23 / 30
帰還編
第五話:贄の王女達
過去の時代から蘇った歴代の元『贄の王女』達が住んでいる宝石塔の中のラコエル宮殿にて、サリィス姫の主導で希美香にお揃いのアクセサリーを作ってもらおう計画が発足した。
急遽、お茶会の席が用意されると、今現在ラコエル宮殿で顔を出せる元贄の王女達が集まり、皆できゃいきゃいと意見を出し合う。
「腕輪か、指輪か、髪飾りか」
「シンプルにカメオタイプの首飾りという手もありますわ」
「キミカの掘り出し技術も上がっていると聞くからなっ、それはいいかもしれん」
「私まだ細かい造形とかは無理よ?」
護衛の三人衆が付けている、希美香が送った宝石の紋章くらいシンプルな図形なら何とかなるが、彫刻のような美術品レベルの物はまだ難しい。
「そこは大丈夫だ。完全に同一の物を用意してくれれば、職人に頼んで仕上げてもらう」
サリィス姫はそう言って、腕に巻き付く蔦を表現した見事な装飾の腕輪を見せる。
「なるほど」
以前、サリィス姫の要望で希美香が城の庭園から掘り出した腕輪。
掘り出した時はサリィス姫の想像イラストにそっくりな形の崩れた腕輪だったが、希美香が忠言した通り、宝飾職人さんに手直ししてもらったようだ。
概ね方向性が決まったところで、ここに顔を見せていない王女達――それぞれの血筋を継ぐ家に引き取られた姫君達にも手紙を出して、意見を聞こうという話しになった。
「纏まったらまたみんなで相談しましょ」
「うむ! 楽しみだなっ」
「有意義な時間であった」
「とても刺激的でしたわ」
そんなこんなで、今日のところは一先ず解散。王女達は皆、宮殿の自室に引き揚げて行った。希美香は、サリィス達と別れたその足で研究所に向かう。
お茶会の間、少し距離を置いていた護衛の三人衆も直ぐに希美香の後に続く。
「お疲れ様でした、キミカ様」
「姦しい姫さん達がアレだけ居ると、見てるだけで疲れそうだぜ……」
アクサスが希美香を労うマメな動きを見せる一方、頭の後ろに手を組んでいるルインは溜め息交じりの愚痴をたれる。ブラムエルは特に何も語らず、護衛に徹していた。大体いつも通りである。
そんな研究所までの道中、希美香は『贄の王女』だった彼女達の行く末を思う。
「あの姫様達ってさ、サリィスちゃんも含めてみんな支分国に嫁ぐ事になってるのよね?」
生け贄に選ばれていたのは、いずれも側室から産まれた王女ばかり。
最初期の頃はともかく、実りの大地の法則が解明されてからは、その為だけに時期を選んでの婚姻が当たり前になっていたという。
ラコエルの霊に連れ去られ、微睡みのような世界から目覚めてみれば十年以上も経過していて、生け贄の役割から開放されたと思ったら支分国との繋がりを維持する為の政略結婚に使われる。
「姫様達の表情は明るかったけど、国に対して思うところは無いのかな、って」
「……彼女達も貴き血筋の姫君です。皆、王族の娘としての覚悟はお持ちなのでしょう」
「つっても、キリカみたいな例も少なくなかったんじゃね?」
希美香のそんな思いに、アクサスが無難な言葉で応えようとしたが、ルインがサータスの娘キリカの事例を持ち出して雑ぜ返す。
キリカ姫は、当時の放蕩王子が市井の娘に産ませた子である。
『今年は由緒正しき貴き血筋の王女を生贄に出さなくて済む』
これ幸いとばかりに母親から取り上げ、城宮殿に押し込めて物心がつく頃からの教育で生贄役に仕立て上げられた。
奪われた娘が作為的に生贄にされた事を知り、復讐に駆られたサータスが王城まで殴り込みを掛ける騒ぎとなった事件。
実りの大地に関する記録にも記された、王室の黒歴史でもある。
アクサスは『今それを指摘する意味はあるのか』との思いを込めてジロリとした視線を向けるが、睨まれた当人はどこ吹く風でそっぽを向いた。
隙あらば希美香の心証を良くしようと点数稼ぎに余念の無いアクサスと、恐らくは天然でそれを邪魔しているルインに肩を竦めて見せる希美香。
すると、それまでずっと沈黙していたブラムエルが、こんな事を語った。
「現状でキミカ殿にできる事と言えば、彼女達が相手方に侮られる事の無いように、『贄の王女』だった事を示すシンボルに、貴方の威光を込める事、くらいでしょうか」
「ふーむ、威光かぁ……」
嫁いだ先で『権威のバラ撒き要員』などと軽視される事の無いように、『贄の王女』達しか持ちえない特別な何かを用意する。
「ん~そうね。これまでの転移門創りでちょっと閃いたわ。アドバイスありがとね、ブラムエルさん」
「いえ……」
希美香の創造精製能力は、既に伝説の転移門と遜色のない効果を精製した宝石に付与するレベルにまで仕上がっている。
発想と想像力次第で相当にトンデモナイものを作れるのだ。その特色を活かさない手はない。
「よぉ~し、最高の宝飾品を作ってやるわ!」
やる気を漲らせている希美香を見たルインが、「コイツまたヤバいもん作るつもりだ」と呟いては恐々としている。
「それはそれで、僕は楽しみですけどね」
アクサスは、希美香が本気で作る『贄の王女』達の象徴的な宝具がどんなモノになるのか、興味を示していた。
それから数日は、ほぼいつも通りの日々が続いた。
希美香は『次元を超える道』を模索しつつ『転移門創り』で宮廷魔術研究所に通う傍ら、ラコエル宮殿でサリィス姫をはじめ贄の王女達と交流しては、お揃いの宝飾品について話し合った。
「実はこんな効果の付与を考えてるんだけど――」
希美香が、彼女達に贈る宝具の特殊効果について言及すると、みんな目を丸くしたり、思わず吹き出したりしている。
いずれも面白がっているようだったので、希美香は安心してその方向で進める事にした。
「気を悪くする姫様もいるかなって思ったけど、大丈夫みたいね」
「はははっ! そんな面白い効果の宝具、気に入らないわけがない!」
私達にぴったりだと胸を張って言うサリィス姫に、他の姫君達も頷いて同意していた。
そんな希美香に再び緊急の呼び出しが掛かったのは、翌日のお昼になろうかという頃だった。
あなたにおすすめの小説
異界の魔術士
ヘロー天気
ファンタジー
精霊によって異世界に召喚されてから、既に二年以上の月日が流れた。沢山の出会いと別れ。様々な経験と紆余曲折を経て成長していった朔耶は、精霊の力を宿した異界の魔術士『戦女神サクヤ』と呼ばれ、今もオルドリアの地にその名を轟かせ続けていた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)