだ音を聞いた。
「柯静峨、敖栢葯。おまえたちは被害者への償いを速やかに済ませた後、私やオカルト研究同好会の手足となって働くように」
「……えっ?」
「はっ?」
「え?」
「え……えっ?」
思わず全員が声を出した。
「黎さんはともかく……俺たちのって……?」
「同好会におけるフィールドワークのサポート。授業やレポートを制作する際の助けや、身の回りで不便を感じたこと、なんでも。ふたりに言いつけて取り計らってもらうといい」
「え……そ、それは、あんまりにも……」
「おれたち単なるヒトっすよ……」
真岡、西山、嶋田は狼狽えるが、梓玥が表情を動かすことはなかった。
(そんな話、聞いたこともない……!)
ヒトに対して神族が小間使いのように働かされるなど、聞いたことがない。誰かに知られて問題になるのはオカ研メンバーのほうではないか。けれど梓玥は表情を変えない。
「れ、黎さん、他に何かないかな……? 神族の方には、ちょっと……」
「だからこそ、罰になりうる」
狼狽える真岡の言葉を、毅然とはねつける。
罰なのだから罰にならねば意味がない、と言われてしまうと、納得できる気はする。それにしたって、と思ってしまうが。
「そして己らが害を為そうとした者たちがどのような者なのか、知るがいい。……私には、それぞれの神族の動向をつぶさに報せるように」
「……はい」
「承知いたしました」
ふたりとも苦さが滲んだ表情だが、命を取られなかっただけマシだろう――きっと。
(人の手足みたいになって動くのが、神族にとってどれくらい屈辱なのかわからないけれど……)
相当重い罰なのでは、と察せられてしまった。
ふたりがそれぞれ姿を消すと、五人の間にはなんとも言えない空気が漂っていた。
「あの……黎さん。なんでまたあんな罰に……?」
おそるおそるになったのは、梓玥が纏っていた冷ややかさのせいだろう。気付いたのか、梓玥は雰囲気を和らげた。全員がほっと息を吐く。
「一般論として、神族はヒトとあまり関わりを持たない。互いに関わらなくてもそれぞれの世界は回るから。とはいえ、ヒトが神族に委ねている部分がないわけではない」
経済や治安は神族や獣人が担っている部分が大きい。俗っぽいことを嫌う神族がいる一方、積極的に知識や恩恵をヒトに与える者たちもいる。分野としては主に第一次産業だ。
それだってほんの一部の神族にしかすぎず、大半は神族同士の会議や時に獣人やヒトも交えた行事でしか姿を現さないものだ。たとえば新嘗祭や新年の慶賀の儀などがこれにあたる。
現実的に枝葉末子、末端として働いているのはヒトだ。
「ヒトのことを取るに足らぬと思っている神族が大半。彼らも例外ではない。だからこその罰。後は、君たちのほうの問題を片付けたい」
「俺たちのほうの問題?」
心当たりのない顔で西山は首を傾げるが、問題は意外と大問題だった。
「仮にも上位種族の自覚がある者が、たとえ相手が下位種族であろうと他者に害を為していいはずがない。……よって」
ごくりと、誰かが生唾を飲み込んだ音を聞いた。
「柯静峨、敖栢葯。おまえたちは被害者への償いを速やかに済ませた後、私やオカルト研究同好会の手足となって働くように」
「……えっ?」
「はっ?」
「え?」
「え……えっ?」
思わず全員が声を出した。
「黎さんはともかく……俺たちのって……?」
「同好会におけるフィールドワークのサポート。授業やレポートを制作する際の助けや、身の回りで不便を感じたこと、なんでも。ふたりに言いつけて取り計らってもらうといい」
「え……そ、それは、あんまりにも……」
「おれたち単なるヒトっすよ……」
真岡、西山、嶋田は狼狽えるが、梓玥が表情を動かすことはなかった。
(そんな話、聞いたこともない……!)
ヒトに対して神族が小間使いのように働かされるなど、聞いたことがない。誰かに知られて問題になるのはオカ研メンバーのほうではないか。けれど梓玥は表情を変えない。
「れ、黎さん、他に何かないかな……? 神族の方には、ちょっと……」
「だからこそ、罰になりうる」
狼狽える真岡の言葉を、毅然とはねつける。
罰なのだから罰にならねば意味がない、と言われてしまうと、納得できる気はする。それにしたって、と思ってしまうが。
「そして己らが害を為そうとした者たちがどのような者なのか、知るがいい。……私には、それぞれの神族の動向をつぶさに報せるように」
「……はい」
「承知いたしました」
ふたりとも苦さが滲んだ表情だが、命を取られなかっただけマシだろう――きっと。
(人の手足みたいになって動くのが、神族にとってどれくらい屈辱なのかわからないけれど……)
相当重い罰なのでは、と察せられてしまった。
ふたりがそれぞれ姿を消すと、五人の間にはなんとも言えない空気が漂っていた。
「あの……黎さん。なんでまたあんな罰に……?」
おそるおそるになったのは、梓玥が纏っていた冷ややかさのせいだろう。気付いたのか、梓玥は雰囲気を和らげた。全員がほっと息を吐く。
「一般論として、神族はヒトとあまり関わりを持たない。互いに関わらなくてもそれぞれの世界は回るから。とはいえ、ヒトが神族に委ねている部分がないわけではない」
経済や治安は神族や獣人が担っている部分が大きい。俗っぽいことを嫌う神族がいる一方、積極的に知識や恩恵をヒトに与える者たちもいる。分野としては主に第一次産業だ。
それだってほんの一部の神族にしかすぎず、大半は神族同士の会議や時に獣人やヒトも交えた行事でしか姿を現さないものだ。たとえば新嘗祭や新年の慶賀の儀などがこれにあたる。
現実的に枝葉末子、末端として働いているのはヒトだ。
「ヒトのことを取るに足らぬと思っている神族が大半。彼らも例外ではない。だからこその罰。後は、君たちのほうの問題を片付けたい」
「俺たちのほうの問題?」
心当たりのない顔で西山は首を傾げるが、問題は意外と大問題だった。
1
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる